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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
勇者 → 高位世界
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神々の集い

 アブラクサス。もといアークは不意に手を掲げた。

 すると王利の目の前の床が盛り上がりテーブルへと変化する。

 さらに椅子がニ脚。全て床と同じ緑色をしていた。


「ふむ。これはテーブル、こっちは椅子というのか。君の世界は色々なモノに名を付けているんだね」


「へ? はぁ……というか、俺の世界?」


「ああ、ごめん。意志疎通を図るために君の思考を覗かせて貰ったんだ。ほら、我の言葉は君には理解できないみたいだしね。ちなみに、本来の言葉で話すと※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※とか。わかるかな?」


「いえ、全然……」


 つまり、最初に出会った時から既に王利の頭の中を覗かれていたということらしい。

 高位存在はそんな事も出来るのかと、不快すら抱けずただただ驚く王利だった。


「でも、色々なモノに名前を付けるってことは、この世界では付けないんですか?」


「必要無いからね。知的生命同士は呼び合う必要があるからこう呼んでくれ。と自称してはいるけど、ほら、必要と思えば創ればいいし呼べばいい」


 と、手を掲げたアークの目の前に現れるオラウータン。


「コレ、君と初めてこの世界で出会った生物。名前は……オラウータンになるのかい? 変な名前だね」


 また覗かれたようだ。

 ついさっき思い浮かべたまたオラウータンが現れた。という思考を読まれたようで、アークは笑いながら右手を振る。

 するとオラウータンの姿が消え去った。


「今のは?」


「元の場所に返って貰っただけさ。必要無いし」


 確かに、気になればイメージだけですぐ近くに取り寄せできる彼らにとって、他の生物や無機物に名前を付ける必要はない。

 アレ。コレ。と思い浮かべるだけで創り出せたり、呼び出せたりするのだから名前で区別する必要すらないのだ。


「お、居た居た。ちょっと※※※※※※※※※※※、あんたが呼んだせいで私が呼び出せなかったじゃない」


「おや。※※※※※※※※※※※じゃないか。久しぶり」


 発光体がいつの間にか増えていた。

 一応女性なのだろう。発光体のシルエットが女性らしい体格をしている。


「時間なんて概念私たちには存在しないでしょ。というか、へぇ。時間って面倒なものがあなたの世界にはあるのね。それでいうと、前にあった時からして32431234528812934時間ぐらいになるのかしら?」


「うん。まぁ、そのくらいの時間なんじゃないのかな? よくわからないけど。そもそも反時間軸があるこの次元じゃ逆行すらしてるし、停滞状態の時もあるしで計算しにくいだろう。そもそも彼らの存在する世界の常識で計算できるものでもないし。この世界ではこういった計算類は考えもしてなかったから斬新だね。今度一緒に算出してみるか?」


「嫌よめんどくさい。そんなの興味も無いし。それより、滅多に現れない異世界の知的生物が来たんだから色々話し聞かないと」


 弾んだ声でこちらに視線を向ける女性型発光体。


「あ、そうね。私のことは……ニュクスとでも呼ぶといいわ」


「なら俺はゼウスでどうだ?」


 と、いつの間にかまた発光体が増えた。

 なぜかぽつぽつと発光体が増えて行く。


「じゃあ僕はポセイドンとかどう?」


「なら私はクロノスで」


「俺っちはウラノスかな?」


「クローソーがいい」


「じゃあバールっての」


「あ、取られた。じゃあ俺はバロールの方で」


 そして30名全てが集まった。

 ついでに彼らは勝手に王利の思考を覗き、その内部に存在していた神々の名前を自分の名として告げて来たのだった。

 つまり、アブラクサスからして王利の思考から読み取った名前であり、彼の名ではないのだ。

 その事に今更ながら気付いた王利だったが、どうでもいいことだったのでスルーすることにした。


 30の超高位存在達に囲まれた王利は、ふと我に返る。

 果たして自分がここに来た意味は何だっただろうかと。

 実は結構目的は無かったりする。


 だが、聞きたいことは一つあった。

 丁度知的生命全てが揃っているのだ、王利は全員に聞こえるように疑問を告げることにした。

 そう、その疑問とは聖女伝説だ。


「あの、この中で聖女にあったとか何か伝言貰った人っていますか?」


「聖女?」


「あ~。いたいた。あたし会ったよ。勇者が来たらコレ渡してくれって」


 と一人の発光体が前に出た。

 その発光体の勇者という言葉でにわかにざわめきが起きる。

 何こいつ、勇者なの? とか疑問形の言葉が聞こえたり、魔王はどこだよ。とか王利の知識フル稼働して茶化してくる発光体連中。


 どうやら長らくこうして集まる事も無かったらしく久々の会合でハメを外しているらしい。

 成人式か。と突っ込みたくなる王利だった。

 独りで何も出来る彼らにとって娯楽はないのだろう。

 王利を肴に集まれるこういう機会は、彼らにとっても無限の時間を生きる暇潰しになっているようであった。

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