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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
聖女 → 魔法
235/314

未来人が過去で手に入れ現代で仕上げ、過去に送られる物

「まずは、一つ前の世界で作っていただいた物を下さい」


「あ、これか。どうすんだラナ?」


 王利は言われるままに異世界渡航の腕輪を取り出すとラナに手渡す。


「場所は既に伝えた通りよゲルムリッドノート。寸分違わず転移させなさい。時空を超えよ、我らが悔いしその時を目指せ。【クルティアナ】」


『げひゃははは。了解だぁマスター様よォ!』


 ラナが手にしていた魔法書が不気味な声を上げる。

 王利が驚く目の前で、ラナの手から異世界渡航の腕輪が消え去った。


「これで、始まりの種が仕込まれました」


「どういう……?」


「詳しい説明をすると理解出来ないでしょうし、簡単に言いますと……卵が先か鶏が先かという事です。今、異世界渡航の腕輪が発掘される遺跡に異世界渡航の腕輪を転移させました。もちろん、過去の世界に。どういう事か分かりますか王利さん?」


「えっと、つまり……今俺が持ってきた腕輪が過去に転移されて遺物として埋葬されて、それを発見したインセクトワールド社の社員である俺が腕輪を取りつけ異世界に行く……?」


「そういうことですね。つまり、時系列に直すとこうなります。

 王利さんが指令を受け、異世界渡航の腕輪の護送に向う。

 バグソルジャー襲撃のいざこざで王利さんが異世界渡航の腕輪を嵌める。

 そして私とクルナちゃんに出会う。


 私が王利さんから異世界渡航の腕輪を託される。

 私は時空転移で過去に戻り腕輪の材料を手に入れる。

 手に入れた材料をエアリアルさんに渡す。


 王利さんが材料を受け取り第二十五世界へ。

 管理者さんに異世界渡航の腕輪を作ってもらう。

 そして私がその腕輪を過去に送る。

 最後に、過去の王利さんが腕輪を装着する。繰り返しと。簡単に説明するとこんな感じですね」


 つまり、どの時点が始まりかは定かではないが、ループしているということらしい。


「で、なぜこのような廻りくどい事をするかというとですね。この時期から約数年後になるでしょうか? 異世界を転々としていたので正確な時期はわかりませんが、大体体感的にはそのくらいだったと思います」


 少し、神妙な顔でラナが告げる。

 王利をしっかりと見据え、あまり言いたくはない。でも言わなければならない言葉を紡ぎだす。


「第十六世界。そこに誕生した新たな命が私達に災厄を招きました」


 それを聞いた王利はぽかんとした顔をしていた。

 てっきりラナはクルナを助けたいから王利をここに連れて来たのだと思っていたのだ。

 だが、ラナが告げるのは、クルナの未来ではなかった。


「その男の名はナート。あの世界では10歳前の子供です」


「こ、子供?」


「ええ。だからと言って侮ってはいけません。何せ第十六世界は壊れた実力者しか住んでいない世界。誰も彼もが強靭な肉体を持ち、魔法を扱う。その為誰も彼も相手も自分も傷つかない世界です。例え子供であろうとも、肉体の強さは私達の想像をはるかに超えています」


「で、でもただの幼児よね?」


「はい。普通の幼児であれば良かったのです。でも、彼は違う。奴には前世の記憶があった。第四世界の記憶。快楽殺人者の記憶が」


 それこそが、ラナを襲った悲劇であった。

 チート人間として生まれた殺人者の前に、一撃で殺せる何も知らない羊たちが異世界からやってきたのだ。

 そいつの中に、異世界へ向う腕輪を持った怪人が存在した。

 それを知った殺人者は何を思う?


 その世界ではどれだけ殺そうとしても他の住民もチートなのでダメージにならない。

 老衰というか安楽死で死ぬ以外死ぬ事が無いらしいのだ。

 だが、そんな肉体を持ったまま別の異世界へ行ける力を手に入れられたなら?

 彼は殺戮に快楽を求めている。つまり、無双状態のまま無数の異世界で人殺しができるのだ。


 だから、王利が狙われた。

 仲間たちが次々に殺され、相手はチートな力なので太刀打ちが出来ない。

 結果、ラナに腕輪を託し、彼女の知っている王利は死んだ。


 そして、その未来は確実にやって来る。

 この世界の王利も例外なく、次に第十六世界を訪れることになった時、その死が確定する。

 いかなければいい? だが首領が黙っているか? そもそもいかなければならない理由が出来る可能性を否定できない。

 そして、一度でも向えば殺されて奪われる可能性も出て来る。

 そうなれば、無数の異世界の危機だ。


「待ってくれ。ラナには言霊があるだろ、それを使えば無力化するくらい……」


「気力で、跳ね退けたわ。チート……だから」


 もはや上位世界の理すら捻じ曲げる存在だったらしい。

 これにはさすがのエアリアルも頬を掻いていた。


「とにかく、私がやろうとしていることはあの悪魔の様な存在にインセクトワールド社が殲滅されるのを防ぐこと。そして、できるなら、クルナちゃんを助けてほしいんです。こうなってしまう前に……」


 と、ゲルムリッドノートを開いて見せるラナ。そこには何か文字が書かれていた。

 内容は読むことは出来ない。おそらく契約者にしかわからないのだろう。

 だが、その題名、魔法名は見ることが出来た。クルティアナ。先程ラナが使った魔法名である。

 王利たちが見た事を確認し、ラナは厳かに、厳粛に、しかし憐みを持って告げる。


「ゲルムリッドノートは契約者の存在を魔法に変える魔導書です」

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