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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
聖女 → 魔法
243/314

ラナリア浸食中6

「ああもう、どうなってんのよ!!」


 ビルの窓から外を覗けば、既に無数のパトカーによる赤色灯が道を彩っていた。

 警官の他にも盾を持った機動隊も見受けられる。

 完全に極悪犯に対する行動だ。


 キャロットスカーレットは自分の現状に嘆く。

 なぜ、こうなった?

 どうして、私がこんな目に?


「私達はただ、日本の悪を退治しに来ただけなのに!!」


 ヒステリックに叫ぶキャロットスカーレット。その額に赤いポイントマーカーが当てられる。

 慌てて窓から顔を引っ込めた。

 次の瞬間一発の銃弾が窓を突き破り床に弾痕を作る。


「凄いですねA・P、ラナリアの掌握力は」


「そうじゃな。まさか既に日本全てがラナリアみたいな物になっておるな。そりゃあラナリアに喧嘩売れば日本政府に喧嘩売った様な状態じゃな」


 にやにやと、人質にした怪人たちがキャロットスカーレットを見る。

 言われたことでようやくパニックから一つの答えを得たキャロットスカーレット。

 あり得ない。と思いつつ、ラナリアの現状を甘く見過ぎていたことを今更ながらに後悔する。


 あのテレビ放送があり、ラナリアが日本政府に認定された時点で、正義の味方は敗北していたのだ。

 これ以降、ラナリアに逆らうのは日本全てを敵に回すに等しい。

 それを知らずに喧嘩を吹っ掛けたベジタブレンジャーは、当然のように国家権力を敵に回していたのである。


 守るべきモノが、全て敵である。

 敵を守るために敵を倒す。そんな矛盾した状態になっているのだ、今のベジタブレンジャーは。

 守るべき者が敵に回っている以上、それらを倒す訳にはいかない。

 ならばどうするか、一番賢いのは手を出さない。つまりラナリアを見逃すのがいいのだろう。

 例えこの先どのような悪事を行うのだとしても、正義の味方たちは、日本全てを敵に回さないために黙認しなければならないのだ。


 そんな事。出来るハズが無い。

 正義の味方の行動理念は正義ありき。その味方であり、日本の味方ではないのだ。

 つまり、己の正義を行使するために日本を敵にする事を厭わない存在。

 そんな存在がまず真っ先にラナリアに敵対し、指名手配犯になり裁かれる。


 今のベジタブレンジャーのように、悪にとって危険な正義から捕まり、守るべき相手によって裁かれるのである。

 それが、悪に屈した世の中。

 その世界では、正義の味方こそが悪になる。


「こんな。こんなことって……」


「不用意にラナリアの怪人に手を出すからこうなるのじゃ」


「農家に被害を出したのも悪かったですね。せめて帰り道での奇襲を受ければ私達ももう少し被害を出していたかと」


 冷静に分析するP・AとA・P。

 ふざけるな。と叫びたい気持ちを飲み込み、キャロットスカーレットはこのままでは逮捕しかない自分の未来に悲嘆する。

 どうにか、しないと。


「キャロットスカーレットに次ぐ。速やかにラナリアの怪人二人を解放し、自首をしなさい。これ以上罪を重ねれば、君たちの上層機関であるプラントプラネットは君たちとの縁を切ると言っている。これ以上罪を重ねるべきではない。自首すると言うのであれば、ラナリア首領からも穏便に済ませるよう言付かっている」


 ふざけている。

 全く持ってふざけた内容だ。

 だが、これで出て行かなければ、もうメンテナンスすら受けられなくなってしまう。

 それは事実上、ベジタブレンジャーの解散である。


「ああもうっ。どうしてこんなっ」


「我々には交渉の用意がある! キャベツグリーン、ポテトブラウン、エッグプラントバイオレットは己が非を認め既に自首をして来たぞ」


 自首ってなんだ。私達は何も悪いことなどしていない。

 むしろ正しい行いをしたはずだ!

 声高に叫びたくなる。でも、そうしたところで誰も聞こうとはしない。


「ねぇ、このまま自首したら、私達どうなるかな?」


「さぁ。日本の法律だから数年したら出て来れるでしょ」


 キャロットスカーレットの問いに、P・Aが答える。

 その間に、どこかと連絡を取っていたらしいA・Pが話に加わってきた。


「ふむ。首領から伝言が来たぞ。とりあえず今の質問をしてみたのじゃがな。どうやらベジタブレンジャーは自首したところで解散は確定しているらしい。すでにネギなんとかを先頭にした新しい正義の味方を立案してるとか言っておったぞ」


 身勝手すぎる。切り捨てるのが速い。

 嘆きたくなるキャロットスカーレットは、その場にしゃがみ込むと三角座りで縮こまってしまった。

 いっそ殺せ。そんな呪詛すら聞こえてきそうな気がする。


「それでの、もし良かったら。首領がベジタブレンジャーを丸ごと面倒見ても良いと言っておるのじゃが……」


「はぁ? どういうことよ。正義の味方よ私達は。悪の味方をしろとでも?」


「交渉するのは私達じゃないでしょ。あなたが直接首領と交渉すればいいじゃない」


 キャロットスカーレットは考える。これは、抱き込み策か、それともチャンスか。

 どの道自分たちは後がない存在だ。

 ラナリア首領。最後に見ておくのも悪くは無い。


「いいわ。その直接交渉。受けましょ」


 観念したように、キャロットスカーレットは両手をあげた。

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