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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 学園
270/314

首領会議

 その日、ある施設で秘密の会合が行われていた。

 久々に出会った面々を見据え、旧インセクトワールド首領、レウコクロリディウムは無言で隣のラナを見る。

 折角明日よりヒストブルグに入学だというのに、わざわざこのような場所に連れて来てすまないな。

 この会議の直前、ラナに言った言葉だ。本来なら今日は寮で寝ていたラナを無理矢理連れ出してきたのである。


 レウコクロリディウムからの殊勝な言葉を聞いたラナの驚き様は凄まじかったが、レウコクロリディウムとしてはただの世間話と同じだ。

 今回、ラナはほぼ座っているだけで構わないのだから。

 必要な事は自分が行い、ラナはその会合で首領同士の腹の探り合いを知るだけでいい。

 あとは見聞きした内容をどうすればいいのか、嘘と真実の取捨選択方法、など反省会を開くだけだ。


 今回集まったのはこの近辺を牛耳る悪の組織の首脳とその側近が一人づつ。

 円卓に座るようにして出席しているのは姿を見せても構わない、不意打ち上等を掲げる者たちだけ。

 他の首領はモニター越しになっているが、きちんと参加しているようで、欠席者はいない。いや、幾つか潰された組織の首領が欠席しているが、それは問題無い。

 むろん、モニターに映る者や目の前に存在する者は本当に首領かどうかは別として。


「ふむ? アンデッドスネイクは潰れたのか? 誰か聞いている者はいるか?」


「さて、少し前から活動を休止したらしいが?」


「あのような歪な組織がどうなろうとしったこっちゃないわ」


 ようやく大体揃ったせいか、皆が口々に無駄話を行う。

 と言っても、すでに腹の探り合いは始まっていた。

 お互いにどうでもいい話をしながら相手にジャブを打ち込んでいる。


 ラナは頭の中に居るレウコクロリディウムからそんな話を聞かされていた。

 今、彼女の横に居るのはホムンクルスのレウコクロリディウムではあるが、新たに生まれたレウコクロリディウムの影武者が入っている。


 初期からいるレウコクロリディウムの本体が動かしているのである。

 その本体はラナリアの地下、奥深くで水槽に浸かっているが、意識は完全にラナの脳内に居るレウコクロリディウムとは独立した思考を有している。

 考え方が同じなだけの別人と言っても良かった。


 今、首領たちは情報を小出しにしながら、その情報を誰がどの程度知っているかを探っている。

 これは相手の索敵能力がどれくらいなのかの指標にもなる。

 特に新たに組織された悪の組織などはこの問答を理解しておらず、私は知りません。などと言えば確実に付け込まれ、巨大組織の下請けとされることだろう。


 つまり、これは他社からの侵略を回避し、自分が侵略すべき組織の品定め会議と言ったものであった。

 とはいえ、出席者はほぼ毎度顔を合わす連中だ。レウコクロリディウムはそんな彼らを見ながら愉悦に歪む。


「おお、ラナリアの、おまいさんらは知っておるかね」


「そうだな……」


「お前さんには聞いとらんぞインセクトワールドの。滅ぼされた組織の首領がよくもまぁ顔を出せたものよな」


「ふん。これは異なことを。滅ぼされたなら首領たる我がここにいるはずもなかろ? 雌伏の時とでも思ってくれてればいいさ。それに、後任を育てるというのも存外悪くはないぞ。ククク」


「口の減らん雌ガキめ」


 今、レウコクロリディウムと舌戦を始めているのはフォルクスという秘密結社の首領だ。

 噂では既に200の年を生きていると言われているが、皺だらけの老人としか言えない彼は未だに現役で首領をやっている。

 自力で歩いている様子からもまだまだ死ぬのは先の様だ。


「主にはおらんのか、いつまでも首領でいる訳にもいくまい?」


「なに、儂の代わりなどいくらでもおるさ。しかし、ということは、彼女は今回は様子見かね」


「一応首領としては付いて来たが、さすがに悪人共の前に贄として差し出す訳にも行くまいよ。これも人生勉強だ。なので、ラナリア代表は我と思ってくれてよいよ」


「抜かしおる。正直に答えればよかろう、ラナリアと名を変えはしたが、お前が首領なのだと」


「いやいや、ラナリア首領はラナであるよ。そこは感違いしないでいただきたいものだ。今回は初めての会合、他の新人共の様に飲まれる訳にはいかんでな。まぁ、今後の顔見せと思っておくれ」


「ふぉっふぉ。虎の子自慢か。確かに素晴らしい戦果を叩きだしてくれおった。おかげで正義の味方共の動きも悪くなっておる。じゃが……」


 不意に、全員の視線がレウコクロリディウムへと集まった。


「我等の行動を阻害しておるのもまた、ラナリアなのじゃがな?」


「それは失礼。我が社の方針状、どうしても面倒事の解決に向わねばならぬのだよ。その辺りは適当に闘って撤退などして頂けると双方の被害が減るかと思うのだがね」


「バカな。我等アンデスローズガーデンの方針、忘れた訳ではあるまい? 不埒な男共への粛清、黙して逃げよというか?」


「依頼を受け闘うのは仕事の一つ、その仕事の後に再度事が起こったところで我等の関知するところではない。そういうことだ。まぁ依頼されれば再び向わざるをえんがね」


「なるほど。つまり我等はラナリアから介入があることを承知して行動を起こせと」


「何か問題が?」


 巨漢の男が台に拳を叩きつける。


「大アリだろうっ。貴様は悪の組織全てを敵に回したいのか、ラナ! そこの芋虫女に付き従えば、我ら全てとの戦争に突入するぞ!」


「ふむ。ラナ……発言しても良いぞ?」


「では……」


 それまで、沈黙を保っていたラナが厳かに口を開く。


「『全員、ラナリアへの攻撃意思を持った攻撃を禁ず』。ふふ、これで皆さんと敵対することはなさそうです。戦争に突入することがなくて、よかったです。私、戦争は嫌いですから」


 にたりと笑みを浮かべるラナ。その醜悪な笑みは、レウコクロリディウムが敵が策に嵌った時に見せるものと同じ笑みに見えた。

 この日、ラナの恐ろしさを、首領たちは身を持って体験させられるのだった。

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