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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 帰還
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聖女の魔法1

「それ、本当に使うの? そうなると次に魔法になるの王利なんだけど、いいの?」


「良いかどうかなんてさ、やるっきゃないだろ?」


 王利たちは第四世界へとやって来ていた。

 今がどの時期なのかよくわからないが、聖女が自分に魔法を託したわけなので、まだ間に合う状況のはずである。

 ただ、時間があるかどうかはわからない。


 アルから昔話を聞きながら走る王利が目指すのは、インセクトワールド本社。

 今やラナリア本部となったその場所へ、彼は怪人形態で走っていた。

 街中を黒き怪人と怪しいローブの女。そして妖精が走り去る。


 普通の町であれば違和感の在りまくる彼らに驚きを持って皆が注目しただろう。

 しかし、既に第四世界はラナリアが深く浸透しており、街中に怪人が溢れかえっていた。

 今更怪しげな怪人が疾走したとして不思議に思う人間は居ない。


 妖精も似たようなモノだ。

 身体を小型化させた首領の様な生物も幾らか確認されているため、怪人の一種であると思われるだけ。

 この世界では彼らが街中を爆走している姿こそが日常なのである。


 アルの格好も不思議はない。

 怪人の中には自分の姿をあまり見せたくないとローブ等で隠して移動する者もいる。

 そのため、職質くらいは掛けられるがラナリア構成員だと分かれば問題はないのだ。

 そもそも怪人であるW・Bと行動しているので、同じく怪人なのだろうと普通にスルーされていた。


「見えた、アレだ!」


「とにかく首領であるラナとクルナが邂逅していなければ急がなくても良い。だが邂逅しているなら時間はないぞ!」


「分かってる! クソッ。転移位置がこの建物内だったらよかったのにっ」


「こればっかりはしょうがないよ。日本の見知った場所に出られただけでも儲けものでしょ?」


 王利の歯噛みにエアリアルが苦笑する。

 確かにその通りだと肯定しながら王利はラナリア本部へと走り込んだ。

 突然走って来た王利たちに気付いた受付嬢が目を丸くしている。

 そんなカウンターに走り寄った王利は、がっつくように受付嬢に対面する。


「お姉さんッ、首領は居るか! あとクルナは来てるか!?」


「首領とクルナ様でしたら最上階ですが?」


「むぅ。もう偽首領とやらは潰された後か」


「時間はあるか? ないか? アル、どうだ!?」


「知るか馬鹿。だが残り時間は少なそうだ」


 王利はカウンターから離れるとエレベーターへと駆け寄る。

 丁度やって来たエレベーターに、順番待ちの怪人を押しのけ入り込んだ。

 「おい、テメェ何割り込んでやがる!」そんな言葉が聞こえたが「緊急だ許せ!」と怒鳴り返した。


「お待ちくださいっ、あなた一体何者で……」


 ようやく王利たちがどこに行こうとしているか気付いた受付嬢が慌てて止めに入ろうとするが、すでにエレベーターは閉まった後だった。

 王利たち三人を乗せて、エレベーターは応接室へと稼働する。

 中央にある玉座のある部屋である。

 ここからは玉座の後ろにある官僚専用エレベーターを使わなければ上がれない仕組みの様だ。


 王利は迷わずそのエレベーターに走り込む。

 ピーっと機械音が鳴ってエレベーターの扉が開いた。

 再び三人で乗り込む。

 どうやら王利も上部へ行ける官僚として登録されていたようだ。

 王利は首領の信頼に少しだけ感謝する。


「今、全身認証されてたよ王利! ハイテクだねハイテク。ちゃんと承認されたみたいだ……よ。……商人を承認……ぷふ。あははははははっ」


 エアリアルが何かツボに入ったらしく突然笑い始めた。

 怪訝な顔をするアル。しかし王利はソレにすら気付かない。

 ただひたすらに階層表示を眺めつつエレベーターが目的地へと付くのを待っていた。

 やがて、機械音と共に最上階へと辿りつく。


 扉が開く時間も惜しいとばかりに開くボタンを連打する王利。

 アルが呆れた視線を向けるが、気が急いている王利は気付いていなかった。

 その横では空を漂いながら腹を抱えて爆笑するエアリアル。彼女はしばらく役に立たなそうだった。


「とぼけないでっ!」


 クルナのヒステリックな声が響き渡った。

 開き始めたドアがもどかしい。

 そんな王利を見たアルが前に出て扉を強引に開く。

 何か致命的な音が聞こえ、一気に扉が開かれた。


「クルナ……ちゃん?」


 急げッ! もう時間はあまりない。

 王利もアルも直ぐに気付いた。

 直前に話していた状況だ。


「ラナちゃん……知ってたんだよね? レウコクロリディウムが、三人いたこと。一人は動けない。一人は潰した。もう一人は……どこ?」


 居た。

 王利はラナとクルナを発見した。

 どうする。どうやって告げる? このままじゃクルナが魔法を唱えてしまう。

 ゲルムリッドノートを開き最後のページを探す。


「な、何言ってるのクルナちゃん。首領さんはクルナちゃんに殺されたんだよ。私達の仇はもういないの、何を訳のわからないこと……」


 もどかしい。急げ、どのページだ?

 王利は走りながらゲルムリッドノートを必死に探す。

 怪人の手が意外と扱い辛い。

 人間に戻った方が良いか? いや、その時間すら惜しい。

 彼が焦っている間にも、その時は刻一刻と迫って来ていた。

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