VS タイプε1
あけましておめでとうございます<(_ _)>
拙い小説ではありますが本年度もよろしくお願いします。
クルナは呆然と目の前を見つめていた。
自分を庇うようにして光の筋に穿たれた一人の男。
いや、黒いクチクラを持つ異形の怪人。
ロクロムィス内で尻もちをついたまま。自分が殺されるという危険がつい先ほど存在したことに今更ながら気付いて身体が震える。
そして自分が助かるために犠牲になった怪人の死を目撃する。
目の前に、怪人の姿はなかった。
ただ、光が過ぎ去ったあと、燃える大地の中に、樽型の遺物が一つだけ取り残されていることを知る。
敵意を向けるべき相手である首領の腹心W・B。
ヘスティから聞いた情報では首領にとって唯一残ったインセクトワールドの社員なのだとか。
自分にとっては倒すべき宿敵とも呼べる存在だった。
庇われたことに驚きつつも、なんとか立ち上がる。
エルティアの魔法で炎が消える。
さらに水が樽状の物体に掛けられた。
すると、すぐさま形を取り戻し始めるW・B。
さすがに驚愕する。
死んだと思ったW・Bは仮死状態になっただけで生存していたのだ。
泣きそうだった葉奈が思わず安堵して隣の真由にもたれかかった。
が、直ぐにそんな場合じゃないと変身を始める。
「とりあえず、アレをやっつければ終わりになるんですよね?」
「コックル・ホッパーは既にいないらしいしな。アレを倒してしまえば……というか既に目的が達成されているのならもう、元の世界に戻ってもいいのではないか?」
バグリベルレの言葉に同意するバグアント。その気はないだろう提案をバグカブトが否定する。
「バカを言うな。アレを放置していい訳がないだろう。帰るにしてもあれを潰してからだ」
しかし。とバグアントは巨大戦艦を見上げる。
アレを相手にどうしろというのか。
一先ずは飛行特性の者に連れだって貰い戦艦に取りつくのが課題だろうな。
とバグカブトは結論付ける。
皆も異論はないようだ。
バグパピヨンが王利とエルティアを。バグリベルレがバグカブトを、ほたるんがバグアントとドクター花菱を、ハルモネイアがマンティス・サンダーバードを、ヘスティは自力で、タイプγがクルナを持ち上げ一斉に飛び立つ。
留守番となる首領だったが、これはロクロムィスが地上から出られないため、全員で墜落させた後に仕事が待っている。
「戦艦と戦う事になるとはな」
バグリベルレに連れられるバグカブトは感慨深げに呟く。
普通に正義の味方として闘っていれば絶対に戦う事はないだろう相手だ。
まして怪人とはいえ生身で挑むのは無謀としか言いようがない。
近寄って見て分かる。
その巨大さは化け物級だ。
視界内で収められないその巨体からは幾つもの銃口が忙しなく動き、近づく相手へとバルカン砲をあるいはレーザービームを、カノン砲を、ミサイルを。
まさに銃弾の雨霰であり、避け続けているバグリベルレたちも必死にならざるをえない。
「ああもう、巨大ロボがあればいいのに。バグカブトさん、造りません? 私すごくイイ案あるんですよ! ドクターならきっと再現できますし、しませんか? 造りましょう、絶対そうしましょう。ついでに戦艦造りましょう!」
「少し黙ってろヒーロー馬鹿め。全く。それでリベルレ、アレをどう攻略する?」
「難しいですねっと。この弾幕戦だけで胸一杯です」
絶えず銃撃にさらされるバグリベルレは銃弾を避けつつなんとか接近を試みる。
しかし、残念ながら攻撃が激し過ぎて遠巻きに旋回するしか今は行動が取れなかった。
「銃身が焼けつくのを待つのが得策ですが、見てください。銃器の半分が沈黙してます。つまり、今の状況でもまだ半分しか攻撃に参加してない訳です。焼けつくのを待ってもあの半分と交互で攻撃が行われてクール期間を狙うのは難しいですね。なので、王利さんにお任せするしかなさそうです」
「王利? どういう……!?」
バグリベルレの視線の先を見たバグカブトは息を飲む。
そこには蝶のようにひらひらと舞いながら戦艦に近づく三人が存在していた。
エルティアの防壁魔法を盾にして、王利の身体を更なる盾にして、バグパピヨンとエルティアが突貫を仕掛けていたのである。
銃弾は全て反射の盾とW・Bの装甲が弾き、レーザー砲だけを回避しつつ、三人は見事突撃、デッキに転がり込んだ。
バグカブトがやりやがったと思うより早く、バグパピヨンと王利により砲塔が一つ、また一つと破壊され始める。
少しづつ銃弾の雨が緩和して行く。
さすがにマズいと思ったのか銃器の一部が王利たちを狙うが、そこに少し遅れてやってきたクルナがやって来る。
「銃口、逆を向いて!」
折角バグパピヨンに照準が合わさっていた銃器がくるりと反対を向いて発射。
飾りとして付けられていたマストを破壊していた。
それを期に一人、また一人と着地して行くバグカブトたち。
船体に取りついた彼らは、直ぐにハッチを探し始め戦艦攻略を始めたのだった。