世界を賭けた戦い1
「随分と、暴れてくれたな我に逆らう愚か者ども!」
厳かに、悠然に無数の機械を引き連れ現れたエクファリトスの王、もといコックル・ホッパー。
その姿を見た機械達が一瞬全員動きを止めてコックル・ホッパーを見る。
出来た隙に王利達も動きを止めてコックル・ホッパーを見た。
「ほう。随分と出世したものだなコックル・ホッパー。クロスブリッドの反逆者がよくもまぁ」
首領が皮肉交じりに言ってやるとコックル・ホッパーはクックと笑う。
「悪いなインセクトワールドの首領。一足先に世界を征服させて貰ったよ」
「別に悪くは無い。このような世界で孤独の統治など面白くもなんともないからな。意思無き機械共を従属させて悦に入るだけの裸の王に興味などない」
「ふん。そんなことはどうでもいい。それよりベルゼビュート・ハンマーシャーク、それとマンティス・サンダーバードよ。なぜそちら側にいる?」
「インセクトワールドと同盟を結んだだけだ。我々はクロスブリッド・カンパ二―の首領となる。お前は孤独の王に酔い痴れているがいい。と、言いたいところだが、お前を倒すのが奴らとの条件なのでな。恨みはあるが死んで貰う」
聞いていた王利はついつい、恨み、あるんだ……とツッコミ入れそうになってしまったがすぐに自重した。
ベルゼビュート・ハンマーシャークの言葉にコックル・ホッパーは少しイラッと来たらしい。
口調に苛つきが混じり始めた。
「はっ。敵の言葉に惑わされた阿呆共がほざくな。貴様等纏めて殺してやる。俺はこの世界で王であり続ける。邪魔な貴様等は抗う気など起きない様殺して……いや、そうだな貴様等の四肢を斬り落とし鳴き叫ぶだけの余興として捕獲してやろうか。見せてやれタイプα!」
コックル・ホッパーの言葉に反応し、蜘蛛のような八足の機械が動きだす。
頭頂部には銃口。アイレンズは足が集まった胴体に四つ、蜘蛛の目のように付いている。
動きもどことなく蜘蛛をまねており、その速度は予想以上に速い。
「うおおっ!」
振り被った足を思い切り振りおろしたタイプα、攻撃対象に指定されたバグカブトが慌てて白刃取る。しかし、想定外の威力だったらしく、彼の足が地面に沈んでいく。
足を持ち上げる両手も徐々にだが押されていて、バグカブトの喉元へと足が迫って行く。
「スラッシュスタンピード!」
さすがに見ていられないとばかりにバグリベルレが突撃を敢行。
タイプαの胴体へと激突すると、なんとか相手が仰け反ってくれた。
咄嗟に離れるバグカブト。
バグリベルレもふらふらになりながらも距離を取る。
「なんて力だ」
「装甲も堅過ぎです。こっちが壊れるかと思いました」
被りを振りつつバグリベルレはタイプαを睨む。
ただの機械族とはかなり違う。
むしろ別種と思った方がいい。
「ふん。未知の武具を持つのは貴様らだけではない。この世界での鉱物を惜しげも無く使わせて貰ったぞ」
自慢げに胸を張るコックル・ホッパー。
誇らしげな態度がなぜか癪に障る王利だったが、さすがにこの機械に自分は対抗できるとも思えない。
完全に人任せにして他の機械を破壊しよう。と動きだした時だ。
悲鳴が上がった。
何かと思って見てみると、場違いな女性が一人、タイプαを見て悲鳴を上げている。
なぜ女性が? と疑問に思った時には、一番近くにいたベルゼビュート・ハンマーシャークが彼女を保護していた。
「ここは戦場だ。なぜ居るか知らんがさっさと逃げろ」
「こ、腰が……」
「チッ、世話の焼ける……」
ベルゼビュート・ハンマーシャークは無駄に彼女を抱き上げ戦線を離脱しようとする。
紳士だ。抱き上げる必要もないだろう。
などと思っていると、ロクロムィスに乗ったままの首領が溜息を吐く。
「おい蠅男。それは敵だバカが」
「なん……っ!?」
女性を抱え飛び上がった瞬間、ベルゼビュート・ハンマーシャークの胸元を何かが貫いた。
それは、助ける為に抱きあげた女性の手刀だった。
はぁ? と信じられないモノを見る目で女性を見るベルゼビュート・ハンマーシャーク。
どう見ても女性としか思えないその女はニヤリと笑みを浮かべると、彼の肩に手を置き自身を跳び上げ即座に蹴りを叩き込む。
女性の蹴りとは思えないほどの一撃で、ベルゼビュート・ハンマーシャークは地面にめり込んでいた。
地面に降り立つ女性に向け、ハルモネイアがレーザーソードを振う。
それを、女性は同じレーザーソードで受け止めた。
「機械か!?」
「タイプβ、一度こちらへ引け!」
コックル・ホッパーの言葉に素直に従い、女、タイプβがタイプαの横へと並ぶ。
「貴様等が雌伏していたように俺も色々と試作させて貰ったのでな。お披露目だ。そして。見るがいい。これが貴様等を冥府に叩きつける我が最高傑作。タイプδだ!」
コックル・ホッパーの言葉に合わせるように、大地を突き破り現れるタイプδ。その姿は……
「おおおおおおっ。王利さん、王利さん、あれ、あれ、巨大ロボ――――っ!!」
バグリベルレが思わずテンションを上げる程に巨大な、巨大ロボが現れた。