滅びた世界の話
「ああそうです。この先の世界に向うのはイイですけど、そのメモリの次、第二十二世界には行く意味がないと思いますよ」
「え? なんでっすか?」
「そこの座標から察するに多分私どもより高位世界でしょうけど、確か神の怒りに触れて滅びたはずですから」
なんだそれは? と思わず王利は首を捻る。
「あんたたちが神じゃないのか?」
「あなたの次元で言えば神です。でも私達の次元で言えば一般人ですよ。そして我々にも我々を創造した神がいる。だから、高次元世界の住人を創造した想像もつかない存在を我々は神と、そして自分達を高位存在として区別してるんです」
へぇ。と納得しつつ、王利はふと、気付く。
「あの、座標から察するって言ってましたけど、コレの座標とか見えるんですか?」
「まぁ、座標というか世界構成だね。さっきも言ったワールドエッグの話ですよ。私達の世界は世界の卵たちの枠外にあります。その先の座標になっているのが第二十二世界。つまり、卵の中に無数の卵。その卵一つ一つにもまた無数の卵。これが世界の構成と思っていただければ」
「なんていうか、考えただけで頭がおかしくなりそうな……でもこのダイヤルに付いて俺が見てるよりも詳しい情報が見えてるんですよね?」
「ああ、それはその通りだよ。なかなか高度なモノの様だし、おそらくさらに高次元の存在が作ってるモノだよそれは」
「そうなんですか……」
納得しつつダイヤルを眺める。
そんなオーパーツが、なぜ自分たちの世界に、しかも遺跡に埋まっていたのだろうか?
もし、これが自分以外の存在に渡っていれば、それこそ異世界征服だって行われていたかもしれない危険な代物だ。
「ふむ。折角だし座標を見る方法位は授けてあげようか」
「え? そんなの、いいんですか?」
「まぁ、この程度はあっても無くても問題無いし、ああ、でも君に耐えられるかどうかは分からないからスイッチも付けておこう。このスイッチを押せば君は自由に座標を見れるよ」
と、グレイモドキの男が王利の頭に手を触れる。
何かが流れ込んで来る感覚があった。
脳内に、許容量以上の情報が流れ込んで、いや、書き込まれて行く。
「ぐ……X93な、なんだこY2れ、GYs頭が……」
「もう少し定着するまでは言葉もおかしくなってるだろうけど、直ぐ馴染むよ。じゃあまずは脳内にあるスイッチに意識を向けてくれ、わかるだろう?」
意識しろと言われても……と思った王利だが、わかってしまった。
意識の中に、なぜか電灯のスイッチみたいなものが存在するのを感じる。
今はそのスイッチがONになっている。
スイッチを切る感覚を思う。
すると急激に割れるような頭痛が消えた。
少し落ち着きを取り戻しグレイを見る。
「慣れるまでは常時発動しておいた方が良いよ。まぁ、コツを掴めば直ぐ馴染むだろうし、常時発動していれば1年もあれば馴染むよ。人間って結構慣れる生き物だし」
軽い口調でそんな事を言われた。
「座標に関しては君にも理解できるようアルファベットでしたっけ、それで表示するようにしました。自分の現在地を見てみてください」
A:0 B:0 C:0 D:0 E:0 F:200 G……
と、自分の視界に表示され、王利は驚く。
これが座標軸。そう察した王利は、ふと気付く。
F以降の座標は数字があり、XやYなどは兆を超える数字が並んでいるのだが、AからEまでは0が表示されている。
「次元というのは座標で表せます。なので君の転移装置に記録されている座標を見れば、そのメモリがどんな次元に通じているか大体分かるのです。例えば……25メモリを見てください」
そこを見ると、なるほど、Aだけ0だけどB以降に数字がでている。
つまり25の座標軸を持つ場所に移動すると言う事を意味しているのだ。
「この座標によっては似た場所も存在します。この世界とあなたの世界が交わる、例えば私の存在するこの次元、F座標とXYZWの軸が存在する第四世界が偶然交わる様な軸が幾つかあるのですが、それこそが特異点と呼ばれ、高位世界へ迷い込んだり逆に向こうから下位世界へ降りてくる存在が現れたりする現象ですね。余程のことがない限りこれは起こりえませんが、稀にあるようです」
「それが、異世界転移?」
「いえ、それとは別です、異世界は同じ座標軸状の世界ですし。繋がりやすいのですよ。私が言っているのは次元転移。あるいはアセンションと言うものでしょうね。我々位の高位になると強制的に作り出して下位世界となら繋げることが出来ますが、上位世界は複雑過ぎて無理です。が、第二十二次元となる滅びた世界はソレを成し遂げ神々の世界へ侵略に踏み込んだのです。結果は、まぁその目で見た方が速いでしょう」
座標を見るという能力を貰った王利は、グレイに促されるように次の世界へ向う事にした。
滅び去った言われるE軸場に存在する世界。
王利はそこにメモリを合わせ、次なる世界へと旅立つのだった。




