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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ラナ → ラナリア
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秘密結社の首領様2

「空気以外、私に近づくモノを拒絶する」


 言霊を一つ発動させ、ラナは薄いカーテンで仕切られた壇上へと向かう。

 喧騒が聞こえる。無数の虫の鳴き声のような音も。あるいは怒声。早く顔を出せと、首領なら顔を見せて見ろ! と強気な怪人の声も聞こえる。


 足が震えた。

 この化け物揃いの秘密結社を、自分が束ねる代役をする。

 できるのだろうか? ラナはごくりと生唾を飲む。

 否。できるのかではない。やらなければならないのだ。クルナを助ける為に。

 彼女を死なせないために。ラナは首領の望む全ての事をこなしきらなければならない。

 たとえそれでクルナとは二度と会えない運命なのだとしても。


 カーテンが開かれる。

 目に見える人、人、人。

 全てが化け物だったり戦闘員だったり、中には外套で姿を隠した者がちらほらと。


 ラナは震えそうになる身体に鞭うって壇上に上がると、そこに置かれたマイクに口を持っていく。

 最初は確か、静粛に。そして彼らがここに集ったことに賛辞を送り、ラナリア創設を告げる。

 それだけだ。それだけのはずだ。


「奴が首領? おいおい嘘だろ、俺より小柄じゃねぇか。潰しちまいそうだぞ」


「下剋上だ下剋上。俺が次の首領になってやるぜぇ!」


 ガラの悪い連中が囃したてる。舐められたらそこで首領は終わる。


「控えろ下郎共。貴様等が集まったのはインセクトワールド再興を目指す我が下僕となり馬車馬のように使い潰されるためであろうが。頭が高い。『今、悪口を開いた阿呆共、浮き上がれ』」


「な、なんだっ!?」


「うおぉ!?」


 突然、集まった怪人たちの一角から浮き上がる二人の怪人。

 何が起こったのか分からず戸惑いを浮かべている。


「まぁ、真名を知らんので出来るのはこの程度だが、次はない。『解除』」


 空に浮き上がった二体の怪人が急に落下する。ひぎゃっと悲鳴が上がったが、気にせずラナは話しを続ける。


「まず初めに、バグレンジャー共に我がインセクトワールド本部は壊滅させられた。この時我が部下の殆どが消されたが、忠臣の一人が我を助け出す事に成功した。よって、この地下組織を立ち上げる。新生インセクトワールドでは直ぐにバグレンジャーに気付かれるだろう。なので、名を変えさせて貰う。今回立ち上がる秘密結社の名は、ラナリア。秘密結社ラナリアだ」


 そう言った瞬間、何処からか銃弾が飛んできた。

 ラナの眉間に一撃。が、彼女に当る直前に弾丸は止まってしまう。

 威力を失った弾丸がマイクの横に落下する。


「次に賛辞を……と思ったが先に宣言しておこうか。このラナリア設立の晴れ舞台に参加して貰った怪人共、ならびにスパイを放った他社の怪人共、そして正義の味方共よ、暗殺下剋上いつでもするがいい。我が首はここにある」


 とんとんと首元をチョップして、ラナはフードの奥からニヤリを笑みを浮かべる。


「この首落とす自信があるならいつでもこい。ここで名乗りを上げようが唐突に暗殺を行おうが構わんぞ。特に今銃弾を放った正義の味方。そう、そこの柱の陰に隠れたお前。次はもっとよく狙え。クク……」


 上から目線で笑ってやると、姿を現す正義の味方。

 ふむ。どこの者かは知らないが初顔だな。セブンズ・スパイダーが居れば誰かはわかったかもしれんが、今回の招集にこなかったな。残念だ。


 正義の味方が姿を現したことでにわかにざわめきだす怪人たち。

 だが、今はお前達に被害を出すわけにいかんでな。と首領は一人ニヤリと微笑む。

 さぁ、ラナよ、奴らの心を掴もうか。人心掌握術を見せてやろうではないか。


「俺は宇宙警察ガンマンジョージ。貴様を世界規模犯罪者インセクトワールド首領として捕縛させて貰う」


「殺害する気満々だったではないか。だが、まぁよい。皆の者、手出しは無用である。貴様等が尽くすべき主がどれ程のものか、その目でしかとみるがいい」


「クタバレ悪の首領! ラナリアなど創らせるものか!」


「『打ちだされた弾丸よ使用者を穿て』」


 必殺の一撃で打ち出されたガンマンジョージの一撃。その瞬間撃ちだされた弾丸が不自然に軌道を逸らして彼の眉間を穿った。

 ばたりと倒れるガンマンジョージ。

 何が起こったのか理解できずに息を飲む怪人たち。


「さて、ゴミはそこに放置で構わん。どうせまだ汚れるだろうしな。さて、遅れてしまったが我が声に賛同し集まった同士達よ。我がラナリアの首領である。下剋上を狙う者、暗殺を狙う者、いつでもこの首を狙ってくるがいい。我がいつでも待っているぞ。だが心せよ。我に叛逆を示すということは、その命取れなくば命を失うという事を」


 しばしの静寂。だが、次の瞬間、一人の怪人が叫ぶ。


「う、うおおおお、ラナリア、万歳――――ッ!!」


「ハイル、首領!」


 続くように無数の声が上がりだす。すぐに盛大な歓声が沸き起こった。

 首領には絶大な力がある。それを理解しただけでも十分尽くすに値する。

 彼らはそう判断したのである。

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