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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
首領 → 全面戦争
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魔王、無双

「閃光の突貫≪フラッシュ・ペネトレート≫!」


 先制攻撃は、回復したてのバグリベルレだった。

 魔王が何かするより速く、綺麗に元通りになった翅で浮き上がり、魔王目掛けて一直線。

 光の速度に加速した突撃攻撃である。


 この技はバグリベルレにとっては必殺技の一つであり、もっとも撃破率の高い技である。

 装甲の弱い相手を一撃粉砕するのに適した技なのだ。


 悠然と佇む魔王が何らかの行動を起こすより速く、自身の最も速いと思われる加速度で、音速の壁をぶち破る。

 幾度か空気の密集した層を突き破り、巨大な音と共に魔王の肉体へと弾丸が叩き込まれる。

 その刹那。


 バグリベルレは予想外の衝撃に軽く意識が吹き飛んだ。

 見えない壁に激突し、自身の加速度が威力となって襲いかかる。

 ド派手な音を響かせ、魔王とは反対側へと吹き飛ばされていた。


 気絶したのは一瞬だった。

 気付いた時には地面に激突し、身体がバウンドを始める。

 それでも勢いを殺しきれずにゴロゴロと赤い絨毯を無様に転がっていた。


 何が起きたのか全く理解不能だった。

 自分自身の突撃をまともに食らったような衝撃で、体中に力が入らない。

 驚愕の面持ちで魔王を見れば、厳つい顔に不敵な笑みを貼りつけ、クックと笑いを洩らしている。


「気になるか人外の者よ。これは物理反射結界。物理攻撃によるダメージをそのまま相手に返す魔法だ」


 魔王はすでに防壁を張り終え、満を持して登場していたのだ。

 物理攻撃が全て無効になった今、バグリベルレには打てる手立てはなくなったと言っても過言ではなかった。


 エルティアはバグリベルレの敗北を悟ると、即座に魔法詠唱に入っていた。

 エルフ族には攻撃魔法は殆ど存在しない。

 大抵の敵は補助魔法を掛けた弓矢で難なく倒せるからである。

 しかし、今の魔王のように、物理攻撃が効きにくい魔物がいないわけではない。

 そういう敵に接近できるなら光の魔法剣で倒せるが、離れた相手や接近が難しい相手にはそれ相応の手段で臨まなければならない。


 エルティアも、そんな魔法を習得するエルフの一人だった。

 自分が弓矢を持っているイメージを行い、魔法を唱える。

 魔法が完成していくごとに、自らの手に普通の矢とは少し違う矢を持つ感覚が生まれる。

 それは時折周囲に迸り、バヂリ、バヂリと音を響かせる。


「雷の魔法矢≪ライトニング・アロー≫っ!」


 電気を集めた光の矢を見えない弓へと番え、魔王目掛けて解き放つ。

 放たれた雷矢は放電しながらも真っ直ぐに魔王へと突撃する。

 しかし、それは2mほどの地点で唐突に掻き消えた。


「そんなっ!?」


 半ば予想していたのか、エルティアの顔にはやっぱりといった落胆の表情が窺えた。

 魔王は物理反射魔法の他に、魔法無効化の防壁をも張り巡らせていたのである。

 物理攻撃も、魔法攻撃も効かない魔王。

 エルフたちに、もはや攻撃手段など残されていなかった。


「クク、クァーッハッハッハ。所詮貴様らなど死滅するだけの存在よ。我が世界に脆弱なるモノは不要。座して死を待つがいい」


 高笑いを浮かべる魔王。

 絶望に彩られた表情で、エルティアは静かに膝を屈した。


「どうしたエルティア? もう諦める気か?」


「もうも何も、魔王に対する手立てがないじゃないですか、首領さん」


「ふむ。確かに魔王を倒すには手立てはないか……あの魔法障壁とやらだけでもなんとかならんか? 少し身体から離れておるようだし、打ち破れば魔法を通すことくらいできよう」


「無駄ですよ。確かに、あれは薄い膜のような魔法ですけど。魔法を魔王に当てるには、あの魔法を破るか、魔法障璧の内側から魔法で攻撃するしか手はありません」


 確かに、攻撃手段は存在する。

 魔王の持つ魔法障壁を打ち破るくらいの強力な魔法か、魔法障壁の効果が及ばない近接戦に持ち込み魔法で攻撃するかだ。


 強力な魔法といってもそれこそ辺り一面焼け野原と化すような兵器級の魔法でなければ魔王の障壁など敗れはしない。

 接近戦を行うにしても、そこで魔法詠唱などした所で、その隙に殺されるのが落ちだ。

 相手は魔王なのだ。わざわざ目の前で敵の魔法が完成するのを見ているバカではない。


「だ、そうだが? やれるな? W・B」


 エルティアの言葉を聞いた首領は一言。

 ようやくやってきた己の唯一の部下へと命令する。


「インセクトワールド社首領、直々に命ずる。我が覇道を邪魔する目障りななゴミを掃除しろ!」


「任務、了解です」


 首領とエルティアの背後から、声がかかった。

 エルティアははっとして背筋を伸ばす。

 自らの背後から聞こえた声に、知らず涙が溢れた。

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