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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
特別編・バグソルジャー結成編
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特別編・バグソルジャー結成秘話2

「アルガースへの侵入に成功した。ドクター、指示を」


 全身を黒で統一した、人型の生物が一人、独り言を呟いた。

 アリをモチーフにした全甲冑型の装甲を身に纏った男である。

 男の名はイレイズ・アント。ある秘密結社によって造られた改造人間である。


「さすがはイレイズ・アント。ふふふ、マッッッヅサイエンティィィスト。ドクターコズミックスペースアルティメッターであるボクの最高傑作なだけはあるよ」


 どこからともなく、アントにだけ聞こえる声が聞こえた。

 彼の内臓通信機から洩れる声だった。


「ごたくはいい。さっさと任務内容を告げろ。殺すぞ」


 少し苛ついたように、アントは声を潜める。


「はいはーい。今回はー仲間の確保でーす」


「仲間?」


「ええ。そろそろあの計画を立ち上げようと思ってねー。正義の味方、バグレンジャー計画」


 その名を聞いて、アントは納得する。

 バグレンジャー計画、それはこのドクターによって考え出された計画であり、アントでもその詳しい内容は知らされていない。

 彼が知っているのは幾つかの秘密結社から洗脳前の改造人間を引き抜き正義の味方に仕立て上げることだけである。


「しかし、いいのか? 下手をすればそいつらに潰されるぞ?」


「ふっふっふ。このマッッッヅサイエンティィィスト。ドクターコズミックスペースアルティメッターに不可能はございませんのことよ」


 正直こいつが殺されようがどうなろうがどうでもいい。と、アントはため息と共に自分の作戦内容を確認する。

 今回、ロシアにある秘密機関アルガースへ潜入し、ここで改造中の改造人間が洗脳される直前で数体救出する事。さらにはバグレンジャーの一員として起用することである。


「まぁいい。やるだけやってみよう」


 潜入した場所は薄暗い通路だった。

 排気口からここまで潜入してきたのだ。

 一応、周囲を探っておいたが、人の気配は見当たらない。

 警戒用のトラップも見当たらない所をみるに、入口だけ厳重にされているようだ。


「ならば、巡回に見つからなければ問題ないだろう」


 事前にドクターが入手したという曰くつきの地図を確認しつつ、目的の場所へと向う。

 やはりトラップも巡回兵も見当たらない。

 随分と不気味な気はするが、まさか侵入するという事が事前発覚して罠に嵌められているという危険はないはずだ。


 なにせアントがこの任務を知ったのはついさっきなのだから。

 理由も聞かされず飛行機に乗せられロシアに飛ばされた。

 と思うと飛行機から降りた瞬間、拉致されるように白いバンに乗せられ、アルガース近くへと連れてこられた。


 そこでようやく聞かされたのが、「これからアルガースに潜入よろ」

 自分を改造したドクターでありながら、殴り殺したい気持ちになったのはアントだけではないはずだ。

 しかも任務内容は潜入した後伝えるとのこと。毎回振りまわされる身にもなれとアントが毒づいたが、ドクターは気にすることなく手を振ってアントを送りだしたのだった。


 で、今に至る。

 潜入自体は全く問題なかった。

 普通は改造人間用の潜入防止策くらいありそうなものだが、簡単に潜入できてしまっていた。

 余りにも容易すぎて罠かと勘繰ったくらいである。


 やってきたのはカプセル型の培養器とでもいえばいいのか、淡いスカイブルーの液体で満たされた無数のカプセルが居並ぶ部屋だった。

 全てのカプセルに男、または女が裸で入れられている。

 髪が逆立つように波打っている様子は、どこか神秘的であった。


「チッ。増産培養炉か。これなら単体改造の秘密結社の方がまだマシだな」


 人間をカプセルに放り込むだけで後は機械が勝手に改造手術を行ってくれる全自動改造マシンである。

 人がモノのように改造されていく様は見ていて怖気が走るモノだ。

 アントは何気なくカプセルの一つを見る。

 そこには金髪の少女が入れられていた。


「こんなガキまで……虫唾が走る」


 拳を握り、怒りをぶつけるようにカプセルに叩きつける。

 余りの衝撃で、カプセルはいやに簡単に破砕された。

 青い液体が流れ出るとともに警報がけたたましく鳴り響く。


「……やっちまった」


 自分の感情に振りまわされたことに気付いて思わずため息を吐く。

 しかし、警報が鳴っては仕方がないと、アントは無数のカプセルを一つ一つ叩き割り始めた。




「……あ、あれ? 私……」


 最後のカプセルを叩き割っていると、一番最初に割られたカプセルから出てきた少女が意識を取り戻した。

 アントはロシア語は話せないが、ドクターに改造された際、世界中の言語をインプットされている。

 そのため、どのような会話であろうとも成り立っていた。


「気付いたか。丁度いい。これからここは戦場になる。死にたくなければ変身して手伝え」


「は? だ、誰?」


「同じ改造人間だ。改造過程で対話くらいできるようにされているだろう。意味を理解したならさっさと変身しろ」


「変身……? あ、あれ? えっと……Nepemeha?」


 戸惑いながらも、脳内に湧き上がってきた言葉を紡いだ少女。

 少女の身体を光が包みあげ、変化を開始する。

 それを見た他の被害者たちも口々に変身を始めていた。


「さて、やれる奴がいればいいが……」


 目覚めたての改造人間とはいえ、自分の必殺や身体の使い方はカプセル内で睡眠教育を行わせているはずである。

 戦闘経験のあるアルガースの改造人間たちと戦わせて生き残れるかは疑問だが、アントにとってはどうでもよかった。とりあえず、任務はこいつらの内から使える改造人間を見つけ、引き込むこと。

 それができれば任務完了だ。過程でどれだけ死者がでようがアントには関係ない事なのだ。


「全員、動くなッ」


 声と共にアルガースの戦闘員を引き連れ、改造人間たちが現れた。

 数は怪人が五体に戦闘員二十だ。

 先頭にいるのは見た目からして食虫植物。

 ウツボカズラ男とでも言うべきだろう。魚籠のような形状の身体に手足がついた怪人だった。


「貴様、何処の者だッ。このような事をして、生きて帰れると思うなよッ」


「月並みな悪党だな。そら、お前ら、生き残りたければこいつらを倒せ。でなければ地獄が待っているぞ」


 と、アントは状況を理解できていない解放組みの改造人間たちに語りかける。

 戸惑う怪人たち。そこへ取り押さえようと殺到する戦闘員。


「ノーッ」


「キャッ。ちょ、何っ!?」


 一番最初に変身した、蜻蛉の怪人らしい少女が近づいて来た戦闘員に驚きの声を上げる。

 しかし、攻撃方法が分からないのか、あっさりと拘束されてしまう。


「真由を離しやがれッ」


 が、横合いから現れた鮫の怪人が、少女を拘束した戦闘員の頭にかじりついた。

 そのまま首ごと引きちぎる。

 戦闘員は「ノーッ」というくぐもった悲鳴と共に絶命した。


「に、兄さん……なの?」


「ああ。よくわからんが、あいつらを倒さないと逃げ切れないのは確からしい」


「そういうことだ。理解したら敵を倒して逃げ道を確保してくれ。他の全員も、行くぞッ」


 男の言葉に頷き、アントはウツボカズラ男に飛びかかった。




 結局、アルガースを脱出した際、生き残れたのはアントを合わせ三名だけだった。

 殆どは戦闘員と戦う事すらできず取り押さえられ、戦うに至れた個体も既に怪人として生を受けていた敵によって葬られた。


「本当に、俺たちは改造されて洗脳されてかけていたらしいな」


 鮫男、望月境也の言葉に妹の真由が同意する。


「本当に、兄さんのおかげで無事脱出できました。あんな恐ろしい施設だったなんて……ありがとうございました。えっと……蟻さん?」


「イレイ……いや、バグアントだ。これからバグソルジャーという戦隊ヒーローを作ろうと思う。良ければお前たちも来ないか? ウチのドクターは少々変わり者だが、お前たちのメンテナンスも行える。動作不良で息絶える人生にならなくて済むぞ」


 改造人間はずっと一人で生きる事は出来ない。なにせ身体が改造されているのだ。

 メンテナンスを行わなければ何時動作不良を起こし、身体に変調を来たすかしれないのだ。

 だから、定期的にメンテナンスを受けなければならない。


 そのためにも、掛かり付けの改造技師がいるに越したことはない。

 ただし、改造もメンテナンスも相手に自分の全てを丸投げするのと同意である。

 知らぬ間に洗脳装置や自爆装置を取り付けられる可能性だってあるのだ。


 その点、バグソルジャーを作りたいドクターはそれらを行うことはないと安心することができる。

 まぁ実際問題何かやらかすのは間違いないだろうが、今のところは二人にとって最も安全な掛かり付けだといえた。


 少し戸惑った二人だったが、真由が了承の意を告げると、真由が行くなら俺も行こう。と、境也もバグソルジャーになることを決意した。

 ここに、鮫なのに昆虫戦隊というバグシャークが誕生したのだった。


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