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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 学園
267/314

寮の同居人

 結果を言えば、そいつは言いたい事だけを言い終えて去って行った。

 一応説明らしき口頭説明はあったのだが、何処をどう行けばどうのこうのでは理解出来るはずもない。

 そもそも説明前にどうでもいいことをねちねちと告げていたのだから王利が小言が説明に変わっていても理解出来るはずがなかった。


 なんか喋ってるなぁ。と対岸の火事のように呆然と見送るだけだったのである。

 そして、名前すらわからない彼が去っていくと、残された王利は寮の入り口で佇む以外何も出来なかった。

 仕方なく、寮の入り口横にあるカウンターにいたおじさんに尋ねることにする。


 おじさんも傍から聞いていて気の毒に思ったのだろう。

 苦笑しながら王利の名前を聞き、部屋番号を確認してくれた。

 さらに、聞き逃したであろう寮の説明をしてくれる。


 どうやら風呂は各部屋に付いているらしい。

 他にも食堂が存在し、朝夕の食事はここで取れるのだとか。

 ただし、朝は7:00から8:00の間、夕方は6:00から8:00の間しか受け付けていないらしいので遅れないようにしておくよう釘を刺される。


 洗濯に関してもコインランドリー型の洗濯機部屋が存在しており、そこで洗って部屋に有るベランダで干すとのこと。

 あの男の説明など不要で、管理人さんの説明さえ受ければ問題はなさそうだった。

 ほんと、小言聞かされるためだけに出会ったような人物だった。


 王利は溜息を吐きながら自室へと向う。

 どうやら四人部屋らしく、王利の他に三人の正義の味方がいるらしい。

 三人の正義の味方に、怪人が一人。

 まさに、闇討ちに最適な状況だった。


「ここか」


 ドアをノックして、王利は部屋へと入る。

 こういうのは始めが肝心だ。

 というわけで、とりあえず下手に出ることにする。


「初めまして、今日からお世話になりますW・Bで……す?」


 礼を行い顔をあげた瞬間目に映ったのは……セーラー服を身に纏い、ティアラっぽいのを頭に被り、可愛らしいステッキを真上に振り上げている中年のおじさんだった。

 肉厚ジューシーな全身、アブラギッシュな光る頭。たるんだお腹はビールっ腹。でぶんっと体内脂肪が自己主張していらっしゃる。


 青髭の生えたおじさんは、王利と眼が合い呆然とした顔で見つめ合っていた。

 静寂が世界を支配する。

 ただただ無為な時間が流れていく。

 そして、王利は後ろに下がると、静かにドアを閉めた。


 何だ今のは?

 脂汗が全身に噴き出す感覚を味わいながら今見た衝撃の光景が、ただの幻であってくれと願ってしまう。

 焦る王利に気を利かせたのか、部屋の中からドアが開かれる。


「ご、ごめんね。ちょっと皆の変身を見せ合ってたところなんだ。決して変態パーティー開催されてないから入って来て!」


 ドアから顔を出したのは、ショートカットの可愛らしい女の子。ではなく男の娘だった。

 一瞬余りの可愛さに魅惚れそうになった王利は思わず男、男、男っと被りを振ってもう一度彼を見る。

 今は部屋だからだろう。肩に紐を引っ掛けるタイプの下着と黄色い肩が出るタイプの服にスカートを着ている少年だ。

 どう見ても女の子にしか見えない。

 しかも王利的にはドストライクの容姿をしている。


 一瞬葉奈が浮かんで消えたのは気のせいだ。そう思う程に一気に心拍数が上がる王利だった。

 でも、相手は男である。

 男子寮にいるのだから迷うことなく男である。

 決して遊びに来た少女ではない。


「あ、どうぞどうぞ。今年から学園に通ってる戸隠とがくし かなめと言います」


「あ、ああ。森本王利です。これからよろしく?」


 要に促されるままに部屋に入る。

 すると、先程見たコスプレ衣装の変態は居らず、はち切れそうな丸首シャツと腹巻き、ステテコ衣装のおっさんが一人、恥ずかしそうに縮こまっている。

 それと物凄いイケメン男が一人。


 王利たちを見てやぁ。と周囲にバラが咲きそうな微笑みで出向える。

 歯が、キランと光った気がした。

 儚げでいて陽光が似合う。はだけた白い襟が立ったYシャツと白いズボンを来た青年は、窓辺にもたれかかっている。

 どうやら彼らが王利の相部屋仲間のようだ。


「僕らはこれから新しい仲間らしい。初めまして森本王利君。僕が噂の鮮烈の貴公子、カルドヴァルド・ヴァン・ロッテンハイムさ! 気軽にカルヴァとでも呼んでくれたまえ」


「彼、田渕孝雄君って言うんだ」


 完全な厨二病患者がいました。


「おいおい、止してくれたまえ。下界の名は捨てた身だ。僕は……」


 ふっと微笑み髪を掻き上げる。サラサラヘアが宙を泳いだ。


「そう、僕は神に選ばれし貴公子、カルドヴァルド・ヴァン・ロッテンハイムとなったのだよ」


 バラを一つ咥えてキラリと微笑む。扱い辛そうな存在と言う事だけは、理解した王利だった。

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