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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
首領 → ラナ
153/314

サルトレアの魔王からは逃げられない

「がぁぁぁぁっ!?」


 一瞬後、コックル・ホッパーは無数の蠅に集られていた。

 どれほど追い払おうとも新たな蠅が集って来てはコックル・ホッパーの身体を打ち抜き、あるいは喰らって行く。

 勝てない。


 どれ程凶悪な機械達を統べようが、小さな暗殺者相手に勝てるはずがない。

 軍隊同士でありながらも用途が違う。

 これらを殲滅するには遠方から範囲攻撃で殲滅するしかない。


 奴らの前にのこのこ顔を出してはいけなかったのだ。

 あの作戦室に籠っていれば、ただ核ミサイル一つ打ち込むだけで勝てていたかもしれないというのに。

 彼を守るように側近たちが蠅を駆除しようとするも、折角の装備が相手が小さ過ぎて役に立たない。

 すでに数億という数の蠅となったベルゼビュート・ハンマーシャークは、思考などなく、交渉して見逃して貰うなどという方法は不可能。

 向ってくる以上は殲滅しなければならない。


 だが、コックル・ホッパーに蠅達を殲滅する術は無かった。

 しかし、方法は……現状を脱出する方法だけは気付くことが出来た。

 大声で側近の一人に叫ぶ。


「火炎放射だ! 俺に火炎放射を行え! この蠅どもを一網打尽にしろぉッ!!」


 側近たちが命令通りにコックル・ホッパーに銃口を向ける。

 一瞬後、全方向からの一斉掃射でコックル・ホッパーが炎に包まれた。

 近づいていた蠅達も巻き込まれて、一気に焼け始める。


 そのままでは焼死してしまうため、コックル・ホッパーは身体を転がし炎を消し去る。


「水だ。俺に水をかけろ!」


 側近の一人が銃口を空へ向けて発射する。

 高圧縮された水の筋が一筋空へと舞い上がる。

 すぐに重力に引かれ、雨の様に降り注ぎコックル・ホッパーの炎を打ち消した。

 虹が掛かるが、その場の誰もそれに気を止めることはなかった。


 危機を脱したコックル・ホッパーはまた蠅に集られない内に護衛を引き連れ退散する。

 このままでは確実に殺されるだけなのがわかったので、彼は元の作戦室に戻り遠隔操作で確実に全てを葬り去ることにしたのだ。

 だが、彼は気付いていなかった。

 火が消え去ると同時に、彼の背に止まる数匹の蠅たちに……




「あ、あの勇者様、あの蠅の方、あそこまで細分化してしまっては復元できないのでは……」


 エルティアは消え去ってしまったベルゼビュート・ハンマーシャークを心配するが、既に彼は消えた後、おそらくもう、二度と復活する事はできないだろう。

 たとえ、回復魔法をかけたのだとしても、別の生物へと変化したベルゼビュート・ハンマーシャークを助ける術はもうない。


「クソッ、おいそこの熊男、あいつの行動は絶対におかしい、貴様の首領が何かしたはずだ! 何をしたッ!!」


 バグアントが半ば確信的に叫んでくるが、王利が分かるはずがなかった。


「首領に聞いてくれ。俺は何も聞かされてないッ」


 なので素直に首領に丸投げする王利だった。

 硬質のクチクラ装甲で敵の銃弾を引き受けながらヘスティ達を守る。

 そちらに意識を割くようにしてバグレンジャーからの疑問を聞き流す。


 だが、王利にやってくる弾丸はほとんどないといっていい。何しろ周囲の敵ロボは蠅鮫により粉砕されており、今も数多くのロボが撃破されているのだから。

 王利はただ流れ弾が他の仲間に当らない様身を呈するだけでいい。楽な仕事である。


 暇になってくると、やはりついつい考えてしまうのはベルゼビュート・ハンマーシャークの行動の不自然さだ。

 まさか自爆もせずに全細胞を蠅鮫化してしまうなど、通常ありえない。

 確実に、そこには首領の意図が見え隠れしている。

 一体何をしたのかは不明だが、王利は辿りついていた。


 何しろ仮定として、命じるだけで命の無い物を自由に扱える能力を持つ誰かを、手に入れているはずだから。

 おそらくベルゼビュート・ハンマーシャークの死体に命令したのだ。

 自分が扱える能力でコックル・ホッパーに対抗できそうな能力を使えと。


 確かに、生命ある内はベルゼビュート・ハンマーシャークを降す事は無理だろう。でも、もしも彼が死んだとすれば、ただ命令を聞くだけの肉の塊となる。

 そこに生前の意思はない。

 ただ首領あるいは別の誰かに命じられるままに、己が肉体を極限まで削り無数の蠅と化してこの世界の機械を殲滅する気なのだろう。

 そうして蠅となってしまえば、エルティアの魔法で復活もできなくなる。

 復活したベルゼビュート・ハンマーシャークの口から首領がやったことを他の面々に告げられることだけは、既に阻止したと言っても良い。


 抗う事は無理だ。

 一言命じれば、おそらく蠅たちも命令通りに動くようにしているのだろう。

 つまり、いつバグレンジャーと事を構える事になっても確実に勝てる。その確証を手に入れたと言っても良かった。


 後は、コックル・ホッパーを屠り皆で帰って解散するだけだ。

 その為には、あの厄介なタイプシリーズを破壊しなければならない。

 コックル・ホッパーもいつの間にか居なくなっているので探さなければならなそうだし。


 王利は周囲を見る。

 どうやらここでの戦いは蠅鮫有するこちらの圧勝らしい。

 さすがに今だに戦闘が続いているとドクター花菱辺りが死んでそうな気がしたが、結果的にはベルゼビュート・ハンマーシャークが蠅鮫化してくれたことは幸運と言えた。

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