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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
勇者 → 高位世界
201/314

第二十三世界

 光と共に王利は大地に出現した。

 そこはまばゆい光で出来た地面だった。

 虹色に輝く不思議な大地。

 歩くごとに見える色が変わって行く。


 周囲に存在するのは同じく虹色に輝く草木が生えている。

 遠くには王利の背丈より高いキノコらしき物体も存在していた。

 急激な変化に周囲を警戒しながら王利は歩きだす。


 生物らしい生物はまだ見当たらない。

 動物に出会ったとして、この世界の生物相手に生存可能かどうかすら不明だ。

 全てが虹色に輝いているので目が疲れる。


 しばらく彷徨っていた時だ。叢を揺らして何かが現れた。

 思わず立ち止まり警戒する。

 現れたのは……オラウータンだった。

 いや、オラウータンみたいな老人姿の生物だった。


 初の第二十三世界生物相手にゴクリと喉を鳴らして見つめ合う。

 見つめ合う……見つめ合う……見つめ合う……

 長い。王利がどうしたらいいのか戸惑う程に長い間二人は見つめ合った。


「ウホッ」


「……まぁ、そうだろうな」


 相手はただの動物。人の言葉をいきなり理解したりはしないだろう。

 どの世界でも動物は動物なのだ。

 知恵のある者は一部。大抵は人語を解しない生物である。


「ウホホ、ウホホ」


 オラウータン? は胸を叩いて叢に戻って行く。

 なぜか凄く楽しそうに帰って行った。

 別に付いてこい。という意志表示ではなかったと思う。


 王利はしばらく立ち止まって待ってみたが、オラウータン? は戻って来る気配がなかった。

 仕方ないのでそのまま再び彷徨い始める。

 まずは人、あるいは知恵のある生物に出会うことからだ。

 そう思っていた。

 まさか次の瞬間自分の居場所が移動して相手の前に出現させられるとは全く思いもしていなかった。


「やぁ。下衆げしゅうの民よ。我らが世界へようこそ」


 歩み出した瞬間に場所が切り替わったように自分の居た場所が変化していた。

 そこは虹色の大地ではなく淡い緑に輝く洞窟内だった。

 目の前には一人の人型発光体。

 光が強過ぎて人型だという事以外は相手が認識できない。


「あれ? 今、俺虹色の地面歩いてた気が……」


「ああ。歩いてたね。折角だから我が元に来て貰ったんだよ。任意の生物を自分の元に引き寄せるくらい常識なんだぜ?」


 目の前の発光体が告げる。

 これがこの世界の知的生命体なのだろう。


「あ、その初めまして。第四世界? のクマムシ男です」


「へぇ。第四世界? 世界は無数に存在するのに良く自分の世界が四番目に出来たなんてわかるね?」


「え? いえ。そうか……」


 発光体の言葉で気付く。自分本位な説明だった。

 第四世界というのは自分が持っている転移装置のメモリから現したモノであってここも第二十三世界と言われても彼らは理解できないはずだ。


「えっと、俺の転移装置に登録されてる世界の四番目が俺の世界なモノでつい。一応異世界から来ました」


「ああ。いいよいいよ。別に責めてるわけじゃない。ただ別世界から来る人は珍しいからね。特にこの世界はまず迷い込んで来る異世界人が居ないんだ。何故かわかるかい?」


「高位存在だから、というだけじゃないんですか?」


「ああ。ここはね。無数にある異世界の外側の世界だからさ」


 外側? と王利は首を捻る。

 今理解してるのは第二十一世界で教えて貰った無数の卵を思い浮かべる世界の形だ。

 その世界と世界の隙間が第二十一世界だった。

 その先の第二十二世界は無数の卵の外側にある卵という概念を思い浮かべて貰えばいいと教えて貰ったのだ。


 ここはそのさらに外側。という事になる。

 頭がこんがらがってきた王利はとりあえずこれ以上考えないようにして話を変える。

 これ以上考えて頭がショートするのを防ぐことにしたのだ。


「えーっと、とりあえず、この世界ってどんな感じなんですかね? 戦争が起こっていたり、平和だったり、してます?」


「んー。この世界には我を含めて30の知的生命が存在するよ。全員不老不死というべきか、意志を持ってから今までずっとこの形でね。用がある時だけ相手を呼び寄せる以外は一人で過ごしてるんだよ。あまり一緒に居るといざこざが起こるからね」


 どうやらこの世界では一人一人が孤独に生きているらしい。


「あ、そうだった。自己紹介した方が良いよね? 我は※※※※※※※※って言うんだ」


「へ? ちょ、すいません。お名前もう一度いいですか?」


「いいよ。我の名前は※※※※※※※※だよ」


 言葉の違いか名前を理解する言葉を持たない王利は彼の名を知ることが出来なかった。

 まさかの言葉の壁に膝を突く王利。

 その姿に※※※※※※※※はクスクスと笑う。


「ちなみに、君に理解できる言葉で話すとアブラクサスと言うんだよ」


「アブラ……クサス?」


「略してアークとでも呼んでくれ」


 略しすぎで元の名前が消えていたが、呼びやすくはあったので王利は遠慮なくアークと呼ぶことにした。

 どうでもいいことですが、アークが意志疎通できているのは王利の思考を覗いて日本語を理解したからだったりします。

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