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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
正義 → 激闘
302/314

動き出す悪5

 怪人の巨大化はただの正義の味方を圧倒的に踏み潰すくらいの実力は確かにある。

 だが現代兵器は昔と違い、巨大怪人にも有効打を与えられる兵器が多い。

 相手の肉に突き刺さり爆発するミサイルや、どれだけ逃げても追跡するミサイル。

 レーザーメス付きの機体で体当たりを敢行する兵士も居るくらいである。


 だから、怪人の巨大化は、必ずしも危険というわけではない。

 巨大ロボが出て来て怪人を倒す事もあるが、大抵は地球防衛軍などの戦闘機だけでも倒す事が出来る。

 とはいえ、生身の人間の指揮の元、陸戦部隊だけで倒すのはまだ数回しかない光景である。


 そんな光景が今、アトミックマン・ゼロスの指揮の元、一斉射の弾幕で実現しようとしていた。

 一撃一撃に押される怪人は全身から血を流しつつも前進を続ける。

 ゼロスもさすがにしぶといと思わず舌打ち。


「おい、そこの怪人」


「えーっと、シブサワさん?」


「ここで戦っていると巻き添えを喰らっても知らんぞ。どうせラナリアは事前情報で敵の目的を知っているのだろう。そちらについては任せる。絶対に奪わせるな」


 シブサワさんの言葉にラナが頷く。


「よし、それじゃあ王利さん、私達はあの正義の味方候補のもとへ行きましょ」


「あ、待ってラナちゃん。私も行く!」


「なんか面白そうですから私も付いて行きまーす」


 クルナと風音が付いて来ると言い張った。

 断る理由も無いので一緒に駆けだすと、なぜか蘭爛もついでに寄って来る。


「このままだと現役正義五人に駆逐される勢いネ、こっち来た方が楽しめそうヨ」


「それは同感です。私たちもご一緒いいですか?」


 ついでとばかりに薺と亜衣子、雅巳が駆け寄って来た。


「王利さん、こっちに真っ直ぐ、あの付き当りを左に向えば直ぐです!」


「了解!」


 校舎を横切る形で裏庭へと向う王利たち。その目の前に現れる一体の怪人。

 まるでローパーもような気持ち悪触手怪人だった。

 げひゃげひゃと笑い声のような声を発する生物を、見つけた瞬間ラナが先制。


『木島克夫、爆ぜろ』


 初めから分かっていたかのように彼の本名をぴたりと言い当て言霊発動。

 触手男は女性が多いこのメンバーに攻撃すらできず、一瞬で爆散したのだった。

 王利は思わず両手を合わせる。


「おそらく、男としてそういう改造をして貰ったのだろうが、成仏しろよ。いろんな意味で」


「何言ってるカ?」


「悲しき怪人に黙祷捧げてんだよ」


 意味の分かっていなかった蘭爛を放置して、王利たちはただ只管に前を目指す。

 裏庭に付いた時、丁度拉致対象である正義の味方が殆ど顔に特徴の無い男に捕まった所だった。

 彼は手に持っていた肌色の巨大なマリモを手放し逃げようとして、でもノーネイムの怪人に捕まったようだ。


「マズい、チェックメイト!?」


「ダメ、私に魔法が使えればここから狙撃できたのにっ」


 亜衣子の声に遅れて薺が悔しげに吐き出す。

 しかし、今の王利たちに何が出来るかといえば、ラナかクルナの言霊しかない。

 けれど、ラナもクルナも言霊を使う気配は全くみせなかった。


 なぜ? と王利が視線を向けると、ラナはクスリと笑みを漏らした。

 余裕ある態度に、まるで彼が捕まってもよいと思っているようだ。

 いや、そうではない。むしろ、今の状況は全く問題になってない、そういう顔だ。


「首領さんもいろいろ動いてるみたいですね」


「首領が?」


「ええ。助っ人、来てくれたみたいです」


 ラナがそう言った瞬間、空に飛ばされていた肌色のボールみたいな何かの形状が変化していく。

 黒いタイツ姿の生物に、頭が人の顔ではなく、ぶよぶよの肉塊のような恐ろしい顔に。

 驚くノーネイムの怪人の頭を掴み取り、その化け物は大地に降り立った。


 ひょっとこのような形状の口を持つ、漫画に出てきそうな全力の拳が突き刺さって潰されたような顔である。

 それは、見覚えのある怪人だった。

 いつかの異世界で見た肖像画。地獄の死神と呼ばれていた怪人が、首領に乞われ助っ人に来てくれたのである。


 地獄の死神と呼ばれた怪人はノーネイムの怪人を突き離す。

 倒すのかと思いきや、それだけだ。

 ただ相手を護衛対象から引き離すと、そこで満足したように周囲に視線を走らせる。


 目の前の敵を放置で他の敵の襲撃に備えている。

 あれで大丈夫なのか?

 王利が思ったその刹那、突然、ノーネイムの怪人が悲鳴を上げた。

 壊れたように叫ぶ男は謎の踊りを踊りだし、周囲を無視して暴れ回る。


 呆然と見守る王利たちの目の前で、血反吐を吐き踊り狂った怪人は、そのまま己の血溜へと沈んで行った。

 それはあまりにも強力な毒。

 喰らった者は激しい激痛と嘔吐感により血反吐を吐き散らし踊り狂うようにして息絶える。

 そんな毒を打ち込まれた怪人は、抵抗すら出来ずに死亡したのである。

 最強の護衛が、首領の虎の子が助っ人に来てくれていたのだった。

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