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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
聖女 → 魔法
236/314

ゲルムリッドノートの秘密

 ゲルムリッドノート。

 それは第二十二世界で作られた悪意の書物である。

 創作した人物は、自ら魂を込めるように一番最初に使用者となったらしい。


 そして、その命を全て書物に捧げ、魔法書に新たなる魔法の1ページとなった。

 その後、ゲルムリッドノートは転々と所有者を変える。

 初めは疑心暗鬼の所有者たちも、ゲルムリッドノートと話しているうちに契約をしてしまい、魔法を唱える。


 一度唱えるとタガは外れ、やがて、もう一度、もう一度、小さな魔法なら……と、気付けば己の命全てを書物に奪われるまで使い続けてしまうのだ。

 そうして、ゲルムリッドノートは新しい魔法を手に入れる。


 それを、新しい契約者が便利だと使い始め、命を吸われ新たな魔法へと変化する。

 それがゲルムリッドノートの特性だ。

 契約者を魔法へと変化させる悪夢の書物。


 一度契約したが最後、契約を破棄できず、ゲルムリッドノート自体に誘導されて魔法を使い続ける羽目になる。そして、新しい魔法に変えられる。

 クルナは、そうして魔法になった。

 未来の王利たちはそれを阻止出来なかったのだ。


「でも、それじゃ次はラナが……」


「はい。私が次の所有者になりました。クルナちゃんが残した魔法、過去移動の能力が必要だったから。そして、私は間もなく消滅します。新たな魔法の一ページとなるでしょう」


 なんでもないことのように、ラナは言う。

 それは、もはや確定したことを淡々と告げるようなものだった。


「ちょ、ちょっと、なんでそうなるって分かってて自分から契約しちゃってんのよ!?」


 さすがにエアリアルも笑いを押し留めて驚いた顔で参加して来た。


「王利さん。私は多分、もう一度魔法を使えばその命を終えるでしょう。これはゲルムリッドノートにしっかりと確認しています」


 王利は何も言えなかった。

 彼女はもう、自分が死ぬ事を認識し、覚悟しているのだ。何も言えるハズが無かった。


「でも、いいこともあるんですよ。魔法になる時、一番強く思ったことが魔法になりやすいんです。クルナちゃんは過去の幸せな日々をやり直したいって強く願ったから、だから、過去へ移動する魔法に変化した。魔法になる時ある程度明確な魔法効果を思い描いていればその魔法になれるらしいんです。それに、最後に王利さんに会えましたし」


 だから。とラナは微笑んで見せる。


「王利さんにお願いしたいのは、私が魔法になった後、このゲルムリッドノートの所有者となってクルナちゃんのゲルムリッドノートに私の魔法を唱えてほしい。それが私からのお願いであり、あなたをここまで導いた理由の一つです」


「理由の一つ……他の理由ってのは別世界の三歳児って奴か」


 ラナの魔法が狙い通りになるか確証が持てないので何とも言えない王利だが、クルナを助けたいと願い、その為に行動して来たラナが自分を使って作る魔法なのだ。

 ならばこそ、応えねばならないのだろう。

 だから、クルナの件は了承し、その他のことを王利は聞いた。


「はい。彼を倒す事は現状無理だと思われます。管理者さんにお聞きしたのですが、方法はない。実力で上回るしか撃退する方法は無いだろうとのことです。でも上回るのは難しい。そのため、私は考えました」


 そして、ラナはもう一人のローブの女に視線を向ける。


「こちらのアルさんに助力して貰うことを契約しました。既に彼女の実力は底上げされているので、闘って時間を稼ぐだけなら問題は無い筈です。なので、あの世界に行く際には彼女を連れて行って下さい」


 アルと呼ばれた女は王利の元へやって来ると、仕方ないといった溜息を吐いて彼の背後に陣取った。


「カチョカチュア。私は約束は守るが、こいつが無茶することに対しては放置する。それでもいいのか?」


「私がしたいのはあの世界でインセクトワールドの皆さんが殺される未来を変えること。それを回避した後に紡がれる未来は皆さんのモノです。アルさんも、契約通り自由にしてくださって構いません」


「ならばいい。……だそうだ。王利とやら。私が力を貸してやるのだから、ありがたく思いなさい」


 まさに上から目線のアル。あまりな態度に王利はラナを見る。

 こんな奴、護衛にいらないのですが。そんな言葉を目で伝えて来た。


「大丈夫です王利さん。アルさんはまさに悪を体現するような人ですが、むしろ首領さんには遠く及びませんので」


 本人を前に他の奴に負けるとか言うのはいかがなものか。

 アルが目に見えて不機嫌になったことに気付いた王利が慌てるが、ラナは全く気付いていない様だった。


「全てのことはアルさんに教えました。ここから先はこの世界の住人のモノ、未来から来た私は、今ここで立ち去ります。願わくば、私とクルナちゃんが泣き消えゆく未来から遠ざかる事を願って……ゲルムリッドノート。最後の魔法を使うわ」


 そっと、ゲルムリッドノートを開くラナ。

 さようなら王利さん。最後に会えて本当に嬉しかった。

 そう、小さく告げて聖女は高らかに告げる。


「我が前に佇む英雄たちに祝福を。己が道を突き進む力を! けっして諦めることない不屈の闘志を!  始まる英雄物語ザ・ゴールデン・アワー


 それは英雄を志し、英雄の道を歩もうとゲルムリッドノートを手にした少年が残した魔法。

 ゲルムリッドノートに書かれしその魔法は、英雄になり切れない者へ祝福を授ける聖なる魔法。

 一般人なら英雄へ、英雄ならば英傑に、変化を授ける大魔法。


 その魔法を行使して、ラナはその身体を粒子と化した。

 王利たちに、生涯に渡る祝福が授けられる。

 そして、王利の前に、一冊の魔道書だけが残された……

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