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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
クルナ → 復讐準備
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戦艦脱出

 始め、バグリベルレは自分が死んだと思った。

 爆風に煽られて巻き込まれ、熱量で焼け死ぬ。

 そう、思った。


 だが、爆風が彼女に追い付く直前、目の前から自分に向って飛んでくる黒い塊が見えた。

 バグパピヨンにひっ捕まる黒い怪人。

 それを思い切りジャイアントスイングでバグリベルレへと投げ飛ばすバグパピヨン。


 次第近づく黒い怪人は、バグリベルレへと真っ直ぐに飛んできた。

 何を?

 と思った瞬間、背中から灼熱の風が吹き飛んでくる。


 次の瞬間、黒い怪人W・Bはバグリベルレに抱きつき、身体を入れ替える。

 バグリベルレを守る様に自身を爆風に向け、灼熱の風を一身に受けつつバグリベルレをバグパピヨンへと弾き飛ばした。

 戸惑いの声を洩らすバグリベルレ。


 王利はバグリベルレを急加速で危険地帯から脱出させると、自らを爆風の熱で焼き始めた。

 逃げたくはあるが彼にはどうしようもない状況なのだ。

 素直にクリプトビオシス形態に移るしかなさそうだった。


 だが、窮地を脱したバグリベルレも、無事とは言えない。

 爆心地から離れたと言えども同じ室内。

 狭いその部屋で爆発を何とかするのは不可能だった。

 だが、彼女たちの近くには、爆風が来ることはない。


「『熱波、私達に近寄らないで』」


 クルナの言霊により熱が遮断され、風圧の脅威をハルモネイアとほたるんがシールドを展開して防ぎきったからである。


「W・Bはクリプトビオシスに移行したみたいね。んじゃあボクたちは脱出しようか」


「ドクター花菱、期待するわよ!」


「お願いしマス!」


「まっかせなさい! このマッッッヅサイエンティィィスト。ドクターコズミックスペースアルティメッターに失敗はなぁいっ!」


 と、満を辞して取り出すロケットランチャー。

 素材は全て船部品だ。

 ドアを開いて向いの壁目掛けて思い切り発射。

 トリガーを引いた瞬間シュバッと撃ちだされた砲弾がヒュルルとランダムな軌道を描き、蛇行しながら壁へと突き進む。


 ロケットランチャーの砲塔は今の一撃で跳ね上げられ、ドクター花菱のメガネにサイトが当り見事に破壊していたが、目にダメージが行くほどではなかったようだ。

 ある意味、失敗の様だったが皆何も言わないでおいた。


 爆音が響く。

 ただの爆音ではない。小規模な指向性爆破の連続による隔壁貫通弾である。

 無数に鳴り響く爆発により出来たのは、無数の通路を打ち砕き繋げ、装甲板を破壊して外へと脱出を遂げた貫通弾による通路だった。


「狭いが人が通りぬけるだけの隙間がある。皆急げ!」


 先陣切ってバグアントが走り抜ける。

 が、途中から狭くなっていて身体を中腰に、そして這うようにしてようやく外に到着していた。

 身軽な容姿から順に行くように伝えられ、ドクター花菱、クルナ、エルティア、ほたるんと脱出する。

 バグパピヨンとバグリベルレは翅が邪魔になったので変身を解いて何とか脱出できた。

 そしてタイプγを脱出させようとするのだが、その身体が通路を塞いでしまう。

 少し大き過ぎたらしい。


「ええい邪魔だ!」


 その背後からバグカブトがタイプγを蹴り飛ばしてなんとか脱出させる。

 が、自分も角が閊えて動けなくなっていた。

 ハルモネイアが彼を押してなんとか脱出させる。

 ハルモネイアが最後になったのは防壁を彼女が担っていたためだ。


 なので彼女だけ後ろ向きで脱出し、左腕から放出したシールドで爆炎を塞ぎながらの脱出になる。

 脱出した穴の先は船底近くの側面だった。

 足場が無いので浮ける面々が飛べない面々を抱きかかえている。

 唯一、一番最初に脱出したバグアントだけはまさに蟻のように壁面にへばりついていた。


「私が最後でる」


「ハルモネイア脱出と共に炎が噴き出す。皆穴の付近から離れろ。後は俺が穴を塞いで終わりだ」


「ほ、本当に王利君無事なんだよね? 絶対死んだりしないよね?」


「吼えるな。後はあいつの強度を信じておけ」


「脱出しまる!」


 ハルモネイアが閉じていたシールド諸共穴から離脱する。

 抑えられていた爆炎が穴から吹き出し周囲を焼き焦がす。

 陽炎のように揺らめく景色を見つめながら、バグアントは思い切り息を吸い込んだ。


 溜めた息の代わりに白っぽい何かを勢いよく吐き出す。

 それは今しがた船体に出来た穴に貼り付き蓋をした。

 しかし、固まる前に炎に焼かれて縮れて消える。


「チッ。一端固まらないとダメか」


「爆炎を遠ざければいいのか」


「出来るのか……って。貴様!? 今までどこにいた!」


 不意に聞こえた声に反応したバグアントだったが、その人物を見た瞬間思わず驚きと共に怒りが混じる。

 船体潜入時に見当たらなかったエスカンダリオである。

 今更ながらに出てこられてもお呼びではなかった。いや。やれると言うのなら最後の一仕事しかないのだろう。

 思わず舌打ちしながらバグアントは穴に視線を向ける。


「アレを塞ぐ。さっさと協力しろ。役立たずと呼ばれたくなければな」


「手酷いな。我もいろいろとやっていたのだが……まぁいい。タイミングは貴様に任せよう。今のを行った瞬間に風の滞留で空気の断層を作る。行くぞ」


 バグアントとエスカンダリオの共同作戦が始まった。

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