動き出す悪3
年内最後の投稿です。
来年もよろしくお願いします<(_ _)>
そして気付けば300話。
300話突破記念……は考えてもおらず、気付いたら通過してました。(T_T)
赤と黄色が入り混じったタイツを着込んだ戦闘員。
突進して来たこいつをヤクザキックで蹴り飛ばす。
王利はクマムシ男形態で戦闘に参加していた。
さすがに生身でいるのは危険だったから変身したのだが、これはこれで危険である。
何しろ王利以外の味方は正義の味方で、敵は怪人だけなのだ。
当然ながら、王利の姿を知らない上級生たちは王利を敵だと認識してしまう。
「ほらほら王利、頑張って避ける。味方の誤爆に巻き込まれたら笑ってあげるよ~」
彼の頭上を跳び回る妖精がちょっとイラッと来る王利は、近づいて来た青と緑と茶色が絶妙に混ざり合ったタイツの戦闘員を鉤爪で切り裂く。
王利にとっては唯一の攻撃手段ともいえる武器である。
あとはもう、殴る蹴るしか技がない。
とはいえ、蘭爛から体術を教えて貰っておいたのはむしろ良かったかもしれない。
クルナもそう感じているらしい。
襲ってきた戦闘員を双掌打でふっ飛ばし、別の戦闘員の懐に入り込んで肘を打ち込んだりと、結構活躍していた。
凄いなぁ。と思いつつ、気付けば王利も似たような動きで戦闘員を弾き飛ばし、あるいは一撃で悶絶させている。
その攻撃力に、自分自身で驚いていると、蘭爛が直ぐ横に来て微笑んでいた。
「やはり言霊凄いアルな。私の体術完コピされてしまたね」
「なんか……悪いな」
「問題無いのコトね」
言いながらも戦闘員たちを打ち倒して行く蘭爛。
しかし、敵が多い。
一向に減る気配がない。
王利は溜息吐きたい気分で周囲に視線を向ける。
無数の正義の味方候補が闘っている。
王利に絡んで来た生徒もいるし、全く知らない正義の味方も居る。
一部海パンマッチョな男やらゴリラタンク並みの大男が戦闘員を投げ飛ばしたりしているが、それ以外でも活躍している正義の味方候補が多い。
けれど、それも戦闘員相手だから。の一言に尽きる。
だから、奴らが現れた時、その戦力図は一気に反転した。
怪人。それも一つの結社のものではない。
無数の結社が入り乱れているのが直ぐにわかった。
獣形の怪人はコリントノヴァ。普通の人みたいに見えるけど一度でも目を放すと顔を認識できなくなる怪人たちはノーネイム。恐竜っぽい怪人たちはヘルマンデ地下帝国か?
他にも蛇の怪人や機械の怪人等も見られる。
おそらくアンデッドスネイクや村井機工株式会社なども参戦しているのだろう。
怪人戦闘は殆どしていない正義の味方候補は完全に遊ばれていた。
痛めつけられる正義の味方。
少し強い程度の正義の味方は怪人の群れにフルボッコされて消えていく。
だが、正義の味方候補も弱い存在ばかりじゃなかった。
突如大空から落下してきてヘビ型怪人を押しつぶした一人の戦士。
仮面を付けたその女は、ダンサー然とした格好で戦場に降り立った。
衝撃的な出撃、そしてその出で立ちに、怪人たちは恐れ慄く。
そう、伝説的正義の味方、仮面ダンサー。
それが今、彼らの目の前に現れ……
「シャッ」
押し潰されていた蛇怪人が立ち上がると、バランスを崩した仮面ダンサーは無様に倒れ込んでいた。
呆気にとられて再び呆然とする怪人たち。
え? あの仮面ダンサーがこかされた? こいつ本当に仮面ダンサーか?
そんな戸惑いが広がった。
「そこな女! 仮面ダンサーと見た! 俺の名はカメレオンロイダー! 村井機工の機械獣人だ!」
「か、仮面ダンサーステップよ! 我が威光恐れぬならば掛かって来なさい!!」
「おうよ!!」
「ええっ!? ちょ、待って、恐れようよ!?」
彼女のやりとりにやはり既存の仮面ダンサーとは違うと思いだした怪人たちが仮面ダンサーステップ向けて殺到する。
「はぁっ!? ちょ、ムリムリ、一体ならともかく集団は無理ぃ!?」
慌てる仮面ダンサーステップが怪人の波へと埋もれていく。
その様を、王利は蘭爛と共に見守っていた。
「あーその、なんだ。あれって……」
「なんちゃって仮面ダンサーのステップね。あの先輩確か生身の人あるよ」
それってヤバいんじゃ!?
王利が心配したその直後、雷鳴のように怪人の群れに何かが突入した。
まさに槍のように上空から急襲した一撃で、多くの怪人が吹き飛び、中心地にいた数体は衝撃で死亡したらしい。カメレオンロイダーとかいう機械怪人の首が空を飛んでいた。
そして、爆心地から飛び出す一つの影。
スタリと離れた場所に立ったのは、仮面ダンサーステップに似た容姿の女性。
その立ち振る舞いは洗練されており、仮面ダンサーステップとはまさに雲泥の差。役者が違うと見ている者全てに思わせた。
怪人の恐怖心を根底から湧き起こすその佇まい。
何度も何度もドクターたちから伝え聞いたその容姿。
力の……と称される二人目の仮面ダンサー、仮面ダンサー・ドゥがステップをお姫様抱っこして立っていた。




