タイプα戦1
バグカブトと戦っているのはタイプαと呼ばれる機械だ。
八つの足を持つ蜘蛛型ロボは、中央に胴体部を持ち四つのモノアイカメラで相手を認識している。
蜘蛛を意識しているのか動きもそれに近く、高速移動、長距離ジャンプなど重量物とは思えない程に良く動く。
加えて胴体部上部に取り付けられたレーザー砲は一撃喰らえばおそらく王利の装甲すら穴を開けるだろう。
さすがのバグカブトもこの相手には満足な攻撃を行えないでいた。
なにより八つの足から繰り出される一撃が強い。
攻撃角度と当り方によってはバグカブトが吹き飛ぶ程なのだ。
一度吹き飛べば、一足飛びに接敵して更なる追撃を仕掛けて来るタイプαに、バグカブトは防戦一方。なのに危うい場面が幾度となくあった。
単純に攻撃範囲が広いのも彼に不利に働いていた。
さすがにマズいかと思い始めた頃、ついにロクロムィスが復活。
首領が指示を出し、ハルモネイアがバグカブトのフォローに入ってきた。
正直、その判断はバグカブトにとっても助かったが、二人もタイプαに取られては戦線が崩壊しかねないという危惧が合った。
しかし、その心配は杞憂だ。
ベルゼビュート・ハンマーシャークの攻撃によりむしろ余裕が生まれつつあった。
そんな攻撃方法があるのならば最初から使えと思ったバグカブトだが、ベルゼビュート・ハンマーシャークの身体が消えていくのに気付き、思わず戦慄した。
あれは、元に戻れないのではないか?
しかし、その心配は今はしている場合ではなかった。
何しろタイプαとの戦闘中である。
他人の心配よりも自分の心配をすべきだと思い直し、タイプαからの一撃を全身を使って受け止める。
「行きまる」
指示を受けたハルモネイアが地を蹴って飛行する。
左腕をレーザーソードへと変化させ、接敵と同時にタイプαへと切りかかる。
即座に対応するタイプα。足を振り上げレーザーソードを受け止める。
「!?」
レーザーソードを受け止める強度を持っている足に驚くハルモネイア。
よく見れば、タイプαの足に纏わり付くようにシールドが張られていた。
シールドを張ることでレーザー攻撃に対する防壁と、同じくレーザーを纏った足による攻撃という双方の特性を持つ足のせいで、ハルモネイアが加わっても千日手になりそうなのは変わらないようだ。
地面に降り立ったハルモネイアはすぐにバグカブトの横へと移動する。
拳を握り込んで戦闘態勢を維持するバグカブトに、ハルモネイアは首を傾げながらも声を掛けた。
珍しくロボが語りかけて来ることに少し戸惑いつつ、バグカブトも応答した。
「随分の堅物でる。レーザーソードは防がれまる。現状、狙撃で弱らせるのが勝率50%を上回りまるが、他に作戦はありまるか?」
「勝率50%か。まぁ高い方ではあるが、せめてこの足をなんとか……いや、待て。ハルモネイアだったな。奴のレーザー砲を破壊できるか?」
「上部からの奇襲は90%で防がれると予測しまる。あの胴体部上部の穴が見えまる?」
「穴? ……アレか!?」
その穴は、レーザー砲が設置された中央を円形に包むように六つ作られている。
「アレが対空レーザーでありまる。上空からの奇襲ではアレに阻まれレーザー砲の破壊は不可能と判断しまる。仮に破壊出来たとしても、この身体は使用不能となる可能性が99%でありまる」
ほぼ確実じゃないかと呻きつつ、死角のないタイプαを睨むバグカブト。
何か方法は無いかと探すが、地道に足を折って行く以外に方法は……
「おい、ハルモネイア。奴の真下は……どうだ?」
「真下? 下部収束粒子砲が設置されていまる。25秒の溜めの後下方向へ粒子砲が放たれます。あなたが下からの撃破確率は67%。あの足を掻い潜り下部へ至る確率は34%でありまる」
「なら、俺があの足を一つ受け止める。それから下部へ至り攻撃して破壊するとすれば、お前ならどれくらいの成功率だ?」
「……総合すれば確率43%。完全破壊率は10%でありまる。強度が高いので確実性は皆無。現状の武器では下部収束粒子砲の破壊が98%。それ以上は予想不可でありまる」
「一つでも武器を潰せるならやってみる価値はあるな。ハルモネイア、今の作戦で行く。無理だと判断したらすぐに戻れ、行けるか?」
「了解でありまる。確実性を増すため換装しまる。しばしお待ちを」
言って、ハルモネイアは右腕のパーツを取りにロクロムィスの元へと走り出す。
勝機と呼べるものではないが、一筋の光明は見えた。
バグカブトは気合いを入れ直しタイプαを睨みつける。
W・Bにより破壊された腕を見る。
そこには秘密兵器が隠されている。
おそらく、これが今回の切り札になるだろう。
ロクロムィス内で換装パーツに変えたハルモネイアがやってくる。
少しロクロムィスに何か話しかけられていたが、何を話していたかは興味がなかったので聞いていなかった。
やってきたハルモネイアは砲口となった右腕をチャージし始める。
機械音を響かせて何かのエネルギーが溜まって行くのが理解できた。
「さぁて、この蜘蛛の機械に一泡吹かせてやるか」
バグカブトとハルモネイアは、気合い十分、タイプαに対峙するのだった。




