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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
正義 → 激闘
311/314

暗躍する者2

 パステルクラッシャー本部は、今未曾有の危機に瀕していた。

 本部は貸しビルの真下に作った地下施設であり、まず絶対に見つかるはずがないと高をくくっていたのだ。

 パステルクラッシャー首領・ナオンスキー侯爵の誤算といえば、丁度ヒストブルグ攻略に向け大多数の怪人を向かわせてしまっていたことだろう。

 残っている怪人は直接戦闘に向ない者たちと、丁度作り終えた怪人が二体。後は全て戦闘員である。


 そんな紙装甲となっていたパステルクラッシャー内部に今。無数の人間、否。同じ顔をしたそいつらを人間とは呼べないだろう。

 どこか機械じみた動きをする兵士たちが突撃銃を持って地下施設へと侵入しているのである。


「ええい、なんなのだこれは!?」


 ナオンスキー侯爵は各所に設置した防犯カメラの映像を見て叫ぶ。

 規則正しく潜入して来る歴戦の兵士。そんな様子を見せるのが何者か、彼には全く分からない。

 うぐぐ。と呻きながらも部下に迎撃を指示する。


 手身近に存在した戦闘員が数十体、兵士達に突撃するが、弾丸の嵐により迎撃されてしまう。

 打つ手がない。

 敵の兵士たちは一糸乱れる銃撃戦を行い、まるで軍全体が一個人のようにすら錯覚してしまう統率された動きでパステルクラッシャーを襲撃していく。


 怪人が出張る。

 もともと戦闘は得意ではない個体だったので絡め手を使うが、それでようやく一体の兵士を撃破した。

 そして知る。


 襲撃を仕掛けて来た生物、否、生命体ではないそれは生物とは呼べない。

 火花を散らすその兵士は、機械で出来た存在だった。

 今の最先端技術の粋を集めた村井の秘密結社でもここまで精巧な機械兵など作れはしない。

 ならば、この手の兵士を手にしている部隊が何者か、ナオンスキーでも軽く予想がついた。


「ラナリアか!? 何故だ。なぜ今、こんな事を……いや、そうか。今だからこそか!」


 気付いたナオンスキーは別の秘密結社たちに連絡を入れる。

 彼が予想した通りなら、同じような事が幾つもの秘密結社で起こっているはずだ。

 そして連絡を取り終えた彼は、予想が当っていた事を知る。


 しかし、フォルクスやアンデスローズガーデンには機械兵の影すらないという。

 ならばどういうことか。

 簡単だ。これは今、ヒストブルグ侵攻に参加した秘密結社だけがピンポイントで狙われているということ。逆に言えば、自分たちが参加していることが事前に筒抜けであり、主要な怪人の居なくなった本拠地が狙われていると言う事でもある。


「オノレラナリアぁぁぁっ。あの小娘。何時かスカートめくってケツにすりすりハァハァしてやるっ。絶対だッ!!」


 悔し紛れに悪態付いて、ナオンスキーは現状打破について考える。

 なんとかアレを撃退してしまうか、本部を一度放棄して逃げるべきか。

 いや、答えなど決まっている。いつ終わるともしれない機械兵を相手に闘うなど無駄である。


 ここは逃げ一択。

 奴らがここに辿りつく前にドクターたちに連絡を入れて諸共脱出するしかない。

 そう思って逃げようとした彼の周囲に風が吹いた。

 なぜ、室内で風が?


 いや、気のせいか?

 ナオンスキーは得体のしれない危機感を覚えつつもドクターたちに指示を出し一息つく。

 ふぅ。と息を吐くと、何故だろうか? 背中から何かの気配がしてくる。

 あまりにも危機感の強い反応に、ナオンスキーは心臓が早くなっていくのを感じていた。


 ゴクリと生唾を飲み込み背後を振り向く。

 そこには何も……いや、あった。

 存在していた。


 何も無いはずの空間に、悪魔の様な笑みを浮かべた透明な何か。

 寄り集まる虫の様な何かが笑みを形作っている。

 その姿、まさに空気。空気が擬人化した様な姿だ。


「我が名は四天王が一人エスカンダリオ。レウコ様の命令で、貴様を消しに来た」


 レウコ? 聞かない名前だ。

 そう思った次の瞬間、ナオンスキーの脳裏に性悪な笑みを浮かべる一人の女が浮かんだ。

 この前の首領会議で見かけた女。名は……そう、奴の名前はレウコクロリディウム女。

 そう聞いたはずだ。

 レウコ様。なるほど、つまり、こいつは……


「ラナリアの裏部隊か! やはり子飼いが居たなあの元首領め! 何が相談役だ、自分が天下取りに参加する気満々ではないかっ。くそっ。何故だ。何故俺ではないのだ。俺が世界を統べた暁には世界中の女の尻に顔を埋めてすりすりハァハァしてやるのにぃっ」


「話には聞いていたがド変態だな。レウコ様からは愛すべきバカだと聞いていたが……なるほど、阿呆ではあるらしい」


「人に向ってなんだその態度は! ええい、実体のない奴の尻など嗅げるか! 尻をだせ尻を! hshsさせろぉぉぉぉぉっ」


「無生物たる我を相手にしてまでもか……訂正だ。阿呆ではなく救いようのない変態だな。引導を渡してやるから地獄の鬼の尻でも追いかけていろ」


 パステルクラッシャー首領とエスカンダリオの一騎打ちが、今始まろうとしていた。

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