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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 学園
271/314

首領会議(裏)

「では、これにて解散する」


 フォルクス首領の一声で、各々帰り支度を始める。

 いの一番に会議所を出たのはレウコクロリディウムだった。

 ラナも彼女に続いて部屋を後にする。


「いいんですか?」


「ん? 何がだ?」


「会議、まだ終わってないはずですよ。フォルクスやアンデスローズガーデン、コリントノヴァは帰り支度ばかりか席すら立とうとしてませんでした」


「ああ。今回の議題は全て終わったからいいんだ。これから始まるのはラナリアに対してどういう態度を取るかの会議。我らが居ては話も出来まい? 好きにさせてやればいいのさ」


「ああ、なるほど……」


 クックと笑うレウコクロリディウムに、ラナは呆れた顔で納得するのだった。


 そして、ラナリアが居なくなった会議室。

 何名かの首領は同じように帰ってしまっていた。

 その中には意図を察せられなかった愚かな首領も居たし、わかってはいたが関係はないと帰ってしまった者も居た。


 フォルクス首領としても、別に帰った者を引きとめてまで話したい議題ではない。

 他の首領たちの意見を擦り合わせしておきたいだけなのだから。

 フォルクス首領、ドン・エスタークは残った首領たちを見回す。


 右から、ポップコーン見たいな頭巾を被った紫色の変態首領。またの名をパステルクラッシャー首領・ナオンスキー侯爵。

 モノクルアイの老人で吸血鬼の様に黒いマントを羽織った男、コリントノヴァ総帥、草葉くさばの 岩内ようち。もちろん偽名だ。


 そしてフォルクスの対面に居残っている白い髪の女。アンデスローズガーデン首領、リエッタ・ブルーローズ。

 巨大組織と言えばこのくらいだろうか?

 ドン・エスタークはそう思いながら他にも残った面々を見回す。


 村井機工株式会社首領、村井。アルクメデン総帥、ヘカテイカ。ロイド帝国首相、メルガ・モルガータ。シクタ首領、どうもこうも。ノーネイム代表、山田太郎。

 なかなかのメンツが揃っているようだ。


 皆、普通の人間に見える存在は居ない。

 いや、山田太郎はむしろ人間にしか見えない。

 昭和の見本とされるようなどこにでもいそうな顔立ちの学生だ。


 これが悪の首領だと言われても納得できないあまりにも平凡な顔立ちの男である。

 むしろ特徴が無さ過ぎて覚えられない存在であった。

 秘密結社の首領も何年もするうちに変わったものだと時の流れを感じつつ、ドン・エスタークは感慨に耽る。


 村井は商社マンとでも言うべきスーツ姿に長方形メガネの男だ。ただし、全身が銀色に輝いている。自身を完全に機械化してしまった首領である。

 アルクメデン総帥、ヘカテイカは鞭を持った女性。犬の顔が後頭部に付いているという怪人である。


 メルガ・モルガータは地底人だ。地下帝国の一種らしいのだがドン・エスタークは詳しく知らない。

 ただ、悪の秘密結社として交渉出来る存在だったのでこの会合に出席して貰うようになっただけだ。土色の身体をしているが、割と温厚な性格だった。


 そしてシクタの首領、どうもこうも。

 元々二人の名医だったらしいのだが、互いの技術の穴を補うために改造手術で一つの身体を二人で共同操作できるよう改造した男女だ。


 双方の身体半分づつを混ぜ合わせて使っているため、片方は胸があり、もう片方は大胸筋が動く筋肉質。当然ながら両性具有の変わった存在だ。

 鉄だったかの城というアニメに似た様な存在がでていたが、アレは二つをたんに繋ぎ合せた存在だったので、別物だろう。

 このどうもこうもは互いに動かしやすい腕を残すため、胴体とは別の腕を互いに付け四つに、足も交換しとなんだかややこしい身体になっているのだ。


 彼らの秘密結社には妖怪の名を冠した者が多く。別名、妖研究所とも言われている組織である。

 彼ら自身も妖怪どうもこうもの名を自称しているのだが、名医ではなくマッドサイエンティストであるという違いを除けば、行った行為は同じようなものなのである。


「さて、腹を割って話そう。議題はラナリアに付いてだ」


「彼らの独裁を許していては我等の悲願が達せられん」


「だがナオンスキーよ。我等は先程枷を付けられただろう、どうするというのだ?」


「まさか先制攻撃を仕掛けられるとはな。忌々しい」


「油断ならんとは思っていたが、あの新首領も相当ヤバいわね」


「そうですね」


「どうもこうも、これ以上何かしたところで無謀に終わりそうだがね。「私は共存すべきだと思うわ」お前の意見は聞いてない、俺は全面戦争をすべきだと思う。放っておけば潰される」


「はっは。皆さん別々な意見を擦り合わせたところで意味はありますまい。これは各自で決めた方が良いのではドン・エスターク?」


 村井の言葉に頭を掻くドン・エスターク。

 悪の結社同士なのだから共闘は無理だという事は理解していたが、これは確かに擦り合わせは無理かもしれないと思うのだった。

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