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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 帰還
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クルナの決断2

 クルナたちが応接室へと向かっていた頃、首領とアルはインペリアの元へとやって来ていた。

 この地下施設は未だ正義の味方にはバレていない。

 もし、ここに誰かが侵入した場合、真っ先に首領本体を破壊するだろう。

 それが行われていない事実が、ここがまだ見つかってすら居ないことを示唆していた。


「これはこれは、初めまして、インペリアと申します」


「うむ。聖女から話は聞いている。ラナリアの真の部隊だったな」


「ほぅ、ラナはそこまでお前に告げているのか。危険だな。『我に仇な……』」


「やめておけ。私に言霊は効かん。敵対するならば聖女の願いを棄却せざるをえんが、やるか?」


「……止めておこう。敵にする意味は今のところなさそうだ」


「懸命だな。ではまず、その身体から出て貰おう」


「何?」


「別に潰す気はない。聖女から贈り物だ。お前にくれてやれとな」


 と、アルがどこからともなく一人の少女を取りだした。


「今、何をした?」


「私の居た世界の道具だよ。アイテムボックスという」


 内部にアイテムを溜めこむことのできる道具らしい。

 魔法や空間に作用させる能力ではなく、道具なのだ。

 つまり、その道具さえ持っていれば誰でも、何処でもどんな道具でも取り出せる。


 首領が欲しいと思うのは当然だった。

 喉を鳴らすラナを見てアルは溜息を吐く。


「やらんぞ。第一貴様にも有るだろう。移動式のアイテムボックス代わりのが」


「ロクロムィスは狭い路地には不便だ。それに臨時で取り出すことも難しい」


「だろうな。だからこその、これだ」


 そう言って指示したのは先程虚空から取り出した一人の少女。

 意識はない。というよりも死んでいるようにピクリとも動かない。

 アルがその首根っこを持ち上げて見せる。


 目を見開く首領に変わり、ラナが小さく息を飲む。

 その姿は、ラナだった。

 体つきも同じくらいの背丈、服を着ていないという違いが無ければラナと言われてもおかしくはなかった。

 しかし、アルの知っているラナは既に魔法となって死んだはずだ。


「これは聖女がお前のために用意した、彼女の細胞から作った生物だ。聖女曰くくろーん? とかいうものらしい。脳は有るが稼働していない、そして彼女の体細胞から造られているので言霊も使える。この肉体があれば、ラナに憑いている必要はあるまい?」


「ふむ。確かに魅力的な提案だ。条件は何だ?」


「ラナ自身の安全の確保。ラナとクルナに掛けた制約の解除、そしてお前の死を回避することへの尽力。だったかな」


「クルナとラナの制約解除に関しては、成る程、問題はなくなったな、言霊が使えるのなら問題はない。ラナの身の安全も約束できよう。なんなら元の世界に戻しても構わん」


「本当ですか首領さんっ!?」


「私も鬼ではないよラナ。まぁ、悪逆ではあるがな。ふふ、言霊が使いたかったからお前を手に入れていたが、確かにこの肉体があれば問題はないな。良かったなラナ。言霊が使えるのが確認できたらお前とクルナを解放してやろう」


 問題が一気に解決する肉体を手に入れた首領はご機嫌だった。

 ラナからそちらの身体に移り込み、アルから手渡されたローブを着込む。

 そして、


「『ラナラリア、お前に掛けた全ての制約を解く』。どうだ?」


「えっと……首領さんのバーカ……はい、問題無く言霊が解除されてます」


「確認に使うのが私への罵声か。いい度胸じゃないか」


「ち、違います。一番直ぐに確認できるのは首領さんへの敵意でしたから、普通に行えるか調べただけです」


「まぁ、そういう事にしておこう」


「そろそろいいか? 本題を話したいのだが」


「ああ、私の死ぬ未来の回避だったな。聖女は私が死ぬのも回避させたいのか?」


「随分と世話になったらしいからな。その辺りのことは良い人だったとしか聞いていないぞ」


 首領はラナに視線を向ける。

 ラナも意外そうに首領に視線を向けていた。

 その視線には、この人が良い人? 未来の自分はおかしくなってしまったのだろうか? そんな顔だった。


「聖女とラナは……別人だったのではないか?」


「さて? 未来で何が起こったかは知らん。既に森本王利に伝えはしたが、お前達にも同じことを伝えよう。聖女が様々な世界を回る切っ掛けとなった敵の話をな」


 空気を入れ替えるように真剣な表情を見せるアル。

 遥か未来で直面するだろう危機について、首領たちへと話し始めた。

 その内容は首領にとっても予想外であり、あまりにも荒唐無稽に思える。

 しかし、その事実があったから、ラナは聖女へとなったのだ。


 決して遠い未来ではない。

 ラナリアもようやく軌道に乗り始め、W・Bも戻って来た。

 だからこそ、首領は異世界巡りを考えていなかったわけではない。

 異世界を渡れば、ほぼ確実に、アルから告げられた脅威は彼らに牙を剥く。

 まだ見ぬ脅威の存在に、首領は知らず不敵な笑みを浮かべていた。

 来るなら来い、その脅威、私が喰らってやろう。そんな決意と共に。

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