VS ゼルピュクネー1
バグカブトは目の前に現れたゼルピュクネー04にいらつきを覚えていた。
今、彼は首領に対する憎しみと怒りで押し潰されそうな状況なのだ。そんな折に邪魔者の様に現れた敵は、自分の怒りの方向性を向けるのに適し過ぎた存在だった。
しかし、敵の能力は不明。ほぼ間違いなく先程まで戦っていたタイプα並みの強さを持っているだろう。
そんな敵を相手に自分の奥の手は既に使用済み。
改造人間としての能力を使う以外にないと来ている。
正直今の彼には手に余る存在でもあった。
だが、と被りを振う。
この程度の敵にもたついているようで首領を止められるものかと。
奴は確実に再び組織を起こす。
それが理解できる。
そしてその時、絶妙のタイミングでバグレンジャーを裏切るだろう。
そうなったとき、自分が全くの役立たずでは意味がない。
確実に首領を倒せる存在にならねばならない。
それこそ、最強と呼ばれる仮面ダンサーを越える程の実力者に。
そして悪の組織に返り咲いた首領を討ち取るのだ。
だから、負けられない。
この程度の敵に負けてなどいられない。
相手は鎧を身に付けた騎士の様な格好していた。
全身鎧にフルフェイスヘルメットのような身体を持つゼルピュクネー04。バーニアを吹かしゆっくりと地面に落ち立つとレーザーレイピアを縦に構える。
頭飾りの赤い羽を靡かせ、一足飛びに特攻を仕掛けて来るのを見極め、接敵と同時に相手の腕を引き、体勢を崩したゼルピュクネー04の即頭部に掌底を叩き込む。
ベギンと音がして甲冑の頭部が斜めに曲がる。
しかし、ゼルピュクネー04は気にした様子もなく半回転しながらレーザーレイピアを振りまわす。
普通のレイピアと比べると、おそらく触れただけで両断されるだろうことは分かり切っている。
真下にしゃがんで避けると同時にバグカブトは自身の角に力を込めた。
「ホーンブレイド・タイプパワード!」
瞬間、彼の持つ角が淡い群青色に発光する。
振り切ったレイピアを見届けることなく顔をあげたバグカブトはそのまま角を突き出しゼルピュクネー04の甲冑に押しあてる。
一気に突き上げた。
まるでカブト虫とクワガタが対決した時の様に、角の一撃でゼルピュクネー04が舞い上がる。
空中で一回転して頭から地面に激突した。
首があらぬ方向に曲がったが、ゼルピュクネー04は気にせず立ちあがってきた。
「チッ、これくらいじゃ気にも留めないか」
レイピアを振り絞り突撃体勢を取るゼルピュクネー04。
全く面倒な。とばかりに迎撃チャンスを計るバグカブト。
突如、バーニア全開で急加速したゼルピュクネー04がバグカブトに突貫する。
「甘ぃッ!」
が、四つん這いになり突撃するレイピアの剣先よりも深く沈みこんだバグカブトは、肉薄するゼルピュクネー04の胴を思い切り角で撃ち上げた。
面白いくらいにゼルピュクネー04が天高く舞い上がり、バーニアの推進力と撃ち上げ時の方向転換のせいでくるくると回りながら落下し始めた。
その姿は立ったまま縦回転するビックリ人間のよう。
無様に地面に顔面から突き刺さる。
「ホーンブレイド・タイプレゾナンス!」
視界が土に埋まったゼルピュクネー04に、バグカブトはさっさと詰め寄り、まずはレイピアを持つ腕を振動する角で斬り飛ばす。
さらに逆腕、両足と切り落とすと、すぐにその場を離れた。
四肢を切断され首が土に埋まっている以上、ゼルピュクネー04は行動不能になったと見て良かったからだ。
タイプαより楽勝だったなと溜息を吐き、首領が相手取る二体のゼルピュクネーをか助けるべく踵を返す。
その瞬間、なぜか怖気が走った。
咄嗟に羽を開いて飛び上がる。
一瞬前まで居た場所を、無数の銃弾が通りすぎていった。
なんだ? とゼルピュクネー04を見てみれば、後部の背中部分が外れており、そこから砲身が見える。背中一面びっしりと設置された無数の発射口。その全てから、一斉に銃撃がなされたのだ。
もしも、危機察知を信じて飛び上がっていなければ、少しでも逃げるのが遅れていれば、隙間なく発射された面に突き刺さる銃弾の連撃に、さしものバグカブトも死んでいたかも知れなかった。
現に、銃弾が突き刺さった岩は余りの衝撃に消し飛び、まるでそこに岩が無かったかのように抉れてしまっていたのだから、もしもバグカブトに当っていれば、バグカブトの存在自体が消滅していただろう。
電動式発射装置を内蔵し、一斉に銃弾を飛ばすシステムを採用した、ベイポライザーのさらに上を行く人型人間抹消砲とでもいうべきだろうか?
バグカブトはその光景に戦慄しながら、ゼルピュクネー04を完全に撃破するまで安心すべきではないと気を引き締めた。
ゼルピュクネー04の胴体が突きささっている場所向けて急降下。
タイプレゾナンスを再度発動させ、ゼルピュクネー04の身体を真っ二つに切り裂く。
もう二度と再生不可能になるよう細かく切り刻むことにした。
念を入れて頭も完全に破壊した頃には、首領たちの戦いも決着がついた後だった。




