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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 学園
279/314

ヒストブルグ学園後期組1

「森本さんたちは少しだけ私達より早いんですよね?」


 初めの一日は自己紹介で終わりを告げた。

 正直な話、ラナリアの怪人というだけでやはり周囲からは白い目で見られてしまう。

 海翔やここなのように怪人だろうと関係なく、近づいて来てくれるフレンドリーさがあればいいのだが、このクラスにそういう存在はあまり居ないようで、いや、居る事は居るのだが、そういう存在も、今は仲間づくりに必死だ。


 王利たち、ラナリア組は四人で固まって座っているため、ある種近寄りがたい存在になっているのも遠巻きにされている原因でもあった。

 ヒストブルグからの無言の威圧が解ってしまう王利、こいつらがラナリアの怪人だぞと直ぐ分かりやすいように固めて座らせたみたいである。


 で、誰も話しかけて来ないので暇を持て余した王利は、ぼさぼさ頭のショートカット少女と会話していた。

 この人物の名は、武藤風音。今年九月の新人正義の味方候補としてライドレンジャーという正義の味方からの推薦でやってきた、まさに鳴り物入りの存在。

 そして、ラナリア所属、旧インセクトワールドドクター兼怪人という盛り過ぎな生物でもある。


 怪人名はS・S。セブンズ・スパイダーというらしい。なんでも七つの蜘蛛の特性を持つ怪人らしく、首領のお気に入り怪人の一人であったそうだ。

 首領を心から心酔しており、この度首領の存命を知ってラナリアに入社。ついでにライドレンジャーに前々から行ってみないかと誘われていたヒストブルグに入学したのだという。


 元々、正義の味方が好きで、追っかけをしていたらしい彼女は、ヒストブルグにもよく出没していた。

 持ち前の、人に取り入る巧妙な口八丁手八丁で相手を絡め取るように仲良くなっていく口の上手さで巧みに正義の味方からサインを貰ったり、一緒に写真撮ったり、幾つかの正義の味方とは親友並みの付き合いをしているらしい。


 この前は真由たちとウインドショッピングしていたとかついさっき言われて驚いた。

 あの正義の塊どもが悪の怪人とウインドショッピング? 

 王利たちインセクトワールドは確かに休戦しているが、どうやらそれ以前から付き合いがあるらしいのだ。


 真由たちからは一度もそういった事を教えてもらはなかったが、サイン色紙や一緒にピースしてる写真を見せられると納得するしかない王利だった。

 ちなみに、この学園にいるなんちゃって仮面ダンサーやメイド戦士という存在とも知り合いらしく、結構な頻度で遊びに出掛けているらしい。


 正義の味方たちも、この風音だけは悪という括りにあてはめていないようだ。

 事実、彼女は怪人として何かすることはないらしい。

 やったとしてもドクターとして怪人たちのメンテナンス作業を行う程度。


 実際の悪行的な作業には手をだしていないそうだ。

 これは正義の味方と数多く知り合いたいためだけに悪の組織に入った少女のぶっ壊れた価値観から来るものであって、別段悪な所業はしたくないからやってない。というわけじゃない。

 ただ、そうやって正義の味方を自分の元に集めなくとも現状で沢山の正義の味方と知り合えるから満足している。その一点に尽きるのだ。


 首領も彼女の行動には口出しは殆どしていない。

 怪人と組ませてメンテナンスを何度かさせたそうだが、それだけで、後は彼女の好きなようにやらせていたのだ。

 下手に縛ると正義の味方にコロッと落とされてしまう程にどっちつかずの性格らしいので、縛らず悪のまま正義と仲良く成ろうとする捕食者になって貰っているのである。


 もしも、ここに首領がいたのなら、風音はただ自由に行動させるだけで獲物を捕獲し、絡め取って吸い尽くすから良いのだ。とでもいいそうだ。

 事実、彼女は蜘蛛のように獲物に近付き、糸で絡め取り、相手が気付いた時には既に捕食された後といったどこかしら捕食者的な考えがある。


 何せ死ぬ時は最大級の悪になって、無数の正義の味方が協力して自分を倒して欲しいとか訳の分からない破滅願望を提唱するのだから手に負えない。

 悪になる。正義がこぞって倒そうと集まる。無数の正義の味方と知り合える。そして皆が自分を求めて集って来てくれる。これぞ幸福。

 と、そんな思考を洩らす彼女は、周囲がどん引きしているのに気付いていなかった。


 王利と話しているつもりでも、次第大きくなる彼女の声は、妄想と現実の狭間で周囲にしっかりと宣言しているのだ。

 あなた達も私を求めて来てください。悪を倒そうと求める正義がいる限り、私は悪でありつづけます。とかほざいていたので、王利は沈痛な面持ちで頭を抱えるしかなかった。


 ラナとクルナ? 二人はやはり二人の世界で学校生活堪能中だ。

 まさに周囲には問題児しかいないのか。王利は早くもヒストブルグに来た事を後悔していた。

 そして、思わず周囲を探ってしまう。

 誰か、誰でもいい。このよくわからない言葉を喋る怪人から離れる口実にできそうな友人候補は!

 そして王利は、そいつを見付けた。

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