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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
勇者 → 高位世界
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第四世界の日常4

 家に戻ったエルティアは、さっそく食事に取りかかる。

 クルナとラナもこれを手伝おうとしたのだが、手を洗ってさぁ具材を切ろうと腕まくりしたところで首領に呼ばれてしまった。

 行きたくはなかったが、首領の奴隷と化している二人は抗う術を持たず、不承不承エルティアだけに夕食を任せて王利の部屋へと向かうのだった。


 王利の部屋では床に散乱するように無数のパソコンが置かれ、その全てが起動して謎の文字を灯している。

 クルナとラナはその機械自体が見るのも初めてだったため、何が起こっているのかすらわからなかった。


「これは?」


「ノートパソコンだ。一つ一つがインセクトワールド社表支部の売上状況などを表示している」


 パソコン画面に視線を走らせながら首領が答える。

 その視線の動きは素早い。

 一つのパソコンに掛ける時間は殆ど無い。コンマ数秒の世界だ。

 ギョロ付く芋虫形の目が忙しなく動く。


「インセクトワールドの社員となるのだからな。お前達にもやり方を教えておこうと思ってな」


「やり方……え?」


「こ、これを?」


「当然だ。この程度出来なくてどうする?」


 そう言いながら、懐からスマートフォンを取り出す首領。

 直ぐにどこかに掛ける。


「但馬。生産部門に落ち込みが見られるぞ。んん? そうか。なら仕方ないな。うむ。遠慮はいらんやってみろ。私の権限で許可する。何? 河合コーポレーションの方が先に発表? 問題無いそのまま出せ。成分表は違うのだろう? ああ、ならいい違いをしっかりと謳え。謳い文句が出来たら連絡しろ」


 一度電話を切って別の場所へと掛ける。


「高崎、今時間はあるか? うむ。報告を頼む。……そうか。いい。それはこちらで手を打とう。それと、ああ。行けるなら行け。値段には気を付けろ。おそらく少しくらい高くともそれなら売れる。値引き? しなくていい。まだ不要だろう。値引き癖が付けば待っているのは倒産だ。黙れ。貴様程度が口応え出来ると思うな」


「く、クルナちゃん。コレ、何の話?」


「私に聞かれても……」


 クルナもラナも首領が何を言っているのか全く分からない。

 そんな二人を放置して、首領はまた別の相手に電話を掛ける。


「D・Bか。久しいな。ああ、私だ。当然生きていたさ、殺して死ぬような存在に見えるか? ああ。悪いがさっそく仕事を頼む。六本木支部の高崎をマークしてくれ。うむ。奴だ。例のブツに値引きを行うようなら殺して構わん。いつも通り事故死でいい。代わりは幾らでも居る。ああ。それとそちらで把握できている生存者で隠密と破壊工作が得意な奴は居るか? ん? ほぅ。そいつでいい。連絡先を教えろ」


 クルナは耳を疑った。

 話からすれば、殺して構わないと言われた高崎、先程の電話の主だったはずだ。

 正気だろうかとクルナは思う。

 自分の部下を平気で殺すと宣言したのだこの女は。


「C・Kだな。私が誰か? 誰でもよかろう。指令だ。ん? ほぅ。洗脳が解けたか。で? 私のいいなりにはならないとでも? 違うのか? ああ、そういうことか。ならばいい。指定場所にくればいい。ほぅ。暗殺なぁ……やれるものならやってみろ。ただし、失敗した時の自分の境遇を考えておくことを進めるぞ? まぁいい。要件は河合コーポレーションを調べて欲しいだけだ。別にそこまでのモノではなかろう?」


 今度は何故か首領の顔に苛つきが溜まっている。

 よっぽどゴネられているらしい。

 こういう時弄りがいのある王利が居れば鬱憤もたまらないのだろが、首領のストレスを発散させられる相手は居なかった。


「ではよろしく頼む。ふふ。頼りにしているさ。洗脳の必要が無い人材は貴重だからな。裏切り? それを恐れて悪は成り立たんよ。裏切って生き残れる可能性があるならいつでもすればいい。我はいつでも待っているよ。殺しに来るが……なんだつまらん。まぁ従順であるならばいい。窮鳥懐に入れば猟師も殺さずだよ」


 電話を切って、首領はクルナ達を見る。


「どうした、呆けた顔をして?」


「い、いえ。その、凄い仕事量ですね」


「慣れれば楽だ。私は穴を見付けて指示を飛ばすだけだしな。上に立つ者はふんぞり返って指示を出すだけで下請けが動いてくれる。楽なモノだ。まぁ、その分責任は重大ではあるがな。上に立つならばこの程度は楽にこなさねばやっていられんぞ。なぁ、クルナ?」


「……そうね」


 これが首領。上に立つ者。

 自分との違いを見せつけられたようでクルナはなぜか悔しかった。


「で、私達は何を覚えるの?」


「まずはこの画面を見ろ。ここからおかしなモノを見付けられるか、それで適性を見る」


 しばらくクルナもラナもパソコン画面とにらめっこを始める。

 画面をスクロールさせるが、そこにあるのは意味のわからぬ言葉と数列。

 クルナには到底理解できるものではなかった。


「あの、こことか、ですか?」


 そんなクルナをあざ笑うかのように、ラナが一か所を指差して見せていた。

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