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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
勇者 → 高位世界
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第四世界の日常5

「すばらしい。やるじゃないかラナ」


「え? そ、そうかな?」


 褒められて思わず照れるラナ。

 その表情を見たクルナは少しだけムッとした。

 別にラナが首領に褒められて自分が褒められないのが悔しい訳じゃない。


 ラナにとって首領は自分の身体を喰らい地獄に突き落とした張本人なのだ。

 そんな奴に少しいい顔されたからと気を許しているのがいただけない。

 クルナとしてはもっとラナに首領への憎しみを持ってもらいたいのだ。


 なぜラナは首領に対してあれ程無防備なんだ。と、クルナは少しずつ例えようのない怒りが渦巻くのを感じていた。

 ラナは首領に褒められたせいか、嬉しそうに首領の説明を聞いている。

 そんなにくっつくな。笑い合うなとクルナは言葉に出せない苛つきを覚えていた。


「つまり、この画面で言えばこの生産量が適性になるわけだ。しかしこの部署の売り上げは……」


「なんとなくわかります。つまり、ここの売上をどうにかしないといけないんですね?」


「まぁ、そうなのだがな。マイナスが多いと言うのはつまりそれだけ行方不明金が増えているということ、もしかすれば不正に着手している奴がいるやもな」


 と、首領は再びスマホから誰かへと連絡を掛ける。


「久しいな。ああそうだ。首領様だよ。お前の部署、随分と行方不明金が増えているじゃないか? あ? 知らなかった? 面白い冗談だ。お前の首が飛ぶのと犯人の特定、どちらが先か楽しみだな。ん? そうか。なら一週間猶予をやろう。それで見つけてみせろ。不正を行った者を見付け制裁出来なければそいつと共にお前の首も飛ぶと思っておけ。ああ、スケープゴートなど用意しても無駄だぞ。不正者が現存していれば数字に表れる。ふふ。楽しみにしているよ。誰の首が飛んで行くのか実に楽しみだ」


 通話を切って再びパソコンを見る。


「お、見ろラナ。こんな状況もあるぞ」


「これは……どういった状況ですか?」


「業績不振になっているのは……と、ちょっと待て」


 パソコンを少し弄るとその会社の住所と簡易マップが表示される。

 そのマップ内には直ぐ近くにライバル会社の商業店。

 それを見て成る程と二人して呟く。


 クルナには分からないがラナには何故か理解できるらしい。

 ちょっとだけ、疎外感を感じるクルナだった。

 ラナが自分を構ってくれないので頬を膨らませるクルナ。でも何も言えずにただただ背後から二人を見ているだけだ。


「つまり、この店が今開店セール中というので安値になってるからお客さんがこっちに流れてるんですね?」


「うむ。そのようだな。まぁ、ぎりぎり黒字だから問題はないが……開店セール終了後にどうするかだな。今価格競争を行っても共倒れになりかねんし……」


「あの、それだったら独自性を追求してみたらどうですか?」


「逆に目を引く商品を高めにするとかか? ふむ……ん? クルナよ。なんだその顔は? というかまだ居たのか」


「あ、クルナちゃん、クルナちゃんも一緒に見ようよ。わかって来るとちょっと面白いよこれ」


「いい、エルティアさんの手伝いするから」


 憤懣やるかたないといった様子で肩を怒らせ踵を返すクルナ。

 部屋を出て行ったクルナをきょとんとした眼で見ていたラナは隣の首領に視線を移す。


「あの、本当にあれでよかったんですか?」


「どうせお前達に見せてもわからんだろうしな。ラナ、お前はどうだ? この仕事、本当にできそうか?」


「分かりませんけど、いちいちアドバイス貰ってますし、言われ続けていればそれなりには出来るかと……」


「なら良し。今回はお前がこれを行う事に意義があるのだからな。クルナにはただ興味を覚えたお前が指示を出し始めた。そう思ってくれれば問題はない。そう、問題など一つも無いのだ」


「……首領さん。私は、どうなってもいいです。でもクルナちゃんは、クルナちゃんだけは無傷で元の世界に返してあげてください。あの子は救われるべき娘なんです。決して、ゲルムリッドノートの慰みモノにされる訳にはいかない。あの子の事は諦めてくれませんか? その分、私は、忠誠を誓いますから。やれること、しっかりやりますから。お願いします」


「確約はできんな。我は悪の首領。裏切りこそ専売特許の極悪人だからな。だが、折角協力を申し出てくるお前がいるのに約束を保護するのはどうかとも思うな。だからラナよ。お前はしっかりと役割をこなせ。お前が我に必要で在り続けるのなら、お前を制御するためにクルナを救っておくさ。自滅されては知らぬがな」


「絶対にクルナちゃんを不幸にはさせない。だから……酷いことでも、私がやります」


 意志の強い目を首領に向けたラナ。

 首領はその瞳を愉快気に見つめていた。


「では、そろそろ再開しよう。今日中に使えるように叩きこむから覚悟しろ」


「は、はいっ」


 こうしてラナはインセクトワールド表会社のプランナーと会計係など、その他諸々雑用の押しつけられ部隊隊長としての未来が幕を開けるのだった。

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