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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 帰還
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クルナの決断4

「は? え?」


 クルナ、未だ混乱中の図。

 首領はそんなクルナの間抜け面を見てニタリと笑った後、『ラナラリアの元へこの場の皆を導け』と言霊を使って強制移動。


 なんかもう、よくわからない超常現象に導かれて王利たちはラナが居る地下施設へと移動させられた。

 当然、その場にはインペリアを含めた機械軍団が存在する。

 アルの話で存在は知っていた王利だが、実際に見てしまったその大軍団には度肝を抜かれた想いだった。


「首領、この機械兵団、世界と戦争でもするつもりっすか?」


「そのつもりだが、何か?」


 当然の様に告げられると二の句を告げない王利は押し黙るしかなかった。

 エアリアルは動く機械たちが興味深いらしく凄い凄いと彼らの周囲を飛びまわっている。

 ひとしきり飛び終わると、王利の肩に止まって興奮気味に凄いっ。と感嘆を洩らしていた。


「あの、首領さん、クルナちゃんに何したんですか?」


「ん? お前と同じく奴隷命令を解除しただけだが?」


「いやいや首領、今まで一生奴隷として過ごすと思って抵抗してたんだし、それがいきなり解除されて今から好きに生きていいぞとか言われた身になって下さいよ。だけだが。で済む話じゃないですよ」


 王利が呆れた口調で言えば、アルも確かにと頷く。

 そうか? と首を捻る首領の横で、事情を知ったラナがクルナに歩み寄った。

 自失呆然のクルナを優しく抱きしめて、解放されてよかったね。と呟いていた。


 ラナに抱きしめられたからだろうか? クルナもようやく事態を飲み込めてきたらしい。

 ラナを抱きしめ返し、目からこぼれる熱い何かに戸惑っていた。

 直ぐに感無量となったようで、声が震え、泣きだした。


 首領に奴隷化されたせいで気丈に振る舞っていた彼女は、ようやく解放されたことで本来の幼い少女に戻れたのだ。

 貰い泣きを始めたラナも交えて二人して盛大に泣き叫ぶ。

 でも、そこに悲しみはなかった。ただただ互いの無事を祝い合う喜びの涙。


 首領が耳を押さえて迷惑そうにしていたが、他の面々は二人に暖かい視線を送って見守るのだった。

 二人の苦難は、今、ようやく終わりを告げたのだ。

 首領のせいで断たれた絆が再び、繋がれた。

 さすがにこれで持ち上げて落とすようなことを首領がするとは思いたくない王利だが、それをするのが悪の首領なので、一先ず感動を押し籠め、首領の肩を持つと、なんだ? と不思議がる首領を押して真の首領が存在する場所へと連れていく。


 折角の感動の場面なのだからしばらく二人の世界に浸らせてやりたい。

 王利の数少ない善性によるおせっかいである。

 促されるままに真の首領が存在する場所へ連れて来られた首領は憮然とした態度で王利を睨む。


「W・B。なぜここに連れて来る。別にこれからあの二人を再び拘束したりはせんぞ?」


「それを気分でやりかねないから連れて来たんです。とりあえず、俺は首領には会えましたけど真の首領には会えてませんし、紹介してください」


「ふん。別に紹介する程でもないと思うぞ。なぁ私よ」


『そう言うなセカンド。初めましてになるのかね、W・B。私がインセクトワールド、いやラナリアの真の首領、レウコクロリディウム女である。といってもこの姿ではレウコクロリディウムというのもおかしな話か』


「一応、私と自我が別になったみたいだからな。私をセカンド、向こうをファーストと呼んでいる。サードは折角作ったのにクルナに潰されたしな、仕方がないのでフォース以後を今鋭意作成中だ」


『私にも一つ素体をくれ。お前と意思疎通は出来るが動かせる肉体が完全に私から離れている』


「体細胞クローン人間が完成するまで待て。成功例もここにあるし、直ぐに出来るはずだ」


『期待しているさ』


 双方、寸分違わず高笑いを始める。

 同じ存在なのだなと、王利が納得する光景だった。


「それで、これからどうします? 直ぐに異世界転移ですか?」


「うむ。それなのだがな……」


『いろいろと協議した結果、この世界でラナリアを運営する必要ができている。今首領が離れるのは得策ではないという結論が出てな、私の素体が出来るまではこの世界に居て貰う』


「ああ、なるほど」


 確かに、ラナとクルナを元の世界に戻すとなれば、ラナリアを運営する存在が居なくなる。

 ラナと今の首領の身体は似ているのでラナの代わりは務まるが、その首領が異世界に向ってしまうと管理者不在になってしまう。

 それはダメだ。

 なにせ折角日本統一を成功させ、これからという悪の秘密結社なのである。


「とりあえず、こちらが軌道に乗って世界統一が成されるか、ファーストの操るクローンが作成できるまでは第四世界に掛かりきりになるだろうな。なぁに、そう時間は掛からんさ」


 このままいけば、そのうち首領が百人以上に増えたりするのだろうか。

 一抹の不安を覚えながら、高笑いする二人の首領を見つめる王利だった。

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