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第三部・プロローグ
待っている。
少女はその機械を通して彼に伝えた。
待っている。
いつか見た彼の勇姿を思い浮かべて涙した。
予言。
それは予言であって予言ではない。
世界を股に掛けた予言など、結果を知らねば行えるはずがない。
だから、少女は嘆きに暮れる。
遥か昔、いつか懐かしい彼を思い出す。
自分が間違えた世界。
終わった世界はもう存在しない。
世界と世界を繋ぐモノ、それを手に入れた彼は様々な世界で勇者と呼ばれた。
本当は自分の生存だけを考えたかった彼なのに、結局世界に飲まれて消えた。
自分のせいで飲まれて消えた。
だから、少女は世界を駆けた。
だから少女は禁忌を犯した。
勇者だった彼にもう一度出会うため。
終わった世界を救うため。
世界の次元をそして時限を越えたのだ。
だから少女はそこで待つ。
全ての原点にして何も存在しえない終わりの場所で。
全てが存在し全てが無い場所で。
未来を変えるべく動き出した孤独な勇者の到着を待つ。
勇者を導く女神の様に――――。