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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 帰還
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クルナの決断3

「……と、こんなところか」


 ラナと首領がアルに未来の話を聞いていた頃、クルナもまた、王利とエアリアルから同じ話を聞いていた。

 聖女が聖女となった訳。

 また聞きではあるが、ラナが歩んだあまりにも過酷な道、その道を一人歩かせてしまったのは、彼女を信じ切れず自爆したクルナのせいでもある。


 だが、今は違うのだ。

 ラナにより、クルナは救われ、この世界に存在できている。

 助けることができる、ラナが聖女にならなくて済む未来に来ているのだ。

 当然、ゲルムリッドノートが存在していないこの世界では、もうやり直す事など出来ない。


 過去に戻る魔法はクルナが魔法にならなければ存在せず、ゲルムリッドノートも無くなった今では、安易に過去に戻ってやり直すことすらもできないのだ。

 だからこそ、この世界から死を予見された世界へと向う事になれば、失敗が許されなくなる。


 全員死にました、では許されないのだ。

 生き残るために、何かを成さなければならない。

 今は形にすらならない対策を、王利たちは練らなければならないのだ。


「私は、ラナちゃんを守りたい。私には大した能力はないし、首領には逆らえない状態だけど……」


「らしいな。首領がラナの内部にいる限りは手出しできないし、素の状態で君は首領に手を出せない。だよな」


「ええ。攻撃が可能だったらよかったのに」


 言霊で封じられている以上彼女には首領に対する何もかもを選択する事ができない。


「ま、それについてはとりあえず放置しよう。先程の説明でわかったと思うが、ラナが聖女になった理由は理解したな?」


「ええ。出来るならその異世界に行かない方が良いんだけど……」


「首領だしなぁ。むしろ教えた途端率先して向いそうだ」


 今のところはずっと先の出来事なのだろうが、王利にとっても他人事じゃないのだ。

 一生行かないという訳にも行かない。

 首領が行くぞと声を掛ければ、まさに鶴の一声。

 彼女の部下である一怪人など付き従うだけなのである。


「今のところの対策は?」


「ラナちゃんだっけ、彼女を連れて行かない、くらいかな。もし行くのなら俺と首領だけにしといた方が良さそうだ。後は聖女が連れて来たアルって人か。ラナちゃんと君についてはなんとか穏便に済むよう俺からも首領に頼んでみるよ」


「……いいの? 下手に庇うと敵視されない?」


「首領が俺を? ないだろ。あの人が俺みたいな木っ端を敵と認めるハズが無いよ」


 クルナの質問に被りを振って王利はふと気付く。

 視線の先、クルナの肩辺りに何かがいた。

 また世界のバグだ。


 エアリアルも気付いた様で寄って行って掴み取ると、王利の元へと舞い戻った。


「にしても、これ、本当に何なんだろうね?」


「世界のバグだっけ? あの人の元に送るだけでいいって言ってたけど、これが多くなり過ぎると世界の崩壊だっけ?」


「世界の崩壊? 何か居るんですか?」


 どうやらクルナには見えないらしい。

 エアリアルと王利は顔を見合わせ、そう言えば管理者にいじくられたせいで見えるんだったと思いだす。


「バグをバグだと認識できればいいんじゃない?」


「バグ? 『バグを私に見えるようにして』」


 言霊を使った瞬間、クルナは息をのむ。

 エアリアルの捕まえられているのは小さなウサギの人形だった。

 それが普通に動いている。


「そ、それが……バグ?」


「言霊って、便利なのなマジで」


 驚くクルナに驚く王利たち。言霊の便利さを改めて認識したのだった。


「こりゃあ首領が欲しがるわけだ」


「私も似た様な事できるけど、客観的に見るとチートだよね。首領さん、ラナちゃん手放さないんじゃない?」


 エアリアルの言葉に同意する王利。

 口には出さなかったが確定的だと思わざるをえない。


「まぁ、首領だし……」


「私だから、なんなのだW・B」


「え? うわああああああああああああああああっ!?」


 不意に聞こえた声に振り向けば、いつの間にか背後に出現していた首領。

 予想外の人物出現に、王利は腰を浮かせて驚いた。


「びっくり、首領さん、いつの間に王利の後ろに?」


「この身体の試運転も兼ねてな。うむ。言霊の効きも良い感じだ。素晴らしい」


「ラナを、ついに乗っ取ったの?」


 ラナそっくりの首領の言葉に、クルナが険しい顔をする。

 だが、首領は被りを振った。


「新しい潜伏法も見つかったし、身体も手に入れたからな。ラナは用済みだ。加えてクルナ。『私が掛けた命令を、私を殺す行動以外解除する』。これでお前も用済みだな」


「……え?」


 突然首領の奴隷状態から解放されたクルナは、ただただ間抜けな顔で声を洩らすのみだった。

 唐突に幸せな生活を奪われ奴隷に落とされていた少女は、唐突に解放されたのだ。

 晴れて自由の身となった彼女は、呆然と佇むしか出来なかった。

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