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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
首領 → ラナ
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第七世界への帰還

「そろそろ、奴を潰しに行くか」


 深夜、首領が返ってきた事でバグカブトに叩き起こされた面々に、首領は開口一番そう言った。

 寝耳に水の言葉だったせいか、全員ぽかんと口を開けてしまう。


「待て。このまま残りの世界を見るのではなかったのか?」


「それもいいが、随分時間が経っただろう? 向こうの世界ではまだ人間達を救出出来てないのではないのかバグレンジャー? 奴は悪の組織だしな。業を煮やせば人質の一人や二人殺しているやもしれんぞ?」


 言われてみればその通りだ。

 しかも既に第十四世界や第十八世界、第十九世界などなど実に数カ月も過ごしていた様な気がする。

 王利としてもそろそろ戻るべきかもしれないと思い始める。

 別世界の確認などそもそもいつでもできるモノではあるし、あっちの世界を止める術を探していたのだ。その鍵は……じぃっと、この世界に来て初めて話した男を見る。


 ちなみに、この岩屋は彼の寝所ではないが、首領が帰ってきたと聞いてやって来てくれたのである。

 随分お人よしな人間だが、どうやらこの村の住人は全てこんな感じの騙されやすい善良な人らしい。

 首領と話す事で悪影響を受けなきゃいいんだが。と王利は思うが果たしてどうなるだろう?


「オドゥ。あんたが来てくれりゃ一番いいんだがな」


「はぁ。良く分かりませんが、自分はこの村から出る気はないんですよ。申し訳ない」


 どうやら彼は付いて来そうにはない。

 となると、こんな便利能力を持つ男をスカウトしないはずがない首領が黙っているはずもなく手八丁口八丁で口説き落と……

 王利は半ば呆れつつも期待していたのだが、なぜか首領は動かない。


 おかしい。この世界の力を喉から手が出る程に欲しがっていたのではなかっただろうか?

 しかし、実際は首領が口を出す事はなく、話が先へと向かっている。

 首領は、この世界の力を欲しくないのか? そう思うが王利は知っている。首領はそんなタマではない。


 欲しいと思ったものはどんな手を使っても手に入れる存在だ。

 それが口を出さないと言う事はどういうことか。

 つまり、興味をなくしたか、それ以上に有意義なモノを見付けたか。

 あるいは……既に手に入れてしまったか……


 その思考に到達した時、王利は気付いた。

 そもそも身一つになった首領が蛇などという小さな生物だけに寄生して帰ってくるなど、ありうるのだろうか、と。

 曲がりなりにも自由を得た悪の首領である。

 それはもう、手に入れたい物は手に入れようと行動するだろう。

 どうせ王利たちは彼女の帰還を待っているか死んだと仮定して移動を始めているだろうから、早く合流する必要などないのだ。


 手に入れたい所用を済ました後で何食わぬ顔をして合流出来れば合流。すでに王利たちが居なくなっていれば何らかの方法を使い後を追ってくるかこの世界を牛耳るだろう。

 そして、合流して来たということは、既に手に入れている可能性がある。


 王利は誰にも気付かれない様首領を見る。

 芋虫の目を持つ菅田亜子は何度見ても嫌悪感が先に来るが、今回は視線が合うと不敵に笑われた気がした。

 それで確信する。


 首領はヤったんだ。何か手酷いことをした。

 自分の悪側の存在だからこそわかる。

 そして、それを報告しないということは、正義の味方たちにバレるとマズい事だと言える。


 だから、首領は彼らと早く別れたいのだ。

 つまり、さっさと第七世界の問題を排除し、元の潜伏状態に戻りたいのである。

 そうした後でゆっくりと、インセクトワールドの面々だけで異世界を見回るつもりだ。

 もう、バグレンジャーと行動すること自体が彼女にとって煩わしい事なのだ。


「で? どうするバグレンジャー?」


「ふむ。俺達としてもコックル・ホッパーをあのままにはできんしな。いいだろう。そろそろ決着と行こうか」


「こちらも賛成だ。クロスブリッド・カンパニーを代表して奴を叩き潰す」


 もともと第七世界のコックル・ホッパーを何とかしたいと思うのは全員同じだった。

 だから首領の言葉は何の疑問も持たれず受け入れられる。

 どうやらこのまま第七世界を滅ぼしに向うようだ。


「では、転移前に一つ確認させて貰うぞバグレンジャー」


「確認?」


 バグアントの言葉に首領は意地悪そうな笑みを浮かべる。


「そう。確認だ。あの世界では、お前たちも我らも同じく悪人だ。そんな世界で正義の味方のお前たちは、住民を打倒し王を倒すことができるか? 今回のお前たちに義はない。請われてやってきた勇者でもなくば民草に求められる英雄でもない。異世界からの侵略者でしかないからな」


「ふん。それはつまり俺達が正義の味方である以上敵にくみしろとでも言っているのか?」


 バグカブトが鼻で笑う。


「俺達の行動理由はあいまいな正義のためなどではない。己の信じる世界に存在させるべきではないモノを討つためだ。その点で言えば、お前は真っ先にブラックリストに挙がっているのだがな」


「クク。まさか、正義の味方が仲間が交わした停戦協定を破る訳はあるまいな?」


「当然だ。それがあるから殺さずにやっているのだ。有難く思え」


 バグカブトと首領の間に火花が散る。

 大丈夫だろうか? 何かやらかしそうで恐い。


「話は纏まった。W・B。明日の朝一で用意を整え決戦に向うぞ」


 こうして、王利たちはついにコックル・ホッパー打倒へと動き出した。

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