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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
特別編・バグソルジャー結成編
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特別編・バグソルジャー結成秘話4

遅くなりました。書いてたらちょっと長くなりまして。

三作同時連日作成は無謀なので次の投稿も結構かかるかもです。

 霧島葉奈は走っていた。

 背後には五人の改造人間。

 コリントノヴァからの刺客である。


 せっかく逃げだせたというのに、葉奈は逃走に失敗していた。

 改造人間になったといっても、学生でしかない葉奈が組織から逃げ出すのは無理があったのだ。

 追跡用の改造人間がいたことも問題だったが、組織からの脱走を戦闘員に見られたまま、口封じを行わなかったのが原因だ。


 服を着る余裕もなかったので逃走中に手に入れた薄汚れた布で全身を覆っていた。

 走る度に風にはためくのでとても邪魔ではあるが、全裸で町を駆け抜ける訳にも行かない。

 だが、そのせいで追跡者たちとの差は徐々に縮まっていた。


 荒い息を吐きながら、スクランブル交差点を駆け抜ける。

 人波に紛れながら、時にぶつかり、時に怒鳴られ、ふらつきながらも駆け抜ける。

 止まったら、終わりだ。

 叫んでも、終わりだ。

 捕まっても、終わりだ。


 歩道を駆け抜け車道を横切り、ひたすらに走る。

 やがて人もまばらになり、途切れ始めた頃、コリントノヴァの刺客たちが動きだす。

 人を越えた跳躍力や加速力にモノをいわせ、葉奈の逃げ道を塞ぎ始めた。

 そして誘導されるように、誰も居ない廃ビルへと辿りつく。


「そこまでだ。パピヨン」


 誘いこまれた事に気付いた葉奈が足を止めた瞬間だった。

 戻るための入り口を塞ぐように、一人の改造人間が現れる。


「我はコリントノヴァのS・Tだ」


 その容姿は、虎だった。両手にサーベルを持っていることから見て、サーベルタイガー男だろう。

 怪人というよりは獣人と呼んだ方がいいかもしれない。

 本来は牙が鋭いはずなのだが、代わりに持っているサーベルが牙がわりだろうか?


「wechsel!」


 葉奈はもはや退路は断たれたと、変身のキーワードを口にする。


「ほぉぅ。我と戦う気か? 面白い。たかだか道具の分際でどこまでできるか見せて貰おう」


 サーベルを構えS・Tが走る。

 やるしかない。葉奈がそう思った瞬間、間に割って入る黒い影。

 S・Tが慌てて急停止する。


「何者だ!?」


「それを知る必要はあるまい」


 現れたのはカブトムシを基調にした改造人間だった。

 突如現れたの改造人間は、まるで葉奈を護るようにS・Tと対峙する。

 まさに助けに来た白馬の王子。

 思った瞬間、葉奈は彼に全てを捧げたいと……


「ふっふっふ。間に合ったようねパピヨン。彼はアナタの仲間よ!」


 場違いな自信たっぷりの女の声が聞こえた。

 葉奈は自分が何を思おうとしていたのかと慌てるが、女が仲間という言葉を言った瞬間、いやにすっきりと自分の気持ちが沈んだ。


 なぜ、カブトムシの外郭を持つ改造人間なんかに私が人生を捧げたいなどと思いかけたのか。

 慌てて被りを振る葉奈だが、どうにも先程のは気の迷いだったらしい。

 今はカブトムシの改造人間を見ても仲間? とは思えど好きになろうはずもなかった。


「ふん。たかだか昆虫の分際で、我に敵うと思ったか!」


「ふむ。貴様は理解できるだけの頭はなさそうだな。昆虫というのは小さいから弱く見えるのであって動物と同じ体格になれば脅威となるのは硬い殻を持つ甲虫であると知れ」


「やれー、バグカブト――――ッ!」


 女が場違いな程に呑気な声援を送る。

 それを皮きりに、バグカブト目掛け走り寄るS・T。気合い二閃。左右からサーベルが襲いかかる。

 いきなりの攻撃にバグカブトは避ける事すらままならず……と見えたが、バグカブトはニヤリと笑う。


 鈍い音を立ててサーベルがバグカブトの外骨格で止まる。

 別段、逃げも防御も行っていないバグカブトだが、ダメージらしきものは欠片も負っていなかった。


「な、なんだと!?」


「ふむ。これで終わりか?」


「ふざけるなっ!」


 バグカブトのバカにした様な声にS・Tは猛り狂う。

 サーベルを連続で叩き込み、バグカブトをひたすら攻撃していく。

 しかし、ダメージなど全く入らない。

 冷静に考えれば、関節部分に当てればいいと気付けただろうが、頭に血が上ったS・Tが気付く事はなかった。


「では、こちらの番だな」


 突如、S・Tの喉に衝撃が走った。

 何事かと見れば、攻撃の合間を縫って付きだされたバグカブトの腕が彼の喉を掴みあげていた。


「ぐっ、こ、こんな……」


「悪いが、殺すぞ。敵を生かす義理はないからな」


 そう言って腕に力を込めるバグカブト。

 しかし、すぐにS・Tを投げ飛ばして自身も飛び退く。

 直後、バグカブトが居た場所が陥没した。


「あぁクソ、惜しいっ」


 陥没した地面から現れたのはモグラ型の獣人だった。

 

「けっひひひ。次はテメェの足を地の底に落としてやるぜェ」


 一言吐き終え、再び地面に潜りこむモグラ獣人。

 バグカブトは思わず舌打ちしていた。

 耐久力の高いバグカブトだが、こういった搦め手を使う怪人は苦手な部類に入る。

 一対一ではおそらく敗北するだろう。


「おーおー。ここにいたか」


 コリントノヴァの獣人たちが続々と集結する。


 狼の獣人と象の獣人、そして、ゴリラを模した3メートルはある巨大な獣人が現れる。


「くく、俺の鼻から逃れられると思ったか女?」


「その通りだ。大人しく吾輩のゾウさんを受け入れよ」


「お前が言う、シャレにならない。黙れ」


 口々に言葉を発しながら、邪魔ものであるバグカブトを取り囲むように近づいてくる。

 絶体絶命だった。

 五対一では勝つ見込みなど万に一つもありえない。

 そもそもがあのモグラ獣人相手に勝てるかどうかすらわからないのだ。


 バグカブトは拳を握り込む。

 折角復讐手段を見つけたというのに、こんな場所で全く知らない別の秘密結社にやられて終わるなど、笑い話にもならなかった。


「くく、どうだカブト男。この人数相手に貴様一人でそいつを守りきれるのか?」


「ふん。群れねば何も出来ん獣人共に負ける気はないな」


 強がりだとはわかっていたが、舐められるのは我慢ならなかったバグカブト。せめて一人でも多く道連れにしてやろうと構える。


「おー、やってますやってます。行きますよ兄さん」


 急に少女の無邪気な声が降ってきた。

 何だ? とその場の全員が空を見上げた、その瞬間。


「天が呼ぶ地が呼ぶヒーローが呼ぶ! 悪を倒せと、と、えーっと、遠吠え走る……ん? まぁいいや。とにかく、えーっと、日本語で私のこと何て言います兄さん?」


「知るか。さっさと降ろせ」


 空に、見覚えの無い改造人間が二体。

 一人は黄色と黒がゼブラで彩色される蜻蛉型改造人間。そして、そいつが持ち上げているのが、鮫型の改造人間だった。


 「はいはい、行きますよ」と蜻蛉女が手を離す。支えを失くした鮫男が自由落下を開始した。

 見上げるコリントノヴァの怪人たちに向け落下する鮫男は、空中で身体を回転させると、頭を地面に向ける。そして、くわっとばかりに大口を開けた。


 ぎらつく鮫の歯がびっしりと生えたソレが、コリントノヴァの怪人へと近づいてくる。

 危険を感じた彼らは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。


 少し遅れて鮫男が大地に激突する。

 激突の瞬間、器用に身体を回転して足から地面に着地した。


「よぉ、バグレンジャーとかいうののリーダーってのぁアンタか?」


「あ、ああ。成り行きでな。君たちは?」


「どうやら、お仲間らしい。んで、俺はあっちの獣どもを腹に収めりゃいいのか」


 バグカブトにとってもまさに絶好のタイミングでの助っ人だった。

 まさかこんな隠し玉が居るとは思わなかった。

 バグレンジャー。直訳してしまえば虫の戦隊であるわけなのだが、目の前の鮫男はどうみても魚類の改造人間である。鮫に似た虫が居るとも思えないので、鮫で合っているだろう。


「ふふ、初めての正義の戦いですよ兄さん。派手に行きましょうか!」


 バグカブトを護る様に敵と対峙する鮫男の間横に舞い降りる蜻蛉女。

 着地と同時に自分で考えたらしい決めポーズを取る。


「二人とも気をつけろ、地下から来るぞッ!」


 バグカブトが叫ぶ。その瞬間、タイミングを計ったように蜻蛉女の真下が崩落した。


「Ohっ!?」


 が、即座に翅を動かし上空でホバリング。

 真下を見下ろすと、モグラ獣人が舌打ちしていた。


「むっかー。兄さん、アイツは倒すからね!」


「構わん。そろそろアントも来るだろうし、殲滅するぞ!」


 鮫男の言葉に蜻蛉女は地面に視線を走らせる。

 モグラ獣人は既に地中に潜ったようだ。


「ふふ。わかってませんねぇ……私は、空の捕食者ですよ」


 蜻蛉は、稲穂の上等をよく飛んでいるのが見られ、一見優雅な飛行を行っているように見える。

 しかし、その食性は肉食なのである。


 その食事方法は至って簡単。適当な草や壁面にくっついている虫などを、遥か遠くから加速し、一気に掻っ攫うのである。

 そう、モグラ獣人が顔を出した瞬間、蜻蛉女に自身を掻っ攫われるように、相手が反応する間もなく一瞬にしてハントを終える。


 蜻蛉女に連れ去られ、遥か上空まで持ち上げられたモグラ獣人は何が起こったのかすら理解できないでいる。

 必死に自分の状況を確認しようとするが、蜻蛉女は状況把握すら許さなかった。

 何千メートルと上昇した蜻蛉女は、嫌にあっけなく手を離す。

 結果、モグラ獣人は、なぜ自分が地面にいないのか理解するより先に、空中に放り出されたのだった。


「はぁい、さようならぁ~」


 軽く手を振りスカイダイビングを始めたモグラ獣人を見送った蜻蛉女は、ホバリングをしながらゆっくりと下降していく。

 その下では、虫のように小さな者たちが、戦闘を開始していた。


 鮫男は狼獣人を相手に噛みつき合戦を行っていた。

 と言っても、双方噛みつかれる直前で回避しているので、未だにどちらも噛み痕はなかった。

 そもそも鮫に噛まれて無事な狼などいるとも思えない。

 この対戦は狼獣人に不利と思えた。しかし、狼獣人をフォローするようにゴリラの獣人が腕力にモノを言わせた拳を打ち込んでいく。

 さすがにこの拳に噛みつく気にはなれないようで、鮫男は二対一の一進一退を繰り広げていた。


「チッ、一匹なら食えるのによぉ」


 毒づく鮫男。しかしゴリラ男の強力な拳を避けるのに精いっぱいで、狼男の噛みつきに次第、対応出来なくなっていく。


「ふっ。苦戦しているなバグシャーク」


 誰だ!? とばかりに狼男が振り向く。

 ゴリラ男は丁度攻撃モーションに入っていたところなので、声に振り向くことはなかった。

 そして、それが彼らの明暗を分ける。


 白い何かの液体が飛んできた。

 とっさに狼男が飛び退き避ける。

 しかし、ゴリラ男は逃げる事すらできず、ソレを全身で浴びた。

 その瞬間、ゴリラ男の身体が動かなくなる。


「な、なんだ!? 臭っ なんだこれはっ!?」


「悪いな。粘液銃だ。お前はもう動けんぞ」


 なんとか首を動かすゴリラ男。視界の先に、黒い何かがいた。

 アリを模した外骨格を持つ改造人間だ。

 しかし、その体は今、白く変色し、頭の先には射出口が存在している。


「バグアントか!? なんだその体ァ」


「俺の能力の一つだ。俺の改造には数種のアリが使われていてな。そこのバカ科学者がアリと間違えて白アリの一種も加えてしまったんだよ」


 嫌そうに答えたバグアント。

 女、いや、ドクターを睨みつけるが、ドクターは素知らぬ顔で葉奈に告げる。


「さぁ、どうするパピヨン。いえ、バグパピヨン。仲間がアナタを救いに来てるわよ」


「……あたしは……あたし、も、闘う」


 決意と共に飛び上がるバグパピヨン。その視線の先には、バグカブトが相手取るS・Tと象男に向けられた。

 バグパピヨンが羽ばたこうとしたまさにその時、上空から高速に落下してくる物体が一つ。

 雄叫びと共に大地に激突する。


 地面へと戻ってきたモグラ獣人だったが、彼に上空からの衝撃を殺しきる力はなかった。

 落下の衝撃に耐えきれず真っ赤な華が咲き乱れる。

 それを見た狼男が唖然とした一瞬、隙が生まれた。


「バカが、隙だらけだ。まるで、喰らって下さいって言ってるみてェだぜ!」


 一瞬の隙を見逃すバグシャークではなかった。

 即座に距離を詰め、狼男の肩に喰らいつく。

 耳を塞ぎたくなるような絶叫が響いた。


 必死に逃げようとする狼男だったが、無情にもバグシャークの口が閉じられる。

 自身を構成していた幾つかのパーツが一瞬で消え去った。

 繋がりを立たれた右腕がぼたりと落ちた。

 心臓の半分が消え、鼓動が止まった。


 そんな戦いとも呼べない戦いの合間を縫って、バグパピヨンが飛翔する。

 鱗粉を周囲に撒き散らし、空中から蹴りを繰り出す。

 いち早く気付いた象獣人が戦線を離れバグパピヨンに向き直る。


「いいゾゥ。吾輩は相手をしてやろう」


 飛んできた蹴りを長い鼻で絡め取る。


「そうら、飛んできなァ!」


 バグパピヨンの足を掴んだまま大きくスイング。

 慌てるバグパピヨンは必死に羽ばたくが、空中で足場の無い彼女には逃げ出す事も耐えることもできなかった。

 無防備にジャイアントスイングを喰らったように回転し、鼻を離され吹き飛ばされる。


 地面に激突したバグパピヨンは勢いを殺せず二転三転。

 それを見た象獣人がニヤついた笑みで哂う。


「ぶぁかが。改造人間になろうが簡単に勝てるわけねぇだろ。経験の差があるんだよ経験の差が!」


 しかし、彼は気付いていなかった。

 バグパピヨン。その元にされた素体は、毒蝶であるという事実を。

 そして、スイングによって彼の周囲には、通常の倍以上の鱗粉が舞っているという事実を。


「さぁて、トドメと行く前にお楽しみといぐ……っ!?」


 突然、体中に電撃を浴びた様な震えが来た。

 驚く象男。その呼吸が急激に乱れる。

 何が起こったのか理解できずに心臓を押さえ崩折れる。


 身体の動きが徐々に緩慢になり、震えが目に見えて全身を揺らす。

 恐怖が芽生えた。

 自身の身体が死に向っているという不思議な確信。


 知らず誰かに助けを洩らす。

 しかし呂律が回らず声にすらならない。

 かわりに、ぶくぶくと白い泡が溢れだす。

 身体の動きが徐々に止まっていく。

 そして、ゆっくりと、心臓が止まっていった。


 バグパピヨンが被りを振って起き上がる頃、バグカブトとS・Tの戦いも佳境に向っていた。

 仲間の出現で冷静になれたS・Tはバグカブトの関節部を狙いサーベルを繰り出し、バグカブトがそれを防ぎつつ拳を当てて行く。

 そんな攻防が続いていたが、ついに均衡が破られたのである。


 ビキッ。と謎の音と共にバグカブトの腕に亀裂が走る。

 思わず舌打ちするバグカブト。

 しかし、S・Tのサーベルも刃毀れが酷くなり、後数撃で自己崩壊しかねない状態になっていた。


「くくっ。どうしたカブトムシ。貴様の硬さもそろそろ限界のようだな」


「抜かせ。その武器で大した余裕だな。確かに腕に皹は入ったが、それだけだ。そちらは攻撃手段を失えば勝つ見込みはなくなるぞ」


 勝敗は決した。そう言ったつもりだったが、S・Tは気にしたふうもなく武器を構える。


「分かっていないな。俺には奥の手があるんだぞ。巨大化という奥の手がな」


 奥の手を聞いたバグカブトはさすがに焦った顔になった。

 巨大化などテレビの中の世界でしか出来ない妄想だ。そう思っても、秘密結社なのだからそのくらい出来るかもしれないと思ってしまう。


「カブトッ、奴に薬を飲ませるなッ!」


 薬? と思う間もなくバグカブトはS・Tへと走り寄る。

 S・Tはどこからともなく試験管のようなものをとりだすと、封をしていたコルクを乱暴に引き抜き、一気に呷ろうとする。


「マズいっ!」


「させるかァッ!」


 バグカブトが走る。それだけでは届かないと知ったバグカブトは背中の翅を広げる。

 高速で震え始める翅。速度を落とすことなくバグカブトが宙に浮く。


「うおおおおおおおおおっ」


 S・Tが試験管を真上に掲げ、内部に満たされた液体がS・Tの口へと流れ……刹那、バグカブトの突撃によりS・Tが吹き飛んだ。

 間一髪間に合ったらしく、液体をまき散らしながら試験管が放物線を描く。

 地面を無様に転がるS・T。その真横を通過して、試験管が無情にも砕け散った。


「く、クソッ、ジャイアントソウルが……」


 よろめきながら立ち上がるS・T。しかし、そこへ飛び込んでくるバグカブト。

 腕を振り被り、渾身の一撃を顔面へと叩き込む。

 骨が砕かれる音が盛大に響き、S・Tが錐揉み回転で吹き飛んだ。


 バグカブトはさらに追撃とばかりに、S・Tに追いつき、地に伏したままの後頭部へと踵落としを決めた。

 さらにグシャリと何かが潰れ、地面が陥没する。

 赤い飛沫が飛び散り、S・Tが痙攣を始めた。


「ふぅ……五対一になった時はさすがに肝が冷えたな」


「すごい。凄いぞお前たち。さすがはボクが集めた戦士たちだよ。ふふ、ははは。はーっはっはっはっは。これで、これでボクを認めなかった奴らに地獄を与えてやれる。さぁ、さぁさぁさぁ。バグソルジャーの結成だよ皆ッ」


 息を整えたバグカブトは、一人歓喜の声を上げるドクターへと歩み寄る。

 同様に近づく他の面々。

 バグパピヨンは戸惑いながら。

 バグシャークは嫌々に。

 バグアントは無感情で。

 そして……


「ねーねー。私って名前どうすればいいの? 蜻蛉ってなんていうのー?」


 ただ一人やかましい程の能天気な声で、蜻蛉女がやってくる。


「蜻蛉? バグトンボか? もしくはバグドラゴンフライ」


「そんなダサいのは嫌です!」


「あ、あの。よければあたし、辞書から探してみましょうか? いい名前見つかるかも」


「ほんとですか! お願いします」


 後日、葉奈が嬉々として見つけた名前を伝えた。

 それがリベルレ。ドイツ語のlibelleを間違えて読んでしまったのである。

 ただ、真由には大いに気に入られた。曰く、バグリベルレ。ドラゴンフライとかよりよっぽど可愛いじゃないですか! だそうだ。


 そして蜻蛉女はバグリベルレになった。

 ここに、昆虫戦隊バグソルジャーがついに結成されたのだった。


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