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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
勇者 → 高位世界
211/314

第二十四世界

「はい。次の世界へ着いたよ~!」


 元気一杯楽しげに答えたのは第二十三世界から着いて来てしまった妖精っぽい何かである。


「あの……なんで来ちゃったんですか?」


「面白そうだから! 当然だね!」


 王利の周りを飛び回りながら妖精が答える。


「さぁこの※※※※※※※※※※※※がサポートするからには大船に乗った気持ちで……ああ、えっと……ねぇ、私の名前ってなんだっけ?」


「え? いや理解不能でしたし……って、ああ。俺にわかりやすい名前ってことすか。んー、フェアリーとか?」


「うーん、もう一捻り!」


「じゃあ風の妖精シルフとか」


「ああもう、もうちょっとなんていうかなぁ。こう、私っ! って感じの、そう、もうちょっと格上感のありそうな!」


 シルフより格上感のあるってなんだよ。と思う王利だったが、相手は確かに格上の存在なので必死に考える。

 上司に逆らえないしがない下っ端の悲しい習性だった。


「じゃあ、エアリアル?」


「そうソレ! そのなんか可愛い感じで偉そうな感じの名前! 私は今日からエアリアルよ!」


 なんとなくシルフより位が下だったような気もする王利だが黙して語らずを貫くことにした紳士な青年だった。

 さて、面倒事は片付いた。と王利は周囲を探る。


 ここもまた変わった創りをしている。

 足場は透明だが確かにあるらしい。歩く度に波紋が広がる。

 水ではないのだろうがただの地面というものでもないらしい。


 目の前には水晶の様な結晶体が無数に浮かんでいるのが見える。

 しばし二人して見惚れる。

 世界自体が澄んでいて、遠くまで見通せる。

 清んでいて、遠くからの音が聞こえる。

 水晶同士が接触する音。綺麗な音を響かせ反対方向へとゆっくり移動して行く。


 そしてまた別の水晶へ。当った水晶も移動を始め、やがて無数のぶつかりが曲を刻むように綺麗な旋律を紡いでいく。

 ずっと聞いていたい。そう思える場所だった。


「……そろそろ、行こう。ここは誘惑が多過ぎるよ」


「え? ああ、そうだな。行きましょうか」


「敬語って言うんでしょそれ、いいよ。位の高い世界に住んでるってだけで大したもんじゃないし。友達感覚で話してよ王利」


「えーと。まぁそれでいいならそうするけど」


 いいのか? 相手は自分を小指一つで消し飛ばす存在なんですけど?

 内心冷や汗を垂らしながらも、むしろ敬語を話す方が相手に失礼だと王利は普通に話す事にした。

 二人して王利の記憶をもとに世間話をしながら歩く。




 ただただ清んだ世界。自分たちの歩く音だけが異音になる。

 そんな永遠とも思える散歩は、果てのない旅路のように進んでいる。

 未だに何も見えない。


 既に一時間程歩いた気がするが、目の前には何も見えない。

 先程から思いの場所に向ってみようとエアリアルが第二十三世界での常識行動を取っているのだが、全て失敗に終わっていた。

 結果、未だに無限回廊のようなこの場所から抜け出せない。


 全てが同じような世界のため、移動出来ているのかループしてるのかすらわからない。

 疲れて来たので一度歩みを止めて立ち止まることにした。

 地面とも思えない場所に座りこんだ時だった。


 ずぶり。地面に尻がめり込んだ。

 おおっ!? と驚く王利の身体が少しずつ沈んで行く。

 驚いたエアリアルは急いで王利の胸元にダイブイン。

 そのまま二人して波紋の内部へと沈んで行った。


「空気、ある?」


「息は出来るみたいだ。多分この腕輪の御蔭だと思う」


「なら何があっても安心だね。危ないことになったら守ってあげるよ」


 君より高位存在が相手なんだけど? とは言わないでおく王利だった。

 しばらく真下へとゆっくりと落下して行く。

 変身した方がいいだろうか? 王利が思い始めた頃、ついに終点へと辿り着いた。


 ふわりと、また何も無い場所へと舞い降りる。

 着地と同時に地面に波紋が広がった。

 不思議だが、透明な膜のようなドームで覆われた場所であると認識出来た。

 目の前にたった一つ。ドームの中央に位置する場所に異物がある。


 蒼黒い球体だ。横に一線入っている。

 なんだこれ?

 なんだろう、俺、これ知ってる。ほら、アレだよアレ、眼球……と王利が思った時だ。


 不意に、ぎょろりとそれは開かれた。

 巨大な目玉が王利とエアリアルを見つめる。

 蛇に睨まれた蛙のように二人は動けなくなっていた。


『よくぅくぅくぅ、来たなぁなぁなぁ。黒きぃきぃきぃ勇者ぁゃぁゃぁ』


 頭によく響くエコーを残し、謎の声が響いた。

 どこか遠方から話しかけられたような、怪伝播でも拾った様な不思議な声だ。

 その声が、目の前に居る目玉からの言葉だと理解するのに、王利たちはしばしの時間を要するのだった。

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