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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 帰還
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聖女の魔法3

 クルナは知っている。

 自分の持つ魔導書にラナの名前はなかったということを。

 そして、その魔法はしっかりとクルナにメッセージを告げていた。


 あれは、ラナだ。

 ラナの魔法だ。

 なら、首領に身体を乗っ取られて死んだはずのラナが魔法になっている理由はなんだ?

 簡単だ。想像できる。理解出来る。

 荒唐無稽に思えるが、クルナはしっかりと理解した。


 ラナは、生きていた。

 クルナがここで暴走し、何時か魔法に変わった後で、その後ですらラナは諦めなかったのだ。

 クルナを救うその事だけを考えて、自らも魔法に変わってまでも、クルナを救いに来てくれた。


「ああ……」


 視界が涙で滲んでいく。

 首領に操られた顔のラナが、いつものラナに戻っていく気がした。

 あの状態でも、ラナはまだ生きている。

 自分よりも長生きしている。


「あああ……」


 自分は既に魔法になる事を覚悟したのに。

 ラナはずっと、ずっとクルナを救うために努力してくれていたのだ。

 遥か未来から、もう一度過去に戻って、黒き怪人の力を借りて。

 ただ一人の少女を救うためだけに、こうして戻って来てくれた。


「ああああああああああああああああああああっ」


 涙が止まらない。

 自分は、救われたのだ。

 救おうとした人物に、長く辛い旅をさせて、救われた。

 ラナは忘れてなどいなかった。操られてなどいなかった。


 ずっと、クルナをゲルムリッドノートの呪縛から救うために動いてくれていた。

 今、この時の作業も、ラナリアを立ち上げた事も、決して無駄じゃなかった。

 それなのに、自分は……


 ラナを信じ切れなかった。

 互いに同じ思いを抱きながら、すれ違ってしまっていた。

 悔しくて、自分が許せなくて、親友に申し訳なくて、クルナは嗚咽混じりに泣きじゃくる。

 ラナの顔などもう、見れなかった。見られる訳がなかった。


『ゲヒャァっ!? お、おい怪物、どうなってる? なんで俺様まで……』


 突然聞こえた声に顔を上げる。

 涙で滲んだ視界の中で、黒い怪人の持つゲルムリッドノートが光の粒子と化していた。


「当然だ馬鹿め。ゲルムリッドノート、聖女からの伝言だ。過去のお前が消えたなら、未来のお前が存在できる道理はないでしょう。だから、勇者様の魔法は返して貰います。さようなら、未来永劫、消え失せなさい。だそうだ」


『あ。あのアマ謀りやがったなあぁぁぁぁぁガァァァ――――ッ!?』


 アルの言葉に吼えるゲルムリッドノート。しかし、過去のゲルムリッドノートを自分の魔法で消し去った彼には何が出来る訳もなく、存在諸共跡形もなく消し去ったのだった。

 王利は消えゆく光から自身に戻って来た何かを感じる。

 きっと、それが魔法に変えられた大切な存在の一部だったのだろう。


「終わった……」


 そう、終わったのだ。

 一人の少女が魔法に変えられ、親友が救おうとした英雄譚が、今、幕を閉じたのである。

 確かに、その未来の英雄は打つ手なく友と自分を失った。

 だが、その未来の種が、過去で芽吹いた。


 王利という名の勇者を仕立て、ゲルムリッドノートを打ち破り、一人の少女を救いだし、バッドエンドを回避して見せたのである。

 ただ一人、絶望を変えるために奔走した聖女が勝ち取った、理想のハッピーエンドだった。


「王利、これで、終わったの?」


「終わったと言えば終わりだ。でも、彼女たちはまだ終わりを迎えたわけじゃない」


 エアリアルの言葉を否定して、王利は二人の元へと近づいて行く。


「顔を合わせた時間はあまりなかったなクルナ」


「そう……ね。W・Bだっけ。いろいろ、聞かせてくれる? 私が魔法になった後のこと」


「察しがいいなクルナ。未来の話なんて、理解してくれるか?」


「ラナちゃんからのメッセージ、受け取れたから」


 王利はクルナを立ち上がらせる。

 その視線はふてぶてしくにやつくラナに向けられる。


「首領、一応感動の名場面なんですから、ちょっとラナと変わってください」


「言うようになったなW・B。何があったか知らんが、まぁいい。時間はあるし後で聞くとしよう。ラナ。交代するぞ……はい」


 最後の返事はラナだろう。一度目を閉じた後、小さく頷いたラナはふらりと、クルナに近づいて行く。


「クルナちゃん……」


「ラナ……ちゃん?」


「クルナちゃんっ」


 ラナは始めゆったりと、二度目の名を呼ぶ時は走り寄ってクルナに飛び込む。

 足元のおぼつかないクルナはラナに抱きつかれバランスを崩すが、それを王利が抱きとめた。


「ラナちゃん……なんだよね。どうなって……」


「首領さんの身体が無いから共存してるのっ。でも、そんなのどうでもいいっ。クルナちゃん。よかった。もう、もう魔法にならないんだよねっ。ゲルムリッドノートに怯えなくていいんだよね!」


「う、うん。でもラナちゃん、私は……」


「いいの、何も言わないで。ただ、今は、今だけは、おめでとうクルナちゃんっ。解放されて、おめでとうっ」


「ラナちゃん……う、うん。ありがと。救ってくれて、諦めないでくれてありがとうっ」


 戸惑いながらも喜ぶラナを抱きしめ返し、クルナは泣いた。

 二人の身体が倒れないよう抱きとめる黒くごつごつとした腕を背中に感じながら、今だけは、最高の親友と共に解放された喜びを分かち合うのだった。

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