VS タイプε6
「これは、どうすべきかな」
「参ったなぁ。脱出路は確保しとかないとマズいよね」
全員自分や他の面々の能力を確認する。
しかし、これと言ったイイ案がでない。
脱出路が無いというのはかなりマズい。
可能性としてはクルナの言霊に一任すべきだろうが、その言霊がちゃんと使えるかどうかがわからない。
たとえば、外に直通の大穴開けてと戦艦の壁に告げて、それが実行されるか、と言えば否だ。
なぜならば物理的に金属の壁が動けないからだ。
炎が消えたり毒霧が無毒化されるのは化学反応を勝手に起こすからに他ならない。
だが、金属として固まっている存在の一部をこじ開けることは、さすがの言霊でも無理なのだそうだ。
どのあたりまで言霊の制限があるのか試したくはあるが、その辺りは戦闘が終わってからでいい。
今問題なのはゼルピュクネー01を倒した後の脱出路の確保だ。
幾ら相手を倒せたところで共倒れでは意味がない。
これはまさに大問題だといえた。
ではどうするか。
もう、新たに方法を作りだすしかないだろう。
そしてその新たに作り出すべき人材はここに居る。
材料がない? いや、この場に大量に存在するだろう。
機材ならばそこかしこに。
「あーやっぱり僕なわけね。まぁいいか。そのためにも道具持って来たんだし。ぱぱっと作るからほたるん、ハルモネイアはちょっと手伝って。後の人たちはしばらく適当に、ここにやって来る敵性は全て倒してね」
何を作る気か知らないが、今のうちにほたるんの簡易メンテナンスもするようだ。
彼女たちは放置でいいだろう。
王利としても少し休めるのは嬉しい。何せここまで殆どが決死隊だったのだ。何度も普通に死に掛けた。
思い返していると、隣にバグパピヨンがやってくる。
ここ最近はずっと二人きりになることが無かったので妙に近い。
というか、しなだれかかって来ている。
他人の目を気にしていない所を見るに、また例の発作みたいな物らしい。
遠くでクルナがちょっと顔を赤らめているのが見えた。
子供は見ちゃいけまセンとヘスティが目を隠していたが、彼女の方が無駄に興奮した様子で王利たちを見ていたりする。
「王利君、無事でよかった。王利君が居なくなったらと思ったら、あたし気が気じゃなかったよ」
「ああ、その、悪かったな。無駄に心配させて」
「ううん。仕方ないなってことはわかってるんだよ。でも、出来ればもっと安全な方法を取りたかったな」
といいつつも身体をくっつけて来るバグパピヨン。
さすがに衆目環視で何をするわけでもないのだろうが王利としてはちょっと恥ずかしくなってくる。
気のせいか腕を持たれて自分の胸を掴ませようとしている気がする。
「うーん。常時発情してるようなもんですし、そろそろ限界近いのかもしれませんね。どうです王利さん、そろそろ一発おぎゃあとやっちゃって良いと思いますよ?」
「おぎゃあってなんだよ……」
バグパピヨンの痴態を目敏く見付けたバグリベルレが寄って来て笑う。
そんなからかわれ方をしたせいか王利は急激に冷静になっていく自分に気付いた。
今はいちゃついている暇は無いのだ。
とりあえずバグパピヨンの頭を撫でておき、索敵を始める。
「あの二人、付き合ってるの? 敵同士なのに?」
王利とバグパピヨンから離れたバグリベルレに、クルナが聞いていた。
バグリベルレはクルナの言葉に我が威を得たりとばかりに彼女を離れた場所に連れて行って王利と葉奈の現状を面白おかしく伝えることにした。
「……それはまた」
「でね……だから……という感じなの」
ぼそぼそと二人で何やら話しだす。
自分たちのことなので気になる王利だが、一瞬、クルナが不自然に動いた様に見えた。
バグリベルレの耳元に口を寄せて何事かを呟いていたのだ。
とはいえ、王利の側からはバグリベルレの顔が邪魔になってその姿すら見えなかったのだが。
そしてしばらく、バグリベルレが止まったように見えた。
気のせいか? と思えば気のせいと言えるだろう。
だけど彼女は言霊使いなのだ。
何やらキナ臭い気がする。
降ってわいた疑問は、しかし、次の瞬間不意打ちのように襲ってきたバグパピヨンに寄って粉砕された。
寄りかかるだけだったバグパピヨンが我慢の限界を迎えたようで絡みついてきたのである。
さすがにこれ以上はヤバい。襲われる。
「パピヨン、何をしている。こんな場所で盛るな」
が、すぐ後ろにやって来ていたバグアントが異変を察知してバグパピヨンを王利から引きはがしたのだった。
「あう。だって、王利君がぁ……」
「黙れ色情狂が。今まで我慢していたのは分かるがもう少しだ。我慢しきれ。今は敵の手の内だということを忘れるな!」
後頭部をパシンと叩き、バグカブトの見張るドアに向う。
ただ、一瞬だけクルナ達の方を見て顔を顰めたように見えた。
あいつは、気付いているのだろうか? なんとなく、気付いているんだろうなと王利は思う。
この気付いた事実をどう扱うか。
また変な問題が沸き起こったなと王利は頭を掻くのだった。
やるべきことはまだまだ沢山ありそうだ。