プロローグ
荒い息を吐きながら、少年は走っていた。
青い照明に照らされる狭い通路。
駆ければ足音が金属音を返して鳴り響き、周囲にコダマしていく。
手にはサブマシンガン。
服装は学生服のままだ。
紺のどこにでもある学生服。
学校から直接向かった場所であるから当然と言えば当然なのだが、このような戦闘に巻き込まれるとは彼自体思ってもいなかった。
本来は安全な任務だったのだ。
ただ、新たに発見されたモノを本部に届けるだけの仕事。
なのに、一瞬で難易度最悪の任務へと変化した。
敵はたったの五人。
こちらには50人もの戦闘員、そしてリーダーである彼自身がいるのだ。だが、それでも勝利は絶望的。
なぜなら相手はただの人間ではなく、超人という部類に入る生物だからだ。
そして完全な奇襲だった。
人間の扱う銃などという物質が大して効果が無いことは、背後から聞こえてくる激しい銃撃と悲鳴が物語っている。
仲間がなんとか逃がしてくれたものの、彼の場所に五人がやってくるのももう間近だった。
「くそったれ――――」
舌打ちと共に自然、口から罵声が漏れる。
通路の角に回り込み、足を止め、火照った体を休ませる。
初めての戦場に心臓は高鳴り黒い鉄の塊を掴む腕には汗が滲み出る。
いや、そもそも戦いすら行っていないド素人の自分がこの様な場所に居る事自体が間違っているのだ。
頭の奥でチカチカと何かが鳴っている。熱いような冷たいようななんとも言いづらい。
それでいて妙にハイな気分とクリアな状態。
相反しているようで混合されて、頭の中は逆に考えがまとまらない。
カチャリと壁についた銃口の音が嫌に耳に響いた。
突然だった。本来なら戦闘などなく、この遺跡調査を終えられるはずだったのだ。
奴ら、正義のヒーロー昆虫戦隊なんぞと自称する各組織の裏切り者が現れるまでは……