VS タイプε9
攻撃に参加するのはハルモネイアとバグリベルレ、そして王利を抱えたバグパピヨンである。
さすがに電撃により気絶してしまったバグアントを抱えたタイプγやほたるんまで戦闘に参加させる訳にも行かず、ドクターを受け持つマンティス・サンダーバードも避けるので手一杯だ。
「全く、ここぞと言う時に役に立たないとかどういう事ですかね。後でバグレンジャー会議ものですよ」
と憤慨しながら告げるバグリベルレ。
しかし、彼女としても怒りなど湧いてはいない。
なにせ敵の攻撃が激しいのだ。軽口こそ叩きはすれど無駄な喜怒哀楽を行っているような暇は無い。
「あの刃、王利君の装甲を貫通するみたいだし、相手は機械。鱗粉も効かない。どうしたら……」
「火力不足であると報告しまる。前回の戦いによる損耗が尾を引いていまる」
「打つ手なしかよ? 本当に誰もアレを何とか出来ないのか?」
王利の言葉に、クルナは生唾を飲む。
彼女だけは、方法があった。
既にゼルピュクネー01の真名を知っているのだ。
後は言霊に乗せて告げるだけでいい。
しかし、皆にそれを見せる訳にはいかない。
今それを見せてしまえば、首領が接収しかねない。
ゼルピュクネー01ごと船を接収されれば、インセクトワールドは移動要塞を手に入れた史上最悪の秘密結社になりかねないのだ。
クルナとしてはそれは望むべきものではない。
もしもゼルピュクネー01を手に入れるならば秘密裏にせねばならない。
下手に誰か、特に王利辺りがゼルピュクネー01を降したことを告げれば、首領の発動した制約によりクルナはまた搾取されてしまう。
それだけじゃない。下手をすれば叛逆のために手駒を集めようとしたとバレてしまい始末されるかもしれない。
あれを生かしたまま殺されるのは、嫌だ。
ならば、今回は言霊を使わず、惜しいことだがゼルピュクネー01を完全壊滅させなければならない。
いや、正義の味方たちにより壊滅して貰わなければ、自分に不信感が来かねない。
首領から隠れて戦力を手に入れるのは、それ程に危機感が強いのである。
しかし、現状手を出せないのも事実である。
何かしらの突破口でもあればいいのだが……
王利は考える。
自分の能力でなんとかゼルピュクネーを倒せるのかと。
しかし、生存特化した彼の身体では満足に闘う事すらできそうになかった。
では他の面々は?
バグアントとバグカブトは今回役に立ちそうにない。
気絶から立ち直っても肉弾戦が使えないので仕方ないだろう。
バグリベルレは? 突撃攻撃が主だ。彼女にはあの水の攻撃を突破できてもゼルピュクネー01を倒すに至らない。
バグパピヨンは? サイズでの攻撃はアリだろうけどそれ以外はバグリベルレと大差ない。毒攻撃が効けばいいのだが、無理な相談だ。
クルナは? 生身の少女を突進させるなど無謀に等しい。
タイプγ? 医療用らしいのであまり意味は無いだろう。
ヘスティの口からレーザーが現状一番手のある攻撃か。
後はエルティアの魔法。
そういえば時を止める魔法があったな。
そしてライトニングアロー。光の聖剣も使える。
リフレクトシールドなら相手の攻撃も返せるだろう。
うん。それくらいしか現状はないか。
突撃にバグリベルレ、攻撃にエルティア。
そうと決まれば……
「……というのはどうだろうか?」
王利は今考えた戦法を告げてみた。
エルティアとバグリベルレが顔を見合わせる。
回復役であるエルティアが突撃するともしもの場合こちらが危険ではあるが、その辺りは医療用ロボもいるし大丈夫なはずだ。
「あの。確かに私は魔法で何とか出来ます。でもこれ程巨大な生物の時間を停止する程の魔力は残っていませんし、先程の回復で光の聖剣と雷の魔法矢を一撃づつ放てる魔力しかもう残りが……」
実はすでに魔力がギリギリだったらしい。
反射の盾を使う事も出来るが、その魔法を使えば他の魔法一切が使えないらしい。
精霊の水流ならば五回は使えるとか言っていたが、今は意味がない。
「となると、私があのレーザー水流を突っ切ってエルティアさんがレイブレイドでトドメを刺す一発限りというわけですね」
「それだったらエルティアが突撃する必要はないような……リベルレに光の魔法剣を掛ければ行けるでしょ」
「えうっ!? 私一人でアレを突破して倒せと!?」
困った顔のバグリベルレ。ここでまさかの大役である。
一度きりだ。行けるかどうかじゃなく、行くしかない状況でもある。
「ええい。正義の味方ここに極まれりですね。タイミング間違わないで下さいよ!」
頬を叩いて気合いを入れる。
バグリベルレは再び飛翔すると水のレーザー群の先に見えるゼルピュクネー01を睨む。
「んじゃあ、バグリベルレ、行きますッ!!」
バグリベルレ決死の特攻が、始まった。




