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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 学園
261/314

ヒストブルグ案内1

「えー、そういう訳で、急遽あなたたちの案内をするよう仰せつかりました、新堂桃香ともうします」


 入学許可が下りた王利たちは、翌日、再びヒストブルグに来ていた。

 必要書類は首領と学園長の間でやりとりされるので、彼らは入学までの間に学校を見学しておくよう首領様に仰せつかったのである。


 校門前にやってきた王利たち三人と一匹を出迎えたのが、大和撫子のように巫女服でお辞儀をする桃香であった。

 何の説明もないまま集まった王利たちは互いに顔を見合わせる。

 会った瞬間そういう訳でと言われても理解などできなかった。


「えーっと、桃香さん? とりあえずあなたが案内してくれるってことで、いいんすか?」


 代表して王利が聞いてみる。すると、キッと殺意の視線を一瞬見せた桃香は王利に微笑んで見せる。


「はい。ヒストブルグ3年代表として、立派に務めあげましょう。どうぞ、こちらに」


 笑顔の前のインパクトが強過ぎて呆然としている王利たちをよそに、一人踵を返して綺麗な動作で歩きだす桃香。

 なぜ赤と白ではなく桃色と白の巫女服なのかと聞きそうになる口を閉じ、王利たちは顔を見合せながらも彼女に付いて行く。


「今の、ヤバかったねぇ王利。あんた何したの?」


「いや、何もしてないからな」


「おそらく、王利さんが怪人だからでしょうね。ここは正義の味方の巣窟。見習いたちはあなたを倒す機会を窺っているはずですよ。命の危険があるかもですから私かクルナちゃんとは離れないようにしてください。できるだけ一人の時間を作らないように」


「つってもここ、寮生活だろ。寮内どうすんだ?」


「私達三人でというのはダメなんですか?」


「ラナちゃん……こいつ男なんだからダメに決まってるでしょ。一緒に寝泊まりなんてしたら子供出来ちゃうわよ」


「おいおい、そもそも男子寮と女子寮に分かれてるらしいから一緒には無理だって」


「ま、王利については安心したまい。そのためのエアリアルさんですぜ!」


 王利の肩に乗ったままのエアリアルが得意げに胸を張る。

 そもそもエアリアルがどういう存在か知らないラナとクルナは首を捻るだけだった。


「あの、そろそろ説明を始めてもよいでしょうか?」


「あ、ごめん。どうぞ」


 王利たちが話だしたので口を噤んでいた桃香は溜息を吐いて説明を開始した。


「まず、今歩いて来ていただいた様に、あの門より入って、ここに向っていただきます。これが正面玄関となります。この先は下足場となっておりますので指定の上履きに履き替えて上がっていただきます。既にあなた方の上履きはロッカー内に収められているそうなので、履いてみてください」


 案内された下足場は、王利の居た学校の様なスノコではなかった。そして下足場もただの棚に無数の靴が入っていると言うモノではなかった。

 駅のコインロッカーの様に完全に内部が見えない作りの下足置き場に、ウレタンマットのように柔らかな素材が敷かれた靴を履き替える場所。


 王利は自分の名前のロッカーを探す。

 どうやら網膜認証式らしい。

 いつそんな認証を登録したのか分からなかったが、とりあえず試してみる。

 シューズロッカーが開かれた。


 無駄にハイテクだ。

 感心しながら靴を履き替える王利の横では、取り出し方が分からなかったクルナが我一番と言霊を使っていた。


「『シューズロッカー、開け』」


 強制的に開け放たれた瞬間、けたたましいサイレンが鳴り響く。

 強大な音に驚くクルナ。

 呆気にとられた顔で呆然としている桃香、そして頭を抱える王利。

 ラナは呆れた顔でクルナを見ていた。


「クルナちゃん……」


「い、いや、その、開け方が分からないなら楽に開けようと……」


 慌てるクルナだが、音を聞いた周囲にいた先生たちが慌てたようにやって来る。

 皆歴戦のヒーロー。あるいは現役引退をした有志のヒーローたちである。

 そんな彼らが次々集まって来て、ようやく動き出した桃香が平謝りを始めていた。


「『サイレン止まりなさい』」


 そして強制的に止められるサイレンの音。

 クルナ、いくらなんでもそりゃないぜ。

 王利は沈痛な面持ちで嘆くのだった。


 前途多難。まさにこれからの王利の未来を暗示しているようでもあった。

 そんな感じで桃香にさらに恨みがましい視線を向けられた王利たちは、なんとか上履きへと履き替え校内へと向う。


「ダメだよクルナちゃん。郷に行っては郷に従え。身を守る以外で言霊はあまり使わないようにね」


「うぐっ。ラナちゃんに言われるなんて……」


 かなりショックを受けていたが、クルナが以降暴走する事はなく、案内は続行するのだった。

 桃香に案内されるままに幾つかの教室を覗いて行く。

 この辺りは正義見習いの生徒たちが正義の味方のなんたるか、どのような正義の味方になりたいかを考察し、道を決めるための、言わばヒストブルグ正式入学前段階者たちの教室らしい。

 そんな場所を通りすぎながら、王利たちは次の目的地へと向うのだった。

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