管理者からの課題
「いやーすまんすまん。年を取るとモノ忘れが酷くての」
「そういう問題!? 目の前で喚いてたよね!?」
未だにエアリアルと管理者が言い争いというか一方的にエアリアルがまくしたてている。
エアリアルも管理者も次元は物凄い高い位置に存在しているのに、顔付き合わせて行われている口喧嘩は王利の世界でもよく見かける子供の喧嘩と同じであった。
傍観者に徹する王利は半ば保護者のようにほほえましい視線で彼らを見つめている。
それに気付いた管理者がバツの悪そうな顔をしているが、エアリアルは気付いていない様だった。
頭を掻きつつ四歳児の姿になった管理者は王利に視線で助けを求める。
「ちょっと、聞いてるの!?」
「僕四歳だからお話長いのきらーい」
老人の声で猫なで声を行う管理者。気持ち悪いわッ。とエアリアルが切れていた。
そんなエアリアルをまたも空間に固定して、管理者は王利に向き直る。
「本当にモノ忘れが酷いんじゃよ。この年になると脳細胞が若くなる半面小さくなるからの。覚えた一部が消えるんじゃ。これから幼くなればなる程に白紙に近い脳内に戻る。最後の0歳児には考える事すら出来んくなるじゃろな。だが140歳に戻れば知識は持ち越せる。便利じゃろ」
「140って決まってるんですか?」
「おぬしら人間の脳が保つ限界年数じゃ。どうもその辺りから0歳へ向けて若返るようでな。あと四年過ぎればまた老人の姿かと思うとなんともやるせないの。主らで言う20代位はそりゃあもう儂はモテモテイケメン風味じゃよ?」
口調がソレでは残念イケメンであると思うのは王利だけだろうか?
半ばあきれ顔で頷く王利に、管理者は掌を向ける。
「さて、折角じゃし儂からもプレゼントと課題を与えておこうかの」
「プレゼントと、課題?」
「ほい」
と管理者の手から放たれた閃光が王利を穿つ。
また自身の情報が何か書き換えられる不思議な感覚を覚えた王利。
すぐさま違和感は消え去った。
「課題といっても大したもんではない。その腕輪で回れる全ての世界に存在するあるもんを集めて来るのじゃ」
「あるものって……教えてくれないと分からないんだけど……」
「それを理解するためのモノを先程インプットしておいたのじゃよ。近くに来れば直ぐ分るはずじゃ。まぁ全部集め終わったらここに来るがええ。ああ、それと、ほれ、ここの世界のあるものはコレじゃ。形は全部違うからの。ほれ」
と、管理者が指差す先にあったのは、エアリアル……の頭にいつの間にか出現しているダンスする向日葵だった。
ちょっと回収したくない。
「何アレ?」
「バグじゃよ。全ての世界に自然と出来る綻びのようなもんじゃ。アレが増えると世界が崩壊するし、全く居なくなれば停滞する。無くてはならぬ存在ではあるが放っておいても増えて行く存在なので回収しても問題のない存在なのじゃよ。こいつにお前さんが触れればこの世界の儂の間へと飛んでくるよう設定しておいた。バグがどの世界でどの規模で発生しているか調べるのか主の課題じゃな」
「つまりそのバグとやらを集める作業をすればいいのか。そんなんでいいのか本当に?」
「どんな世界にどんなバグが生まれているのか、最近やる事もなくて暇なのでな。世界の謎でも一つ解いてみるかと思っておったんじゃ。次の生では研究を行ってみようかと思ってな」
「研究ねぇ……」
「てかさ、それだけ無数の世界を自由にできるならさ、アンタ下位世界に行ってハーレムみたいなことだってできるんじゃないの?」
空中に止められたエアリアルが話しに割って入って来る。
いきなり話しが別方向に向わされた管理者は面倒そうな眼をしながらもエアリアルに声を返した。
「初めの頃はの。儂も色々な世界に行ったモノじゃよ。しかし儂の次元が高過ぎての。子を成してもその世界の枠内の力しか持てんのじゃよ。わざわざこの世界に連れて来る意味もないしの。それに、儂の介入で幾つか世界を潰してもうたからの。もう女は抱き飽きたし、世界を変えるのにも飽いた。儂がどれ程の転生を繰り返しとると思うとる。既に無量大数の桁すら越えてもうたわ。ここまでくると何をするにも億劫での。世界を監視するのも監視者を作って任せたし、時空転移で過去の自分に遭いに行ったりしたこともあるがの。ぜーんぶやってしまって飽きてもうたわ」
発言の重みが違います。
女は抱き飽きたとか、俺も言ってみたいよ。と思う王利だが、エアリアルに睨まれたので思考を直ぐに散らしておいた。
「一度世界の王になってみもしたんじゃ。数世代を重ねるところを儂一人で何世代も重ねて、発展して行くのを見るのは面白かった。最初の内はな。じゃが天変地異などで国が何度か滅んでの。一から作り直して、全国統一して、内政チートを行い、全てやり過ぎて平和になるとする事が無くなり世界中の女性を集めて見たりもした。全て千回の転生でやり終えたわ。もう、それ以上は枯れてもうてな。なんかもう腹いっぱいという感じで万回の国起こしを行い反乱で滅び侵略で滅びといろいろな終わらせ方もしてみたよ。でも、結局儂だけは必ず復活してこの世界に舞い戻るのじゃ。もしかしたら、もっと先の次元に更なる高位存在も居るのやもしれんがな、やはり自分より高位な存在は雲の上、儂の預かり知らぬ存在よ」
最後の方は何かを懐かしむように一人言になっていたのだが、王利は聞いている振りでごまかしておく。
もう、この子供から手に入る情報は今のところなさそうだった。
エアリアルを自由にして貰ったら第二十六世界へ跳ぼう。そう心に決める王利だった。




