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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
怪人 → 帰還
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壊れゆく少女3

「ああ、そういえば。あなたがここへ来たら案内するよう言われていました」


「案内? どこに?」


「こちらへ、御案内します」


 インペリアに促され、クルナは彼の後を付いて行く。

 どこに行くのか、クルナを殺す罠というのはまず無いと思いたいが、案内するのがラナの命令なのか、首領の命令なのかによってクルナの持ちうる危機感が違ってくる。


 ただ、ラナが彼らにクルナが来たら。などと伝えているとは思えない。

 十中八九首領を殺そうとやってきたクルナに対する首領の歓待であろう。

 ならば、気を引き締めておいて損は無い。


 クルナはゲルムリッドノートを握る手に力を込める。

 決意を行い青い照明の中を進んでいく。

 やがて、階段を下り、辿りついた先にあったのは……


「なに……これ?」


 そこには、不気味な機械音を奏でる無数の機械。

 そして中央に巨大な円筒形のガラスケースの様な器材があった。

 内部は発光する緑色の淡い液体が満たされており、人間の脳が一つ、液体に浸かっていた。


『よく来たなクルナ。歓迎しよう』


 機械で出来た音声。しかし、その声、口調、その全てをクルナは知っていた。

 あり得ないと驚愕し、でも奴ならばそれもありうる。そう気付く。


『初めまして、と言っておこうか。インセクトワールド真の首領、レウコクロリディウム女だ』


 そう、この部屋から聞こえて来る機械音、それは首領の声に類似しており、首領の口調にとてもよく似ていた。

 声を聞いた瞬間背筋がぞわりと粟立ったクルナは、驚愕を通り越し不敵な顔をしてしまっていた。


「つまり、私が倒したのは、レウコクロリディウムの影武者。といったところかしら?」


『そうではない。もともと我の身体として創られたレウコクロリディウムは小型過ぎてな、どうしようとも人間の頭脳や知識を留める事は出来なかった。よって、取られた方法がこれだ』


 首領は脳だけを取り出し怪人としての特性を持つレウコクロリディウムの身体に、指令を送るチップを埋め込み操るというシステムを創りだした。

 そのレウコクロリディウムが他人の体内を乗っ取る事で新たな体を使い操る。

 つまり、彼女は二重の操り人形を操る脳だけの存在なのである。


「つまり、あんたを殺せば確実に消せる訳か」


『まぁ、理論上はそうだな。だがクルナよ。話を聞いてからでも遅くはあるまい』


「話? 聞く必要があるとも思えないけれど?」


『ふむ。まぁ聞かず絶望するもよしか……』


 どうでもいい。というような首領の口調にクルナは怪訝に眉を顰める。


「とりあえず、聞くだけ聞いてあげる」


『よかろう。まず、前提として、私がここに存在している理由だが、この技術は元々ある天才的な男が己の愛する女の死を許せず仮初の身体に意識を移した時に生まれた手法なのだ。管理者から技術提供をしてもらってな、こうして我も脳だけで生き残っている』


「何が言いたいの?」


『まぁ、なんだ。その技術についてなのだがな。この世界には衛星というこの星の外に打ち上げた機械が存在し、そこには大容量のコンピューターが積まれているのだ。男はそれを利用し通信を可能にしていた。我はそれをいろいろと試行錯誤してな。とりあえずは衛星を介すことなくここからアバターとなる芋虫の身体に直接指令を送り、向こうの情報を得られるようにしていた訳だ』


「それで?」


『W・Bによってその芋虫の身体が異世界へと飛ばされた。ここで本来起きてはならない事象が発生したのだよ』


 起きてはならないこと。それをクルナは何だろうかと考えたが、よくわからなかった。

 そんなクルナの様子に、首領の声が答えを告げる。


『自我の、芽生えだ。本来異世界というのはこの世界、つまり我が通信範囲外の世界になるはずなのだ。つまりは異世界に跳んだ瞬間我とアバターの回線が切断され、向こうは動かなくなる。それが通常のはずだった』


「……変ね。それならば第七世界や私のいた世界で首領は動いているはずがなかったってことよね?」


『そう、そして通信が切れている間、彼女は独自に動きだしていたのだ。興味深いぞ。自分が二人に増えた様な感覚なのだ。この世界に戻って来て通信が再開された時にはあまりの興味深さに二人して研究しだした程だ』


「まるで、他人のような言い方ね」


『それはそうだろう。自分ではあるが別の経験を積んだ個体となればそれは他人に他ならない。つまり、異世界に行ったレウコクロリディウムは我とは別人というわけだ』


「だからって、あなたを見逃してくれ。とでも言うつもり?」


『いやいや、そうではなくな。奴が面白い事を行いだしていたからお前に教えてやろうと思ってな』


「もったいぶらないで。殺すわよ?」


『おお怖い。仕方ない、言わねば殺されるからそろそろ告げよう。彼女はな私と同じことを始めたのだよ。つまり、インペリアル達に製作を依頼して、アバターを作り、もう一人の自分を創りだしたわけだ。凄いだろう? 私がまた増えたのだ。まぁ、君に潰されたけどね』


 その告白を聞いた瞬間、クルナは膝から崩れ落ちていた。

 頭を思い切り殴られたような衝撃を受けていた。

 アバター、仮初の芋虫形態。また・・増えた。つまり、少なくともこいつを含めた三人の首領が存在し、そのうち一番最後に創られた個体をクルナが潰した。


 じゃあ……


「じゃあ、私とラナちゃんの仇は……」


 二人をこの世界に連れて来る切っ掛けとなった首領は、どこに?

 始めは首領生きていた、を間近で見せられたクルナが絶望する話しにしようかと思ったのですが、よくよく考えると首領が謎な生物に思えて来たので真の首領を作ってみました。

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