屋上行こうぜ
学園デビューはどうやら上手く行ったようだ。
正直王利としてもここまでうまく行くとは思っていなかったので驚きなのだが、良く話すクラスメイトが出来た気分である。
特に海翔は誰かれ構わず仲良くなろうとする考え足らずの怖いもの知らずなので、怪人であるというだけで偏見は持たず、相手の人格で判断しているようだ。
それでも、敵対する様な事があれば、お前、騙したのかっ!? みたいな頭の悪そうな台詞を吐いてきそうではある。
あとは坪井ここなだろう。
僕ッ娘な彼女に、バグソルジャーの面々紹介しようかと告げた途端に王利君愛してるっとか言われると、悪い気はしない王利。葉奈が拗ねるかなと思いつつも、何時か葉奈たちと顔合わせを実現させることを条件に、彼らとの友情を手に入れることに成功した。
他の二人はここなに便乗する形で普通に付いてくる気満々だったので、一応相手方に話を伝えてからと言ってはおいたが王利がバグソルジャーの面々とコンタクトを取らないと、暴動が起きそうな期待のし具合だった。
要が少し離れた席からハラハラした顔でこちらを見てくれていたが、王利が心配なさそうなのを知って、安堵の息を吐いていた。
ちなみに、ゴリラの様な大男が磯海寅雄。インテリメガネ君は長谷部昭逸というらしい。
どうでもよかったのだが、さすがに名前を覚えないと可哀想なので王利は必死に顔と名前を一致させる努力をするのだった。
そんな彼が初の授業を終えて休憩時間を取ろうとした時だ。
教室に二人組の男が現れた。
軽薄そうな顔の二人。軟派な顔をしているのだが、イケメン風味が若干強いので女性人気は高そうな二人だ。
カルヴァのように胸襟を開いている茶髪の男と、いけすかない高慢ちきな顔をしたワカメのような髪型の男。そんな二人は迷うことなく王利の元へとやってくる。
「噂の転入生ってコイツ?」
「みたいだね。佐伯、マジでヤんの?」
「フッ。当然だろう。新堂さんを泣かしたそうじゃないか。その事実があればこいつはボクの敵さ」
ふっと髪を掻き上げるワカメ君。見下したような顔で王利を見つめ、挑発的に鼻を鳴らす。
新堂といえば桃香だろう。
しかしだ、王利には彼女を泣かした記憶はない。
何度か睨まれた記憶はあるが、泣いていたとは思えない。
それでも、ワカメ頭の佐伯は王利に殺意にも似た視線を向けた。
「転校生、屋上……行こうか」
昭和の漫画か何かかよ。
王利は思わずツッコミ入れたくなったが、溜息を吐いて付いて行くことにした。
余程の正義の味方でない限り、自分が傷付くことはあるまいと、彼自身も自分の身体に自信を持っていたせいだ。
ただ、葉奈さんがこの事を知ったら大変なことになるだろうな。と思ったのは内緒である。
怪人にちょっかい出した正義の味方候補に怒り狂った正義の味方が襲いかかるとか、世間を賑わす大問題も良い所だった。
彼女の王利依存症もかなり悪化しているとも言える。
立ち上がる王利にラナとクルナが会話を止めて彼を見る。
今まで王利が絡まれても何もしなかった二人が、珍しくこちらを向いて来たので、王利もどうしたのかと二人に視線を向けた。
「うーん。私はこの中じゃ王利さんが一番かな」
「ラナは趣味悪いと思う。でも、この中なら同感かな?」
見事に煽るだけ煽って二人の会話に戻って行った。
引くつく先輩方二人。強引に王利の腕を引っ張り屋上へと向って行く。
呆気に取られた海翔たちが呆然と見送る中、王利は溜息を吐きながら連れて行かれるのだった。
屋上に連れて行かれると、そこには無数のお兄さん。
正義の味方であるはずなのに、まるで不良の集会のように20人程の正義の味方候補がそこに居た。
皆暇人なんだなぁ。と思わず現実逃避した王利。
とりあえず変身するか。と変身ワードを唱えようとした彼に、衝撃が襲った。
思い切り振り飛ばされた王利は地面を転がる。
なんだ? と思って見上げれば、ニヤついた佐伯の笑みがあった。
「変身なんてさせるわけねぇだろ。怪人野郎。テメェは生身でぶちのめすに決まってんだろ」
「まぁ、正直な話、新堂さんの攻撃で傷付かなかったお前相手に俺らが束になったところで意味ないしな。というわけで、こいつらのサンドバック、付き合ってくれ」
冗談じゃない!?
口を開こうとした王利は、自分の口から声が出ないことに気付く。
なんだこれ? 驚く王利に、佐伯が醜悪な笑みを見せた。
「サウンドマンという奴を知ってるか。そこに居る奴だ。音を奪ったり大音量で攻撃したりする正義の味方候補だよ。テメェの声を奪わせて貰った。変身のキーワードは言わせねぇよ。さぁ、私刑の始まりだ。怪人をぶっ殺すぞ皆!」
おいおい、これは冗談じゃすまないぞ?
さすがの王利も絶体絶命なこの状況はマズいとしか言いようがない。
無数の男達が殺到して来る。成す術など、王利には無かった……




