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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
ラナ → ラナリア
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バグレンジャー新人歓迎会

「ではでは、新人君入ってくれたまえぃ」


 その日、バグソルジャーは新人の怪人を一人仲間へと引き入れた。

 亜麻色の髪を持つ女の子だ。

 少し控え目な性格らしくおどついた印象を受ける。

 長めの前髪に目が隠れそうになっているのがさらに彼女の臆病さを前面に押し出していた。


「あ、あああああの、は、初めまして。えっとバグワスプの奉禅寺ほうぜんじ たまきです。至らぬ点は多々ありますが、これからよろしくお願いします。私、バグソルジャーの皆さんと御一緒出来ることになって凄く嬉しいですっ」


 深々と礼をする鐶にバグソルジャーの面々は苦笑する。

 初々しさが満点の鐶に真由だけが少し不満そうにしていた。

 なにせ、鐶が入ったのは、空きが出来たから。

 バグシャークと言う名の欠員ができたからである。


 バグシャークは真由の兄だった。

 その代わりを務めるのがこのド新人丸出しの少女なのである。

 本当に大丈夫なのだろうかと心配になって来る。


 だが、新人を入れることには彼女も賛成だった。

 いつまでも四人で居る訳にはいかないのだ。バグシャークが居た五人のバグレンジャーだったからこそ今までやって来れたのである。

 自分たちだけでは限界がある。異世界での闘いで思い知らされた彼らにとっては新たな戦力は喉から手が出る程欲しいのだ。


 ただ、その戦力が使い物になるかはまだ分からないのだが。

 そこは新人、戸惑う事が多々あるはず。

 しばらくは連携にも齟齬が生じるだろう。

 だからこそ、バグレンジャーはある人物に依頼した。


 自分たちを鍛えてくれと。

 今日は新人歓迎会なので宴と言う名の飲み会が行われるのだが、明日からは仮面ダンサースワン先生によるブートキャンプも真っ青の合宿が待っている。

 ジャスティスレンジャーと合同になるらしいので、バグレンジャーとして、先輩戦隊として無様な姿は見せられないのだ。


 それがたとえ新人であったとしてもだ。

 即戦力になってもらうため、敢えて初日から合宿参加を予定している鐶は、明日からの地獄をまだ知らない。

 果たして彼女は持ちこたえられるだろうか?


 真由は溜息を吐きつつ視線を虚空に飛ばす。

 結局、インセクトワールドとの休戦は未だに続行になっている。

 唯一の護衛戦力であるW・Bが勝手に異世界へ行ってしまったため、事実上動きが無いはずなのだが、首領が怪しい動きをしているという噂がある。

 確信ができないので踏み込んで問い詰めると言ったことはできないのだが、どうにも雲行きが怪しい気がするのだ。


 ほたるんやハルモネイアがメンテナンスの際にいろいろ告げ口してくれるのでかなり情報は入って来るのだが、ラナが復活してインセクトワールドの表企業への指示だしを行いだしたくらいしか目立った情報はない。

 だが、時折首領が旧インセクトワールド社へと向かうのが確認されているそうだ。

 ハルモネイアもほたるんも別に首領を監視してるわけではないので、内部に入られると何をしてるかはわからないそうだ。


 この辺りはバグカブトとバグアントが動いているらしいが、今のところ情報はないようである。

 それよりも、クルナという少女の行動が露骨に怪しい。

 彼女は首領に恨みを持っているのを隠しもせず、また一人一人近くの誰かを路地裏に連れ込み暗示をかけているらしいのだ。


 真由自身既に暗示を掛けられているとバグカブトたちに教えられたものの、一体何のためにそんな事をしているのか全く理解が出来ていなかった。

 その暗示に関しても、別にインセクトワールドを攻撃できなくなるとか、クルナを攻撃できなくなると言ったものでもないらしく、彼女の行動も要注意の段階でしかなかった。


 後手後手に回っている感じはありつつも、バグレンジャーが今できる事はただ強くなることだけだ。

 早急にこの五人組での連携がスムーズにできるようにしなければならない。

 鐶、バグワスプに視線を向けて、真由はオレンジジュースを飲み干す。


 果たして彼女が本当に使い物になるのか。

 下調べではどこかの秘密結社で改造された存在だが、紆余曲折を経て洗脳を破り、正義の養成機関へと入ったらしく、かなり優秀な成績で卒業をしているらしい。

 ただ、学校からの紹介欄に一つだけ、気になることがあった。

 それが、高い攻撃性。


 普段は控えめな態度を取っている彼女だが、何かの琴線に触れると途端凶暴になるので気を付けてほしいと書かれていたのだ。

 詳細は不明だが、凶暴な存在はむしろ正義の味方としてはプラスに働くはず。

 なんてことを考えつつ鐶を見ていたのだが、どうもドジっ子属性があるらしい。ジュースを零してバグカブトに平謝りしていた。

 先が思いやられる。真由はそう思いながら視線を再び虚空へ戻した。


 本音を言えば、彼に入って貰いたかったな。そうすれば葉奈さんも安心するだろうし、私も……

 真由はふと脳裏に浮かび上がった人物に気付き、慌てて被りを振う。

 なぜ、そこで奴が出てくる私!? どうも場に当てられて気分的に酔っているらしいと結論付け、イヤホンを取り出し耳に取り付ける。


 アニメの主題歌が流れだすのを聞きながら、彼女は静かに目を閉じ音楽に集中するのだった。

 今はただ、何も考えないでおこう。

 ふと、見つけてしまった答えのような何かが引っぱり出されない内に、真由は思考を完全に放棄したのだった。

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