蜘蛛娘は眠らない3
夕食を終えた風音はラナとクルナと連れだって寮へと戻る。
ここでラナはラナリアの仕事を行うためにラナリア本部に瞬間移動。
言霊を使っての強制移動なので、まさに消えたようにしか見えなかった。
便利な子見つけたな。と首領に感心を覚えた風音は、再びパソコンを開き、正義の味方をチェックして行く。
インペリアからのメールを確認。
どうやらベジタブレンジャーが活躍したらしい。
動画を貰ったのでソレを見ながら一喜一憂。
その合間にも幾つもの正義の味方ブログを回り恵美奈パインのお料理教室というサイトを確認。
お料理とは名ばかりの、今日はどこの秘密結社の怪人を料理したかのブログである。
どうやら最近彼女はノーネイムと闘い始めたらしい。
クラウド・バニーと共闘して闘う動画が配信されていたのでホクホク顔でダウンロードさせて貰う。
「っ!?」
次はどこのブログを見ようか?
無数のブログを覗いていた風音は、不意に手を止め目を見張る。
その視線の先にはアメコミヒーロー、スーパーボーイ。
黒いタイツにひらめくマント、そして前面にデカデカ存在するBのマーク。
最初はSの文字だったのだが、某アメコミヒーローの真似だと裁判沙汰になったせいでBに変えたらしい。
それでも時折訴えられたりするので、そういう奴は悪認定して徹底的に潰しているそうだ。
もともと悪行を行っていた超人なので、遠慮なく一般人にも力を振るうのである。
基本人助けする事が多いので、正義の味方として未だに名を上げられているが、正義の味方たちからも結構煙たがられていたりする。
そんな彼が……日本上陸!!?
それも明日早朝に来日である。
こうしちゃいられない。行かねばならぬ。
慌てて旅支度を整える風音。
気付いたクルナが何してんの? といった顔をするが、風音は無視して用意を終える。
そして満面の笑みで告げるのだ。
「クルナさん、ちょっと成田空港行って来ます! 明日は遅れると先生に告げてください!」
「はぁ?」
意味が分かっていない彼女を放置して、風音は寮を飛び出した。
急げ、今ならまだ間に合う。
一番いい場所を手に入れスーパーボーイと二人で写真撮るのだ!
数分後、電車に乗る風音は途中で出会った鉄道戦士ラッシュハートと意気投合してサインを貰い、ラッシュハートの電車談義に華を咲かせた。
当然サインを貰い握手を求め、メルアド交換を終えている。
ラインもできるようにして、最後には笑顔で別れた。
鉄道オタクの彼はこれからも時間が無いらしく、秒刻みのスケジュールで動いているらしい。
その合間にヒーロー業なんてよくできると思った風音だが、むしろ彼にとってはそれが普通らしく首を傾げられた。
相手からすれば無数の正義の味方と知り合っている風音の方が珍しいらしく、むしろ君の方が凄いねとか。感心されたほどである。
そしてしばらく、駅から向った成田空港に着いた頃には、まだしばらく時間があった。
その間に仮眠でも取ろうかとした風音だったが、ふいに見つけてしまった正義の味方の元へすっ飛んで行く。
空港メインで犯罪者や危険物を相手に闘う正義の味方警察犬フランシスカとそのパートナー、丁度麻薬が見つかったとかで出動してるのに出くわした。
当然、行くしかなかった。
犯人逮捕と共に現れた風音。お付きの警察官が犯人を連行する横で、サイン色紙を手にした風音に突撃を受けた婦警さんが目を丸くしていた。
別に正義の味方という訳ではないのだが、とある正義ブログに載っていた我が町ヒーローにあったのが、彼女たち二人であった。
まさか知らない女学生からサインをねだられるなど思ってもみなかった彼女たちは戸惑いながらもサインを行う。
フランシスカは足拓を色紙に付けてくれた。ちなみに墨は風音の私物であったりする。
こういう事に関しては抜け目なく用意の良い彼女であった。
そのまま気が合った婦警さんが休憩に入ったので話を弾ませ、休憩が終わってからも彼らの仕事ぶりを観察する風音。
丁度海外から帰ってきたラナリアの怪人と鉢合わせて深夜まで話し込んでいた。
その後も幾つか事件が起こり、フランシスカの仕事ぶりを堪能した風音は、翌朝までフランシスカを見守っていた。
勤務が終わった婦警さんとフランシスカは自宅へと帰っていく。
代わりにやって来たのが警察犬成田君とお供の成田さんである。ダブル成田の愛称で有名な彼らも頑張っているが、ヒーローとしては紹介されていない。
この違いはと言えば、フランシスカが小規模秘密結社の怪人を撃破したのが話題になったからである。
そう、犬に負けた怪人が存在するのだ。
それからダブル成田の活躍を見ながら、スーパーボーイの来日を待つ風音であった。




