ヒストブルグ学園後期組3
王利のデータベースを覗く面々。
こらそこの金髪女。お前まで何見てんだよ。
王利の無言の睨みが彼女に向うが、柳に風と受け流す。というか完全無視だ。
「ほうほう、これが怪人さんの能力……ってダメじゃん。ノーデータってどうなのよ」
「残念ながら、ラナリアの怪人管理は杜撰管理と違って強力なセキュリティが入ってるからね。参照出来ないんだ。さすがに電脳世界を牛耳る怪人がいる場所からは情報を得られないよ。あのインペリアとかいう奴は本当に危険だ。冗談通じないし」
どうやら一度ハッキングを試みてインペリアに撃退された口らしい。
確かに天才的ハッカーだったとしても、数世代先を行っている異世界の機械が相手では敗北必死だったようだ。
「だから今出会ってから体格を見てデータ算出はしたけど、変身した後の姿はまだ見てないし、あ、でも噂はあるよ。高確率で事実と思われる噂、バグソルジャーのバグパピヨンと付き合ってるらしいです」
「え? マジで」
「正義の味方だよね? ……怪人、だよね?」
驚く薺が王利を向いて怪人だよねと確認して来た。どう応えろと?
王利は頬を掻きながら頷く。
肯定した瞬間、周囲のクラスメイトたちも王利の元へと近寄って来た。
見る間に人垣に埋もれて行く王利。
葉奈のネームバリューは彼らにも有効なようだ。
しかも前回のクラスメイトたちより露骨に興味深そうに近づいてくる。
屋上大量自殺未遂事件を知らない彼らは王利に対する偏見が無い。
やはり悪というレッテルが無いので普通にクラスメイトとして溶け込めるのかもしれない。
「バグソルジャーの知り合いアルか!?」
「というか彼女!? どういうこと!」
「おい、怪人だろ、なんで正義の味方と出来てんだよ。漫画じゃねぇぞ!?」
なぜだろう。こう羨ましがられるとついつい嬉しくなってしまうのは。
葉奈と自分の関係は、普通の彼氏彼女とは違う歪なものであるというのに、彼女が居る優越感を持ちつつも、葉奈を自分のステータスの一つと感じてしまう自分に嫌悪感を抱く。
「でも、なんでまた付き合う事に?」
真っ黒に焼けた金髪女が興味深々に聞いて来る。
さっきまで王利に対して疑惑というか、敵意を向けていたというのに、まるで掌返したようにきらきらした目で見つめていた。
どうやら他人の恋バナが好物なのだそうだ。
「いや、最初は腕相撲で負けたらあんたの彼女になってやるみたいなこと言われて、相手が正義の味方とは知らなくてさ。向こうもこっちが怪人と知らなかったから、なんか勝っちゃって……そこからかな」
「って、それ付き合ってるわけじゃないじゃん? 義理? でも怪人と解ってんだから倒しちゃえばそんな契約無効だし……」
「というか、最近の葉奈見てるとむしろ一方的に王利に惚れてるね」
ぴょこんとポケットから飛び出すエアリアル。
最近出て来ないので王利もたびたび忘れてしまうのだが、小型少女は普通にそこに存在していた。
呼ばれてないのに飛び出て来るのだ。
当然、存在を知らなかった彼らは驚いた。
そして……
「か、可愛いっ!? 何この生物!? 妖精!?」
「え? 妖精って実在すんの!? すごい。可愛い」
「私も、私もみたいアルッ」
「俺、俺が先だ。生妖精見して貸して触らせてっ」
「黙れ変態ッ」
「ぎゃぶっ」
「がはっ。何故俺まで……」
エアリアルの出現でなぜか阿鼻叫喚の地獄絵図になった教室。
正義の味方候補たちの中に妖精好きの変態が混じっていたせいで誰かが殴り、そのせいで犠牲者が増えた。
さらに倒れた男二人が別の生徒にぶつかる。
「きゃああっ、何処触ってんの変態ッ」
「のああっ、そこに顔埋めんなっ、俺は男色趣味はねぇ!」
「ちょっ、そういいながら僕の股間を触るな変態っ」
「誰だあたいの胸鷲掴んだクソ野郎ッ、殺されたいのかッ」
そして乱闘が始まった。
なぜこうなった?
王利はその乱闘をただただ呆然と見守る。
下手に近づいて巻き込まれたくはない。
「な、なぁ海賀」
「な、何かな森本君?」
「どうしてこうなった?」
「空中で困惑してる妖精? さんのせいじゃないかな?」
「うはぁ。凄い凄い。ところで怪人君、あの妖精はなんなのかな?」
「彼女はエアリアル、俺の……保護者かな?」
気分的には王利の方が保護者なのだがそういうと彼女が怒るのでこう言うしかない。
「保護者……って感じじゃないわよね。愛玩動物? マジカワなんですけど」
「というか、今更だけどあんた誰?」
「……藍染亜衣子よ」
金髪娘は仏頂面で名前だけ告げる。
自己紹介の時は殆ど覚えてなかったから、王利にとってはこれが初の自己紹介という感じだ。
名前くらい覚えとけよといった表情だったが、王利としては興味の無い女性だ。覚える気など全くなかった。




