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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
正義 → 激闘
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正義の反撃4

 地球刑事シブサワ。

 二十代の頃、まだ巡査として地道な交番勤務をしていた彼は、突如異世界へと召喚された。

 世界の危機です。魔王を倒してください。

 その世界の人類を駆逐せんと動き始めた魔王軍を相手に、シブサワは必死に抵抗する。


 ある時は目の前で人が死ぬ様を見せつけられ、ある時は魔物軍勢が街を滅ぼすのを見せられた。

 だが、彼はその弱肉強食の異世界を生き抜いた。

 魔王を倒す頃には既に三年もの年月が経過しており、彼の力も強力になっていた。


 その世界では魔法。と呼ばれていた能力だが、シブサワに発現したのはサイコキネシスやサイコメトリーなど、超能力と呼べる能力であり、これを駆使して魔王を打ち倒したのである。

 そして、この世界へと戻った彼を待っていたのは、秘密結社が蔓延る裏社会だった。


 身に付けた力を振るう術が見つからず、巡査としても無断欠勤が続き解雇されると思われていた彼だったが、何処に行っていたのかを正直に話した彼を、面白がって警視総監が呼び出したのである。

 そして思ってもみなかった特進。地球刑事という新たな階級警官として、彼は警察お抱えの正義の味方としての人生を歩み始めたのだ。


 そこで彼に割り振られる案件は、まさに怪奇な現象が多かった。

 謎の不審死を遂げた政治家、突如蒸発したアイドル、少し前まで冷血とすら言われていたヤクザの組長が人が変わったように温厚になってしまったという良く分からないことも調査したりした。

 そこで、敵対が始まったのだ。


 この世界にも明確な悪が存在する。

 自分のように特異な力を持った者でなければ闘えない怪人がいる。

 シブサワは願った。二度と、あの異世界の様な理不尽な世界が目の前に現れないことを。

 そして誓った。理不尽な世界を作ろうとする悪を、駆逐しようと。


 だから、地球刑事シブサワは秘密結社たちに恐れられる。

 異世界で得た謎のチート能力を駆使して怪人を打ち倒すただの警察官。

 生身でありながら仮面ダンサーに引けを取らない実力を持つバケモノと。


「シブサワァァァァッ! 俺が相手だァ!」


 地球刑事シブサワは恐れられる。

 あまりにも圧倒的な力を持つゆえに。

 だからこそ、一旗上げたい怪人達に率先して狙われる。


 今もまた、機械化したカバの怪人がシブサワ向けて走り込んで来ていた。

 シブサワはソレを見つめながら煙草を吹かす。

 ふっと息を吐くと、白い煙が空へと昇って消えて行った。


「役不足だ。出直すがいい」


 吸い終えたのか、煙草を指で弾くシブサワ。

 真正面に突っ込んできたカバ怪人の目の前で、飛んできたタバコが突如、大爆発を引き起こした。

 避ける間もなく直撃したカバ怪人の半身が吹き飛ぶ。


 機械化した身体からスパークを放ちカバ怪人がよろめく。

 シブサワはしぶとい奴だと言葉を漏らし、一度身体を折り曲げると地面から小石を一つ掴み取る。

 そして躊躇いなくカバ怪人へと放り投げた。


 威力は無いはずだが、超能力で強化した石の飛礫は迷いなくカバ怪人を突き抜ける。

 ありえない。そんな顔をしたままカバ怪人の身体が倒れていく。

 地面に倒れ伏したその刹那、分解されるようにカバ怪人が消え去って行った。


「ふむ。さて、次は……」


 周囲を見回し、シブサワはふと、空を駆ける少女を見付けた。


「ああ、間に合ったのか……」


 ふっと薄く笑みを浮かべて怪人達に視線を向ける。


「ならば、後顧を憂う必要無し」


 今まで温存していた超能力をフル稼働させていく。

 周囲から浮き上がる無数の小石、その一つ一つがホーミング弾のように弧を描きながら怪人達へと突撃を始めた。


 突然の攻撃に驚く怪人は、その殆どがシブサワにより狩られ、運よく逃げ切れた怪人達も別の正義の味方によって討伐されていた。

 その怪人の一部が……突如感電したように痙攣する。


 空から雷が降り注ぐ。

 雷雨でもないのにおかしなことではあるが、奴がいるのならと納得するシブサワ。

 その瞳には、安堵が見え隠れしていた。


「相変わらず変態馬に乗っているのかあの娘は」


 空の一点を見上げ、シブサワは呆れた声をだす。

 そこには白い翼の生えた馬に跨る一人の少女が飛翔していた。

 少女は杖を手に持っており、それを掲げ、何かを告げる。

 その度に降り注ぐ雷が怪人たちを飲み込んでいく。


「さて、援軍も来たようだ。私は向こうの援軍に回るとするか」


 一人呟き、シブサワは怪人達に背を向けて歩きだす。

 吸っていたタバコをその場に投げ捨て歩き去る彼に、怪人の一人が好機とばかりに駆け寄った。

 大物正義の味方を屠るチャンス。


 一旗揚げようと怪人はニヤつく笑みを必死に隠し、己の大技を行わんとする。

 吸い殻を踏んだその刹那、盛大な爆発と共にその生涯を終えることになるとは、彼自身思いもよらなかったようではあるが。

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