VS タイプε5
なんだ……ここ?
王利は思わず床材に目を見張る。
機械で出来た通路なのに、ここら一帯だけがプラスチック製コーティングがされている。
それだけじゃない。閉じ込める為の隔壁までがプラスチックコーティングされている。
異変を感じて不安感が押し寄せる王利。
隔壁が迫り閉じ込められると、天井にある一本の筒から何かの液体が床面に流れ出す。
怖々、王利はその液体に爪をちょっとだけ付ける。その瞬間、ジュゥと音を立てて爪が溶けた。
「ヤベェ……酸だ! 野郎俺を溶かす気か! ……いや待て。酸はプラスチックは溶けるハズ。となると塩基系水溶物か」
水溜りとなっている液体は徐々に床を広がりだす。
確かに、王利の身体はあらゆる状況下での生存を想定している。
炎の中でも、水の中でも、宇宙ですら生存適応を行い、放射能地帯ですら生存可能である。
だが、そんな王利にも、想定されていないモノがある。それが、酸。そして塩基物だ。
生物である以上これらに対抗する術はほぼない。強い酸を掛けられれば王利だって溶ける。
同様に、強いアルカリ性である塩基物であっても、王利の身体は腐食してしまうのだ。
それが今、目の前で実証された爪だった。
溶かされることに関して、王利は防御力が無い。
つまり、この広間で彼が生き残るには、自分一人の力では無理だと言う事だ。
だから、結論と同時に叫んでいた。
「ほたるん、助けて――――ッ!!」
そんな声を壁伝いに聞いたほたるんは、任せろとばかりに隔壁を切り裂く。
「王利君、無事!? 何があったの!」
「来ちゃダメだ葉奈さんっ。多分だけど苛性ソーダか何かだ!」
苛性ソーダは水酸化ナトリウムのことである。
アルカリ性水溶液で、劇物指定されている薬品でもある。
潮解性を持ち、空気中に放置すると徐々に空中の水分を吸湿し、溶液となるらしい。
また水に溶ける際激しく発熱するらしいので、身体に掛かると燃えるような痛みに悶え苦しみながら死ぬことになる。
それだけじゃない。
空気中の二酸化炭素を吸収し、炭酸ナトリウムを生じるらしい。
あまり吸っていいものでもないので、クルナに指示して中和して貰う。
さすがに肝が冷えた。
先行し続けるといつか死にそうな気がしたので、ここで足並みをそろえてゆっくり探索する事にした。
これだけ人数が居るんだ。さすがに全滅する様な事態は起こらないだろう。
皆と合流した王利はゆっくりと罠を見定めながら移動する。
さすがにこれだけ人数が居れば相手の罠が発動する前に最適な回避方を行う事が出来た。
主に頑張ったのは壁役、王利とエルティア。回避役、クルナ。破壊役、ほたるん、ハルモネイアといった面々で、他の皆はちょいちょいやって来る敵を始末しながら進んでいた。
かなりの罠をくぐり抜け、船の操舵室へと辿り着く。
だが、そこには誰もいなかった。
ゼルピュクネー01はどこだ?
皆が首を捻り始めたのだが、代表するようにドクター花菱が操舵室を調べる。
取り舵は右に左に揺れている。
自動操縦になっているようだ。
「こうなると、ここの動力部が怪しいな」
「動力部となると船底の方になるのか?」
「船底の場合、着地の衝撃や万一山などにぶつかって船体に損傷を受けた時真っ先に壊滅するでしょう。多分船の中央部、あるいは船底の一、二階上でしょうね」
「しかし、誰もいないのは不気味だな。船員の一人ぐらい居てもよかろうに」
この艦にはもう何も乗っていないのかもしれない。
後に残るのはゼルピュクネー01という名前の動力源だけだ。それさえ倒せば終わる。
そこに結論を達した王利は、傍と気付いた。
「あーその、思ったんだけどさ」
「なんですか王利サン?」
「動力源がゼルピュクネー01だろ? そいつ倒したらこの船動力停止だよな」
「そうですねぇ。それがなにか?」
ヘスティの返しに言葉を返すと今度はバグリベルレが合いの手を入れて来る。
「いやさ、脱出どうするかなと思ってさ」
その時になってから考えるべき事なのだろうが、気付いてしまった以上は言っておかなければなるまい。
この巨大戦艦は空中に浮いているのだ。
それが動力源を失えばどうなるか。簡単だ。
墜落、大破、大爆発。
多分、王利だけは無傷あるいはクリプトビオシスでやり過ごせるだろう。
でも、それは王利だけである。
他の面々は助からない。
いかに屈強な怪人であろうとも、頑丈な機械族であろうとも。
大戦艦のただ中で自爆に巻き込まれて生き残れるはずもない。
さらに言えば脱出路は遥か遠い数階上になる。駆け上がるには廊下が長いし罠部屋も多かった。
勝利前提での大問題に、王利以外の皆があっと今更ながらに気付いた顔をしていた。
私は気付いた。気付いてしまった。
タイプε戦……エスカンダリオ、忘れとる!!? Σ(゜o゜)
どこ行ったエスカンダリオ!?
仕方ないので何か理由付けとこう。




