タイプβ戦2
「……で、チャージを使用します」
「なるほど。責任は取らないけどいい案ではあるな」
作戦といえど彼女ら二人が取れる行動は限られている。
最終的な切り札はマンティス・サンダーバードの電撃によるほたるんの強化である。
しかし、下手に連発は出来ない。なにせ相手も機械、強化法を何度も使っていると相手が電撃を奪いに来かねない。
まして連続で強化し過ぎれば量産型ハルモネイアの二の舞いだ。
さすがに熱暴走による自爆を行う気はほたるんにはないので、使うのは一度だけ。
絶妙のタイミングが必要である。
そこに至るまでの作戦を練り終え、ほたるんとマンティス・サンダーバードは頷き合う。
「それでは、攻撃を仕掛けます」
「流れ弾に当るなよ?」
ほたるんの移動と同時にタイプβも接近を開始した。
そんなタイプβ向けて水弾を吐きだす。
第二十世界に居る間に補充しておいた水だが、もう、殆ど残り少ない。
もともとがカマキリ鳥人の体内に水袋を作りそこの水を使っていただけなので、水の容量には限りがあった。
おそらく後1、2回使えば水鉄砲は使えなくなるだろう。
それはまぁ別に問題は無い。
発射と同時にマンティス・サンダーバードも突撃する。
タイプβは右手をレーザーソードに変えてほたるんのレーザーソードを受け止め左手にシールドを展開して水弾を弾き飛ばす。
ほたるんのガトリングショットをシールドの位置を変えて受け流しつつ、接近して来たマンティス・サンダーバードの鎌を避ける。
二対一だというのに、やはり実力が高い。
タイプβは鎌を捌き時に弾き、レーザーソードを切り結びながらガトリングショットをバックステップで交わしてはほたるん、あるいはマンティス・サンダーバードに斬りかかる。
その合間を縫ってほたるんが玉串のような髪を使って捕縛を試みるが、その瞬間戦闘パターンが変化した。
ぐるりとほたるんに目を向けるタイプβ。
その目に光が集まる。
一瞬後、目からレーザービームが放たれた。
突然の一撃を回避できず、ほたるんの左腕が宙を舞う。
さすがにマズいと後退するほたるん。
追撃を行おうとしたタイプβだが、マンティス・サンダーバードが鎌を振って来たのでそちらの対応に追われ、ほたるんをみすみす逃がしてしまった。
「腕をやられました。予備パーツが欲しいところです」
「さすがにそんな暇はないっ。終わってからにしろ!」
「分かっています!」
だが、腕が無くなったのはかなり危険だ。
武器がなくなるのもそうだが、バランスが悪くなる。
さらにはついつい左腕を使おうとしてしまったり死角が増えたせいで守る範囲まで増えてことになる。
ほたるんはこのままでは負けると判断し、自身の武器を全開放する事に決めた。
製作者であるドクターからもしもの時以外はなるべく温存すべし、それが奥の手というものだよ。といわれていたのでかなりの武器を眠らせたままにしていたのだが、もはや出し惜しみして負けるよりはいい。
メタリックボディに着付けていた衣装を脱ぐ。
人間の女性の様な身体付きではあるが、機械の身体のため見られても問題などは全くない。
そもそも羞恥心というものが機械である彼女には無いのだが、王利から女性は服を着てお洒落するものだと言い聞かされていたので着ていた服である。別世界で手に入れた服を脱ぎ捨てるのは少し抵抗があったのだが、お気に入りはまた拾えばいいと結論付ける。
地面を蹴りつけ再びタイプβに走りだす。
レーザーソードで斬りつけるが、即座に反応したタイプβがレーザーソードを合わせて来る。
その瞬間。
「発射!」
胸を相手に向けたほたるんから胸ミサイルが発射される。
二対のミサイルにアイレーザーを当てようとしたタイプβだったが、それによる爆風被害を即座に計算し、ほたるんを弾き飛ばすように飛び退いた。
その背後にはマンティス・サンダーバード。座して待っていた彼女は水鉄砲を無防備な背中向けて解き放つ。
逃げ去った先からの攻撃に気付いたタイプβがそちらの対応に向おうとするが、その逆方向からはミサイル。
一瞬、処理が出来ずに思考停止に陥るタイプβ。
結果、無防備に両方の直撃を受ける結果となった。
着弾したミサイルによる最大な爆発が起きる。
地面に着地したほたるんが油断なく身構える。
ガトリングショットを数撃叩き込むが、あまり効いていなさそうだ。
爆風に煽られ撃墜されたタイプβが身を起こす。
その姿からは人工皮膚が剥がれ落ち、まさにスプラッターな容姿になっていた。
思わず仰け反るマンティス・サンダーバードは、自分の足が下がっていたことに気付いて慌てて前に出る。
「効いているぞほたるん。このまま押し切る!」
「了解!」
二人はタイプβを挟んで対面にいながら頷き合うと、再びタイプβ目掛け走り出した。