エピローグ
魔王討伐から数日、王利たちは突然首領に呼び出された。
ローエングロック城を根城にした彼女は、本日、国王が定例会議に外出している隙に玉座に座り、エルティアを横に侍らせていた。
謁見の間に着くなり葉奈が思わず喚き立てる。
「ちょっと、あんたやっぱりこの世界牛耳る気でしょっ」
「寝言は寝て言え毒蝶女。我はこの世界を取る気は無いと何度言えば分かるのだ?」
「信じられないわよ」
「それで、私たち呼んだのはどういう理由ですかねー」
気持ちの整理は付いたと言っていた真由は、首領と話す時だけとげとげしかった。
やはり、彼女は首領が仇であることに気付いているようだ。
いつもの軽口もどこか皮肉感が混じっている。
「それなのだがな、W・B」
「はい。なんでしょう?」
「そろそろ飽きた。第四世界に戻るぞ」
玉座を立ち上がり宣言する首領。
思わずその場の全員が唖然となった。
「え、もういいんですか、勢力増強もしてないのに」
「よい。気が変わらぬうちに行くぞ」
相変わらず、首領の考えは分からないなと頭を掻く王利。
それでも、腕輪のツマミに手を伸ばす。
その王利の身体に葉奈がいの一番に抱きついた。
「いいんですか? あちらに戻ればバグソルジャーは敵ですよ?」
さらに真由がぶつくさいいながらも王利に触れる。
「ふむ? 休戦ではなかったのか? まあよい、それは向こうで考えよう」
どうでもいい。といった表情で玉座から立つと、すぐに王利の腕に抱きつく。
葉奈が睨むと、意地の悪そうな顔でクックと笑って見せる。
「殺されても知りませんよ?」
「なぁに、その時はそれまでのことと諦めるだけだ」
真由の言葉に笑う首領。
最後にエルティアが恐る恐る王利に触れる。
どうやら首領に気に入られたようで、幹部候補として召し抱えられてしまったようだ。
少しエルティアに同情しながら、王利は全員を確認する。
世界を超えるのはこの五人だけらしい。
本当に、首領はエルフ軍などを戦闘員にする気はないようだ。
「行くぞ勇者W・Bよ。次は第四世界を救うのだ」
「俺勇者じゃないですって……でも、まぁ付いていきますよ。だって……」
言葉を切ってツマミを回す。
「俺はインセクトワールド社の改造人間なんですから」
言葉の途中で光に包まれる。
さぁ、戻ろう。
勇者から、ただの怪人に――――
ここで一端終了です。
第二部書くかどうかは未定です。
とりあえずしばらくは別作品を書いていく予定です。