第四部プロローグ
正義の味方養成学園ヒストブルグ。
その一室に、男はいた。
彼の目の前には三人の少女。
あまりの衝撃的な内容に、彼、九重 鳫九郎は冷や汗混じりに話の内容を今一度脳内に落とし込む。
無理だった。衝撃的過ぎて理解できない。いや、したくもない。
「もう一度、言ってくれるかね? ラナリア首領君」
「おや? 聞き逃すような内容だったかね? ではもう一度言おう。ここにいるラナとクルナを、貴殿の学園に入学させてほしい。そう言っているのだが? 学園の入学条件は正義を志す者、であろう?」
「ま、待ちたまえ、いくらラナリアが日本公認結社となったといえ、正義の味方を養成するこの学園に部下を入学させる? 正気か!?」
「クックック。口調が崩れているぞ校長。なに、折角この日本で活動するのだ、彼女たちにも学校は通わせた方がよいだろうと思ってな。知り合いに勧められたのでここに来たのだよ」
「前代未聞だぞ、正義の味方を養成する学園に悪が自らやってくるなど! しかも、ラナリアの首領を入学させる!?」
「よく考え給えよ正義の味方。わざわざ悪が懐に入って来てくれているのだ、この機に正義のなんたるかを叩き込めれば最強の正義の味方が誕生するぞ?」
言いえて妙だが、納得できる言葉に鳫九郎は唸るしかできない。
しかし、とラナに視線を向ける。
ラナリアの日本乗っ取り劇は彼もしっかりと見ていた。
あれを行ったのが目の前にいる少女なのだと、未だに信じられない。いや、信じたくもない。
「だが、いいのかねレウコクロリディウムだったか、彼女たちは君の側近だろう?」
「何を言う、私が、彼女の側近だよ。ラナリアの首領は彼女だ。私はただ悪のなんたるかを教えている別組織の元首領に過ぎんよ」
「よくも口が回る。だが、成る程、確かに彼女たちをこの学校に入学させると言うのならばこちらも好機ではあるな。一つ条件がある」
「こちらも他にいろいろと付けたい条件がある。特に、もう一人入学許可をいただきたい奴がいるしな。ここからは話を詰めていこうではないか」
地球に残る事を決めたラナとクルナ。
ラナリアの仕事が軌道に乗り始めたあたりからインペリア任せで実質暇になった彼女等は、バグリベルレの、だったら学校に行けばいいんじゃねーですかね? という投げ槍な言葉を受け、首領と共に入学許可を取り付けに来たのである。
ただ学校に通うだけでは面白くない。
首領は折角なので、正義の味方養成学園ヒストブルグへの入学交渉をし始めたのである。
ラナやクルナはただただ成り行きを見守るのみだ。
彼女たちの世界では学校など存在していなかったのでちょっとわくわくを感じながら、話を詰めていく首領と校長の姿を見る。
そして時折、互いに視線を合わせて軽く微笑む。
楽しみだねラナ、楽しみだねクルナ。
言葉はなくとも互いの言葉はなんとなく理解できた。
ハッピーエンドを迎えた少女たちの新たな日常が、始まろうとしていた。




