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秘密結社の勇者様  作者: 龍華ぷろじぇくと
首領 → ラナ
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合流作戦

「土よ、ロクロムィスから1km程離れた人気のない場所に、我らを連れて行け」


 ラナが告げると、土がラナとクルナを乗せて動きだす。

 エスカレーターの如く勝手に移動する大地は丘を登ったり降りたりしながら猛スピードで二人を運んでいた。

 泣きつかれたクルナはもう、成すがままだ。抵抗する素振りすらみせない。


 そもそも抵抗することを禁止されているのだからどうしようもないのだが、彼女はただただ自身に振りかかった不幸を嘆くだけである。

 なにしろ、唐突だったのだから。

 唐突な族長の死、親友の裏切り、なぜこんなことになったのか、未だに理解が追い付いていなかった。


「ふふ。どうしたクルナ? 随分としおらしいじゃないか」


「……酷いよ……あなたは酷い人だわ。ラナちゃんを返して」


「諦めろ、ラナはもう死んだと思った方がいい。体内器官と思考は残してやっているが、肉体を動かす頭脳は全て私が支配している。ラナが喋ることはない。咀嚼と飲み込む位はできるがな」


 また、クルナが泣いた。

 だが、それも今だけだ。ロクロムィスのいるであろう仲間たちがいる場所に付けば、彼女はバグレンジャーと別れるまでロクロムィスの中でラナの世話をしてもらうのだから。

 ラナの素体は生きている。植物人間の様な状態だが、食事は出来る。そういう動きだけはできるように生命維持に必要な物は全て残してある。

 菅田亜子の時は自身の能力を把握しきれず全て奪ってしまったが、長年色々と修練を重ねた結果脳のどこを喰らってどこを残せばいいのかは随分把握した。

 未だにブラックボックスは存在するが、今の状態に出来るだけでも十分だろう。


 だから、クルナは世話係だ。

 動かないラナの回復を信じて甲斐甲斐しく働き続けるだけの、首領の奴隷。

 ラナを介して首領は嗤う。誰も彼女を咎める事は無い。

 なにせ彼女の悪行を知る人物は、ここにいる二人だけなのだから。


 そして、これ以降も増やす気は無い。

 二人は誰にも気付かれないうちにロクロムィスの倉庫内に入って貰う。

 食料こそ運びはするが、首領が行うのはそれだけで、彼女たちを表に出す気は無い。

 バグレンジャーに二人の存在がばれれば確実に敵対関係に陥るからだ。


 危ない賭けでもある。

 しかし、この世界の能力を手に入れられるというのなら、歩の悪い賭けではない。

 やがて、1km先に巨大な岩蛙が見える位置へと辿り着く。

 かなりの速度で来たので、未だに夜は明けていない。


 暗闇に紛れながら周囲を探る首領。

 付いて来い。というと、クルナは疲れた表情ながらも付き従ってくる。

 どうやら殆どの人間は眠っているようだ。二人が慎重に進んで行くが誰も起きて来る気配は無い。


 だが、見張りはいた。

 やはり首領が戻ってきた時の為に、警戒する人物はいたようだ。

 ロクロムィスの前に陣取るその男は、漆黒のボディをしていた。

 腕を組んで仁王立ちするその人物は……バグカブト。


「さすがに、楽には合流出来んか」


「見つかればいいわ。見つかってラナの仇を討たれればいいのよ……」


「ふん。残念だがそうはいかんのが私の特性でな。悪運が尽きたことはないのだよ」


 何を言って? と顔を上げるクルナ。

 そんなクルナと共に物影に隠れたラナは、一匹の蛇を掴まえる。

 なぜそんなところに蛇? と思うクルナだったが、これが悪運だとラナに言われるとさらに意味が分からず困惑する。


「ここで少し待っていろ。ロクロムィスを移動する。ここに来たら誰にもみられない内にラナを連れて入って来い。これは命令だ」


「……はい」


 クルナは力なく頷く。

 首領は彼女の真名を支配し、ある命令をした。

 それが、語尾に「これは命令だ」と告げることでその前文を確実に実行すること。という命令である。

 

 首領はラナから抜け出ると、蛇への寄生を成功させる。

 芋虫の様な目に変化した蛇を見たクルナは思わずその場に吐いていた。

 首領は気にすることなく地を這いバグカブトへと接近していく。

 やがて、索敵範囲に入ったようで、バグカブトが近づく蛇に視線を向けた。


「ほう。随分と見違えたではないか。そちらの方が似合っているぞ」


「抜かせ。我が身体はどこだ?」


「ロクロムィスの中だ。エルティアという女が冷凍保存を行っている。良かったな戻った時に腐っていなくて」


 死んでいなかったか。と舌打ちするバグカブト。

 首領は何も知らない間抜けな正義の味方に笑みを浮かべてロクロムィスの内部へと入る。

 内部ではエルティアが魔法を行使して菅田亜子の素体を保存してくれていた。


「さすがは副首領だな。よくやってくれた」


「あ、首領さん。おかえりなさい。勇者様が心配していましたよ」


「そうか。W・Bにも迷惑をかけたようだな。もう、結構だ。お前も休むといい」


「はい。では」


 そう言って立ち上がるエルティア。

 ロクロムィスから出て行くと近くの岩造りの家へと入って行く。

 どうやらあそこで皆が雑魚寝しているようだ。

 男女混合なのだろうか? まぁいい。とりあえず、動くか。と首領は蛇から菅田亜子へと乗り移る。

 先程まで凍っていた身体はエルティアが解凍して回復までしてくれたので鮮度はいままでと変わっていない。


「おい、菅田亜子に入ったならさっさと出てこい。またぞろ消えられると迷惑だ」


「むぅ……」


 どうやらロクロムィスを移動させるのは難しいようだ。

 となると、バグカブトを岩の家へと誘導してクルナたちにロクロムィスへと侵入して貰うしかない。

 となると命令を変更しなければならない。


「ちょ、ちょっと待てバグカブト。ちょっと用事が出来た」


「はぁ? どこに行く気だ? お前からは目を離す訳には行かんぞ?」


「ほぅ? それはつまり、我の放尿を見たいというのかこの幼児愛好家ド変態め」


「なっ!? トイレならトイレだと先に言え!」


「仕方なかろう。先程まで冷やされていて溜まっておったのだ。なぁに、そこの物影に行くだけだ。しばしここで待っていろ。すぐ戻る」


 と、バグカブトを待機させて首領はクルナたちの元へと戻る。

 命令の変更を伝えて数十秒その場にしゃがみこんだ首領は何もすること無く立ち上がるとバグカブトの元へと戻って行った。

 菅田亜子の身体は既に死んでいる。尿意もなにも首領が操っていなかったので肉体が稼働せず、全く溜まっていなかったのである。

 そして首領とバグカブトが家へと入っていった数分後、ラナを背負ったクルナは、命令通り、ロクロムィスの亡骸へと侵入を果たしたのだった。

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