バグソルジャー強襲
秘密結社インセクトワールド本社。その一階はカウンターホールになっていた。入口の自動ドアを開けば、目の前にあるカウンター。
受付嬢が二人、営業スマイルで出迎えてくれる。
待合所には草臥れたサラリーマン風の男たちが数人休憩しており、喫煙所にもタバコを吹かせる男たちが見受けられる。
そこへ、場違いな三人が現れた。
一人は大柄の優しそうな顔を持つ男。
一人は青の迷彩服を着た目付きの鋭い金髪の男。
一人は大きなヘッドフォンから戦隊ヒーローの音楽を垂れ流す金髪の少女だった。
彼らはおもむろにカウンターに向う。
受付嬢たちはマニュアルに従い営業スマイル。
「いらっしゃいませ。ご用件はなんでしょうか?」
しかし、返答が返される事はなかった。
「flexiоn!」
突如大柄の男が光り始める。
その瞬間、受付嬢たちは通常ではありえない反応をした。
即座にカウンターに手を突き飛び上がる。
同時に変身のキーワードを口にする。
彼女たちが逃げ出した一瞬後、カウンターが粉々に破砕された。
光が収まった後、大柄の男がいた場所には、黒く光沢のある甲殻に覆われた人型の怪物が存在していた。
バグカブトである。
その姿は、まさにカブトムシを模していた。
バグカブトが舌打ちしながらも変身を終えた受付嬢に向き直る。
彼女たちはそれぞれ蛍と蜻蛉を模した改造人間だった。
ゲンジボタルを基調とした蛍怪人、ギンヤンマを基調とした蜻蛉怪人である。
「うわー、見てください兄さん、被ってますよ。ちょっとショックです」
「はっ、どう見てもお前のが強そうだ」
「二人とも、ここからは各自自由行動だ。上で合流しよう」
バグカブトの言葉に真由と境也同意する。
「おけーです。そこの蜻蛉さん、目障りですからしっかり潰しといてくださいねリーダー」
真由は蜻蛉怪人に一瞥くれると、そのままエレベーターに向った。
「兄さん、私こっちから行くんで、階段からよろしくです」
「ちょ、ふざけんなッ。何階あると思ってんだ!?」
知りません。と悪戯っぽく答え、降りてきたエレベーターが開くのを待つ。
そして、エレベーターが開いた時だった。
エレベーターに乗っていたダンゴムシ男と鉢合わせする真由だった。
「むぅ、楽しようと考えてはいけないってことですかね」
「知るか、テメェでなんとかしろよ」
境也に言われて憤慨した用に頬を膨らませる真由。
そんな少女にダンゴムシ男が拳を繰り出す。
「全く仕方ないですねぇ……Nepemeha!」
全く緊張した様子も無く、ダンゴムシ男の拳が決まる直前、真由の身体が光に包まれたのだった。